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第四話 「隠し事はしないで!」って言う、君のお願い
雨上がりのせいかな?昨日よりも、街路樹の花水木の木漏れ日が、煌いてる。
葉っぱに残った雨の雫たちが、光をプリズムに分解して、小さな虹をそこここに描きだす。
足元の舗装の四角い白いタイルを、力強く蹴って、大きな一歩を踏み出す。
パシャーン!!
秋山の足は水溜まりの中に着地して、高く水を跳ね上げてしまう。
「わあああっつ!………ああっ!」
(まぁまぁ、平気、平気っ)
秋山は服に付いた汚れが少ない事を確認すると、気を取り直した。
(それにしても、ほぼ初めましての人に会うのに、この大荷物。急にシーツの洗濯をしようと思い立ったのは、失敗だったかな?)
秋山は首を傾げる。
大人になって久々に友達が出来そうな予感に、浮かれていた。
(まだ、分かんないけど、さっ……)
コインランドリーの店の中に入ると、丁度焼き上がったクロワッサンを、店員が棚に並べているところだった。それを横目に秋山は、天井の高いコンクリートの内装の店の奥へと進んで行く。
大きな洗濯機にシーツをセットし終わった秋山は、トレイの上のクロワッサンとマグカップの中のカフェオレを満足そうに眺めて、カフェの席についた。
カバンの中から文庫本を取り出す。本は秋山が時間を潰す友だった。
静かな時間が流れる。店の入り口で、人を探して辺りを見渡す長谷川を、先に見つけたのは、秋山だった。嬉しくて、腕を大きくブンブンと振る秋山。気がついた長谷川が顔を綻ばせて駆け寄って来た。
長谷川は白と薄いベージュの重ね着をしていた。こんな見分けのつかないような色を重ねるなんて!おしゃれ上級者っぽいなぁ、自分には絶対出来ないな、と秋山は思う。爽やかだな、と胸をドキドキさせる。
「秋山さん、すいません、お待たせしました?」と長谷川が謝罪する。
「今、来たとこ……」秋山の応えに、長谷川がゲラゲラと笑う。
「そんな訳ないじゃないですか!」
秋山のテーブルの上には、空になったお皿とパン屑がこれでもかと落ちていた。
「はははっ、どんな食べ方したら、こんなっ……!見てみたかったなぁ!」長谷川が笑い転げる。
「それより、先に洗濯して来たら?」ぷーとむくれて秋山が言う。
「そうですね、忘れてました。秋山さんが面白くて」いたずらっぽく微笑んで長谷川は席から離れると、しばらく後、オムレツとトースト、コーヒーをピックアップして戻って来た。
秋山は、マフィンを追加していた。
「今日、来てもらえないんじゃないかって、心配してました。」
迎えの席にボディバックを置きながら、真剣な顔で長谷川が言った。
「だって、あんな通りすがりの奴のお願いなんて、無視されてもおかしく無いじゃないですか?」
秋山の目の前に座った長谷川が、秋山の口元をじっと見つめる。
秋山が口にパクッと咥えたマフィンが崩れて、かけらがポロっと落ちた。
「はははははは!」
ウケて爆笑する長谷川に、秋山は何だか恥ずかしくなった。
「そんなこと、ないよ………」顔を赤らめながら秋山が言った。
「そうですか?」
長谷川は目を細めて秋山の顔を見つめたまま、急に本の話しをし始めた。
「秋山さんだったら、好きな人に嘘を吐く気持ち、分かりますか?」
「僕だったら……」
秋山が慎重に言葉を選んで応える。
「好きな人に嘘をつかせたくない、かな。苦しんで欲しくない。本当のことを言ってもらいたい。」
「そうです、よね。」長谷川が自分の長い指先に視線を落とす。
長谷川が、もう一度顔を上げて、秋山を正面から捕らえ直す。
「秋山さん、実は俺、………」
ルルルル ルルルル ルルルル
その時、秋山の洗濯終了のアラームが鳴っていた。
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