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第五話 お家デート♡
秋山が大型のドラムの中に身を乗り出してシーツを取り出していると、オムレツをペロリと平らげた長谷川が様子を見にやって来た。
ドラムの中に上半身がすっぽり入った、秋山の無防備に突き上げられたお尻を、背後からじっと眺めている。
「わははは!」
長谷川は堪えきれずに笑い出した。
「何?ビックリした…」
秋山が洗濯機の中からひょこりと顔を出す。
「秋山さん、シーツを洗濯してたんですか?予想外過ぎて、………ふ、ははっ」
「僕もちょっと失敗したかなって思ってたけど!もう、笑うの禁止!」
恥ずかしさに顔を赤くする秋山に、長谷川はふっと柔らかく微笑んで距離を詰めた。
「荷物持ちしますよ、秋山さんの家まで。約束したカフェ代、結局出させてもらえなかったですし」
「でも、長谷川さんだって自分の荷物があるでしょう?」
「そんなの、片手で持てます」
そう言って長谷川は、綺麗な右手をひらひらと振ってみせた。――こちらの手は、あなたの為に空けてありますよ、とでも言うように。
長谷川の洗濯が終わるのを待つ間、改めて話してみると、二人の家は驚くほど近所であることが分かった。
「それもそうか。コインランドリーで鉢合わせするくらいだもんね」と秋山は言って、納得したように一人頷いた。
「秋山さん、その…本当に、いきなりお邪魔してもいいんですか?」と長谷川は少し真面目な顔をして、断るなら今のうちですよ、とでも言うように再確認して来る。
(僕が家に人を招き慣れていないのを見て取って、気を使ってくれてるのかな?
確かに、普段なら絶対に断ってる。他人を、自分の時間やプライベートな空間の中に入れるのは、煩わしい。僕は本さえあれば、それだけで生きていける人間だ。だけど、長谷川さんは上品で透明感があって、今断ったら、このまま消えてしまいそうだ……。
そして、僕は長谷川さんに消えて欲しくない。)
秋山は、胸の奥からなけなしの勇気を振り絞った。
「うん、いいよ。僕……長谷川さんと友達になりたい!」
「お友達、ですか?」
長谷川は眩しそうに、目を細めた。
(うわ、ダサかったかな!? 『友達になりたい』なんて、大人が実際に言うわけないって思われた!?………もっと、喜んで貰えると思ったのに……自惚れてて恥ずかしいっ!)
「いいですね……」
長谷川はそっと目を伏せて、たカップの底に残った、もう冷めてしまったコーヒーを、愛おしそうに小さく啜った。
(あれ?………良かったのかな?)
顔を上げた長谷川と目が合うと、秋山はクシャっと嬉しそうな笑顔を見せた。
秋山の家までの帰り道。二人はシーツの入った大きなバッグの持ち手を、片方ずつ持って歩いた。どちらも「自分が持つ」と譲らなかった末の妥協案だった。
秋山は少しはしゃいで、二人の間のトートバッグをわざと揺らすと、2人の間にある距離も縮んだり離れたり揺れる。秋山はケラケラと笑いながら、
(長谷川さんといると、どうして何をしても、楽しく感じるんだろう?)
と自分の中に芽生え始めた感情について不思議に思っていた。
二人の頭上には、雨宿りから解放された鳥たちが、洗われた青空に点々と美しい模様を描くように散らばっていた。
高く低く交わされる鳴き声は、雨の間に離ればなれになってしまった仲間との、待ち望んだ再会を喜び合っているかのようだった。
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