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4 届かない手紙
父が選んだオメガを俺が拒絶すると、父はもったいなさそうに自分が迎えると言い出した。俺の意見など構わずとんとん拍子に話が進み、しまいには自分用にするならカサエラがいいとワガママを言い出す始末だった。
幸いなのは、カサエラが乗り気だったことだ。彼は、ユルとは違う賢さを持つ男だった。冷酷な父の下でもしたたかに生き抜くだろう。
カサエラは俺の想いを見抜いていた。だからか、顔を合わせるなりユルを引き取るように言ってきた。ユルと親しい彼がそう言うのなら、嫌がられないと自惚れて良いのだろうか?
なんて魅力的な提案だろう。出会った日から、ユルと共に過ごせたらどんなに楽しいだろうと夢みている。
ユルのことをもっと知りたい。どんな食べ物が好きで、どんな色の服を好み、好きな季節や色や、どんなふうにはしゃぎ、怒ったり、泣いたり、笑うのか、ぜんぶ知りたい。
だが、ユルは聖歌隊にいるのが好きそうだ。
俺も歌っているときのユルが好きだ。自由や喜び、慈しみを体現するように歌う姿は眩しくて、愛おしい。
側室として迎え入れれば貴族のしきたりで縛ることになる。聖歌隊は続けられない。
我が家に向かえれば好色の父のそばに置くことにもなる。もし父がユルに興味を持ってしまったら、俺が守りきれなかったら……ぞっとする。自由のためなら身体をも武器にするカサエラとは違う。ユルの無垢さを傷付けたくない。
今の俺はユルを守るには力不足だ。情けないが、受け入れるしかない。──ここからだ。俺は必ず、ユルに見合う男になる。
キミが幸せに暮らせる場所を作って、それから迎えに行くつもりだ。側室などではなく……。
初めてユルを見たとき、きらきらと輝いて見えた。あの輝きに劣らぬ花嫁衣装を用意するのは自分でありたい。
キミにも心の準備が必要だろうから、手紙を書いた。
慈愛院の子が返信を禁じられていることは知っている。
だから、その日が来たときキミが微笑みと共に俺を迎えてくれることを祈る。
きっとキミもわかっているはずだ。俺たちが運命のつがいだと。
かならず迎えに行く。後悔はさせない。
どうか待っていてくれ、ユル。
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