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第八話 全力でツッコミました

「秋山さん、こちらには何年住んでるんですか?」 布団にシーツカバーを掛けた後、二人はローテーブルを挟んで座っていた。長谷川がふと尋ねる。 「うーん、大学卒業してからだから………、5年になるかな」 秋山が少し記憶を辿るように答えると、長谷川は「えっ!?」と声を上げた。 驚いた長谷川が品定めするような視線を、座布団の上で胡座をかいて座る秋山の足元から頭の先まで往復させる。アンクルソックスと細い足首、その先のワイドパンツ、オーバーサイズのトップス、柔らかそうな髪には、シーツの中に入った乱れを残している。そして、長谷川は、すぐにハッとしたように頭を下げた。 「すいません……」 「はっ!? なんで謝るの?」 今度は秋山が驚く番だった。 「てっきり、秋山さんの方が年下かと思ってました……。俺、25なんで」 「僕は最初から分かってたけどね。長谷川くんの方が年下だって」 少し面白くなくて、秋山はわざとそっぽを向いて見せた。すると、長谷川がすかさず食ってかかる。 「いや、怒ってるじゃないですか。長谷川くん、だなんて。さっきまで優しく、長谷川さんって呼んでくれてたのに、これじゃ降格です!うわ、受け入れられないな。」 拗ねたような口調とは裏腹に、長谷川は射すくめるような視線で秋山をじっと見つめた。 「紗生(さき)君って呼んで下さい」 長谷川は秋山の方へ身を乗り出し、膝立ちでにじり寄って来る。 「やっぱり年下だなぁ。そうやってすぐワガママ言うんだから」 余裕のある大人の態度で煙に巻こうとする秋山だったが、長谷川は逃がしてくれそうにない。 「ねぇ、紗生くんって呼んで」 気がつけば、長谷川はテーブルに手をついて至近距離で顔を覗き込んできていた。 「さき………くん」 その綺麗で凄みのある圧に負けて、秋山が小さな声で呟く。 (恥ずかしい………。ただ名前を呼ぶだけなのに、なんでこんなにドキドキするんだ) 緊張して肩に力が入る秋山に、長谷川がさらに顔を近づけて要求した。 「もっかい」 ペシッ! 秋山の手が長谷川の額を叩いた。 「なんでだよ!!」 完全に調子に乗っている年下の額を手で押し返し、秋山は全力でツッコんだ。 「痛ーーっ!」 長谷川が額をおさえてしゃがみ込み、大げさに痛がって見せる。 「ああ、お腹空いたなぁ。秋山さん、何か食べさせてくれないかなぁ」 長谷川が不貞くされたフリをして、秋山の顔をチラッと見やる。 「紗生くん、さっき食べたばっかりだよね?」 秋山が呆れて言うと、長谷川はこう返す。 「若いから、すぐお腹減っちゃうんですよねぇー」 「もう、仕方ないなぁ。大したもの出来ないからね?」 秋山が根負けして、くすくすと笑い出す。(紗生くん、カワイイなぁ)と秋山は思っても、口には出さなかった。

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