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第十八話 彼のダイヤモンドの被弾が俺を粉砕する

その瞬間、部屋の中の時間が止まった。 トオルの瞳から、透明な大粒の涙がボロボロと溢れ落ちたのだ。 「え……っ、トオルさん!?」 紗生は反射的にトオルを引き寄せ、自分のシャツの胸元を、彼のハンカチ代わりに差し出す。 「突然、どうしたんですか? 何で泣くんですか、トオルさん」 腕の中で小さく震える身体に、急な涙の理由を必死に問い質す。 トオルは声を出さずに、ただ涙だけを次から次へと静かに流していた。 見たこともないほど大きな涙の粒が、紗生のシャツの生地を瞬く間に浸み通し、その下の肌へ熱い重みとなって伝わっていく。 (紗生くんには、もうそういう相手がいたんだ……瀬名先輩みたいに。 だから突然、多様性の話をして、僕の反応を見てたんだ。拒否反応があるかどうか。 …今から言われるんだ。「実は…」って) そう思い至った瞬間、トオルの中で世界が崩壊した。 「失恋……した」 トオルは溢れる涙に息を詰まらせ、今にも消えてしまいそうな呟きを紗生の胸元に落とした。 胸元に染み込んだトオルの涙の熱さが、紗生を完全に狂わせた。 (俺の知らない間に、トオルさんは誰かに恋をして、傷つけられていたのか――?!) 「いつの間に……っ。相手、誰なんだよ」 これまで胸に鍵をかけて外に出すことを禁じていた、独占欲という名の獣が暴れ出し、紗生の喉元を突き上げていた。 トオルは濡れたまつ毛を揺らし、紗生の胸に顔を埋めたまま、掠れた声で言った。 「今、紗希くんに……」 トオルの言葉に、紗生の脳細胞が一斉にスパークし、脳内に強い電圧が流れる。なぜ、トオルが自分に失恋したと言っているのか、理解が追いつかなかった。 「なんで……?もしも、だとしたらっ、て言ったんですよ? トオルさんは、もし俺に彼氏がいたら、どう思うんですか?」 紗生はトオルを胸に抱きしめたまま、逃がさないように、ぎゅっと力を強めて、もう一度確認するように聞いた。 トオルは紗生の胸を小さく押し返し、その顔を見上げた。尋常でない量の涙を流したトオルの目は、真っ赤に腫れ上がっていた。 「嫌だよ。……もっと早くに出会いたかった!こうなる前に、もっと僕が頑張って、自分の気持ちを伝えておけば良かったっ」 「トオルさん、俺の好きな人はあなたです」 紗生はトオルの両頬を包み込み、その真っ赤な目をまっすぐに見つめて告げた。 それから、溢れる情動のまま、紗生はトオルの肩に腕を回し、もう一方の手で細い腰をがっしりと掴んでホールドすると、抵抗する隙も与えずに、彼を奥の寝室へと引きずり込んだ。

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