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第29話
南風が退院して、2度目の受診
「…と、いう事で…次は1ヶ月後の受診と」
「先生!もう、元通りでいい?普通に生活していい?」
「そうだなぁ…無理しない程度からだね。お風呂も短時間から。運動も、軽い運動から。重い物は…多分、痛くて無理だろうけど」
「やった!自由だ!」
「あんまり調子に乗って動き過ぎると、折れてる骨が肺に刺さって…なんて事あるかもしれないから、気を付けてね」
「骨が……肺に…」
医者って、どこまで冗談か知らないけど
めちゃくちゃリアルな冗談言って、患者をコントロールするんだなぁ
「ま、体は正直だから、無理は出来ないと思うけどね」
「……はい」
可哀想に
胸に管を挿れられた時、めちゃくちゃ痛かったって言ってたもん
思い出しちゃったのかな
あと何日って、今日を楽しみにしてたのに
すっかりシュンとしちゃった
「南風…せっかく休み取ったし、何か美味しい物食べて帰ろっか」
「うん……」
珍しい
基本的に、南風は元気で
ちょっと、落ち込んでるかな?って時も、俺が励ましてるって気付いたら、無理してでも元気になるのに
「何がいいかな?イタリアン?多国籍料理?和食?」
「……紫月の好きなのでいいよ」
一応、頑張って笑ってるけど
いつもの1/10の笑顔だ
相当ショックだったんだなぁ
「南風…思いっきり走ったり、体動かしたかった?」
「……走ったりは…別にだけど…」
「そっか…でも、少しずつ動かせるようになるよ」
「うん……」
何かしようと思ってたのかな
何処か行きたいとか
南風の中で、決めてた事があったのかな
「ただいま~」
「ただいま~…」
やっぱり、笑ってるけど元気ない
少し話聞いてみようかな
何か、出来る事あるかもだし
「南風、お疲れ様」
ソファーに座った南風の隣に座る
「紫月も…付き合ってくれて、ありがと」
「心配だもん。今日だって、南風が電車に揺られてる間中、ずっとヒヤヒヤしてたよ」
「紫月、ずっと俺をガードしてくれてたもんな」
「あとは?何か俺に…出来る事ない?」
そう聞いてみたら
南風が…
「~~~~っ…くっそ~~っ!」
「南風…何がしたい?言ってみて?」
「……ッチ」
「え?ち…何?よく聞こえなかった」
「…~~っ…エッチ!エッチしたい!」
「え?」
「紫月とエッチ!今日から出来ると思ったのに!」
南風がしたかったのは…
俺とのエッチだった
それが出来ないと知って
あんなに元気なくなってたのか
っ?!
そうか…
考えてみたら、南風…
自分で出したいと思ったって、右手だけじゃダメだったとか
1人じゃ、痛みで集中出来ないとか…
実は、1人で色々頑張ってたのか?!
「南風!気付かなくて、ごめんね!」
「へ?」
「そうだよね…ようやく、いつもの事を慎重に出来るのがやっとなんだから…俺でも言いづらかった?」
「え?…まぁ…」
「任せて!南風は、何にもしなくていいからね!」
さすがに、肋骨折れてて、成人男性2人が同じベッドは、心配過ぎて
大丈夫だと言う南風を、なんとか説得して、南風の退院後、俺達は別々の部屋で眠っていた
ちゃんと眠れてるかなって、何度か見に行ったりしてたけど
タイミング的に、そういう場面には合わなかった
「南風、座ったままと、横になるの、どっちが楽?」
「え~~っと…紫月…何してくれようとしてんの?」
「え?南風を気持ち良くして、イカせてあげるよ?」
「そっ…それは、非常にありがたいんですけど…俺、まだあんまり動けないから…」
「南風は、動かなくていいよ?俺が気持ち良くしてあげる」
「~~っ…嬉しいけどっ…そしたら俺…挿れて欲しくなっちゃうもん…そしたら…めちゃくちゃ動いちゃうもん…」
それは…なんか分かる
俺も、きっとそうなる
一度繋がってしまったら
久しぶりの南風の中、感じてしまったら
優しくとか、考えていられなくなりそう
「南風……」
まだ、バンドで胸を固定されてる南風を
優しく抱き締めると
「…ごめん…ちょっと我が儘言っただけなんだ」
南風が、俺に身を委ねてきた
「南風…生理的に、出せなくて辛くなってる訳じゃない?」
「ん…それは、大丈夫。先生が言ってた通り、体は正直なのかも…ただ俺が、思いっきり紫月とイチャイチャしたかっただけ。今日になったから、急に痛みが消えて動ける訳でもないのに…今日まで頑張れば…って、なんとなく思っちゃって」
「ん……俺もね…早く南風としたいよ……したら、きっと…止められなくなるよ…でも、ほんの少しの間だから。これから、ずっとずっと続く中の、ほんの少し。10年後には、今の気持ち忘れてるかもしれない位、ほんの少しだよ、南風」
南風は、きっと
ただ、イチャイチャしたいのもあるけど
どこかで、繋がって安心したいって気持ちも、あるのかなって思う
たまに、いつもと違う感じになった時
激しく…激しく…
何度も色んな態勢で、突いて欲しいって言う時
その後、お風呂で抱き締めると
縋る様に、泣いてきて
なんか…
言葉には出せない、不安みたいな大きなものが、南風を支配するのかなって思うから
「ねぇ、南風…今日は、久しぶりに一緒に寝ようか」
「え?でも…」
「一緒に寝たら、したくなっちゃって辛い?」
「それは…大丈夫な気がする…」
「うん…じゃあ、今日はさ…起きてる時は、なるべく沢山抱き合って…夜は一緒に寝よう?」
「……うん…」
あれ?
もしかして、南風…
ちょっと眠そう?
「南風…眠くなっちゃった?久しぶりの外出、疲れたかな…」
「…ん……大丈夫……紫月の匂い……久しぶり…から…」
「南風…眠れそうなら、ソファーじゃない方がいいよ。ベッドまで、頑張れるかな?」
「……月も…いっしょ?」
「一緒だよ」
「……ばる…」
そう言った南風が、ちょっと腕を動かしたから、体を離そうと思ったら
一気に、南風の体重がかかってきた
「南風?」
「…………」
「ふっ…やっぱり、結構疲れちゃったんだね?」
ベッドで寝せてあげたいけど
変に動かして、痛くて起こすのも可哀想
「南風が起きるまで、このままでいよっか」
南風が居ない、この家は
自分の家じゃないみたいで
南風が退院してからは
南風を1人、この家で過ごさせるのが、少し不安で
俺は仕事の合間に、なるべく連絡するようにした
南風が、偶然遭ってしまった事故は
結構な被害と、それに伴う責任問題とで
しばらくの間、テレビをつけると、ニュースでやっていた
南風も、未だに痛みや、色んな事我慢してる生活だけど
今、こうして一緒に居られる
テレビの中で、泣きながら訴える遺された家族
なんで…なんで…
何度も聞く、その言葉
もしかしたら、あれが俺だったのかもしれないと考えると
体の中心に、氷の塊でも入れられた様な感覚になる
奥底から冷たくなる様な
外から暖めただけでは、どうする事も出来ない様な
想像しただけで、身震いする様な
そんな感覚…
「ん……」
あ…
ちょっと力入れちゃった
痛かったかな
良かった
南風に会いに行った時
包帯や、ガーゼで覆われて
色んな線で繋がれた南風が
看護師さんの声に、全く反応しなかった数秒
生きた心地がしなかった
死んでもいい人なんて、居る訳なくて
南風も巻き込まれたからこそ、遺された人の気持ちも、少しは分かって
でも、それでも思う
南風じゃなくて良かった
逆の立場なら、許せないって思う
なんで…って思う
なんで…なんで…って思う中
そんな事言う奴が居たなら
行き場のない怒りを、全部ぶつける事だろう
でも、だからこそ
心から思うよ
「南風…生きててくれて、ありがとう……此処に居てくれて、ありがとう…」
「ん……ん…ん…」
30分位、そのまま寝てたら
南風がなんか、むにゃむにゃ言い出した
可愛い
「………ん?」
「南風、起きたの?」
「…起きた…え?…俺、このまま眠ってたの?」
「うん...30分位だけどね。このままの態勢で、痛くなかった?」
「んん~~っ…ててっ…」
「っ…痛い?大丈夫?」
「思いっきり伸びたら、痛かっただけ……っはぁ~~…なんか、5時間位熟睡したみたいに、スッキリ!」
なんか
いつもの、元気な南風だ
「良かった。まだ眠れそうなら、ベッド行って寝る?」
「ううん。なんか、超元気!やっぱ、紫月の匂いは、最強だな」
「そう?役に立って良かった」
久しぶりの、ほんとに元気な南風の笑顔
なんか、ちょっと疲れてたから
なかなか戻らない状況に不安もあるけど
ちょっとは、気分晴れたかな
本当に、人の気持ちが分からない俺は
そんな呑気な事を考えていた
夜…
久しぶりに、南風と一緒に寝るまでは……
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