33 / 41
第33話 死が二人を別たず
あれから数日が経過した。
鳳雛もティグルも冥も、自分の縄張りに戻って行った。
オレは中央区の高級ホテルの窓から雑多な街を見下ろす。
「ねえちゃん……」
冥に依頼して、ねえちゃんも弔ってもらった。
けど、オレは海に散骨じゃなく、老大と美花の墓に一緒に入れてくれって頼んだんだ。
だって――気づいてしまったから。
きっとねえちゃんは、老大のケガを人魚の番の呪いで消したんだ。
だから尾を無くして人間の足になってたんだろう。
でも、老大は美花を愛しながらも、ねえちゃんのことも……愛してたんじゃないかって。
そうでなければ、ねえちゃんは、とっくに海の泡になって消えていただろう。
美花に、ねえちゃんの体を移植なんて出来なかったはずだ。
老大は愛する二人の女性を一つにしようとしたんだろう。
それは狂っている程の愛なのかもしれない。
人魚の愛は海より深い。
一度愛した相手を何処までも想う。
死が二人を別つことすら許さない、番の呪いを背負って。
と、オレがしんみりしてると、伏竜が後ろから書類で後頭部をポコンと叩いてきた。もう!
オレは振り返って怒る。
「こらーっ! 何するんだよ!」
「泣きそうな顔してんじゃねぇよ」
「え? なんでわかったの? それも術?」
紺のスーツ姿の伏竜。逞しい胸板に、喉のタトゥーも色っぽく、思わず見惚れてしま……いやいやいや! 今は、そうじゃなくて!!
彼に背中を向けてたのに言い当てられて驚いてしまう。
伏竜は笑いながら、告げた。
「墨星のことなら、何でもわかる」
「ホントにぃ~?」
オレが小首を傾げて疑いの眼差しを向けると、伏竜はしれっと答えた。
「お前がフェラチオするのが大好きで、それだけでイッちまう奴ってこともな」
「~~~~!」
ボンッ とオレの顔から爆発するような赤面音が出た……気がした。
更に伏竜は続ける。
「キスされながら逸物ブチ込まれるのが大好物ってこともな」
「~~~~~~ッ!!」
顔がカーッと熱くなって、伏竜の腕をぽかすか叩いていた。
「ばかばか! 伏竜の変態! ドスケベ! えっち!」
すると伏竜が書類の束を持ちながら距離をとる。
「馬鹿! 書類が混ざっちまうだろうが!」
「ぶーぶー! いつになったら終わるんだよー。オレ、泣いちゃうぞー」
オレがブーイングする。
伏竜は老大や楊を殺したことで青龍門派に追われる――かと思いきや、船の事故も味方殺しも全て老大の仕組んだことだという冥の情報で知れ渡り、破門を解かれたのだ。
もともと青龍門派には伏竜を慕う門弟も多くいて、彼らの推薦で、何と伏竜は青龍門派の新老大になってしまったのだ。(伏竜的には中央区で気ままに働きながらオレと暮らす気だったらしいけど)
最初は断っていた伏竜も、門弟に泣きつかれて仕方なく……という体だった。
「俺が老大になったからには、麻薬も人身売買もヤメだ」
伏竜は組織の改革を目論んでるみたいだ。
でも、反対する勢力もあり、先は長い。
しかし鳳雛、ティグル、冥という三門派の老大と繋がりをもつ青龍門派の老大は過去に居なかった為、抗争も落ち着くだろうと予想されていた。(鳳雛とティグルは争ってるけど)
新しい老大の誕生ということで、伏竜は毎日忙しそうだ。
それでも必ずオレを傍に置きたがる。
オレが一人になってしんみりしたいなって考えても、後ろから抱きしめてキスしてくる。
やめろって言っても、頬に耳に首筋にチュッチュするんだから!
なんて甘えん坊な子なんだ! ちょっと俺離れしなさい!
しかも、ちょーっとティグルとご飯食べに行っただけでヤキモチ妬いて、そういう夜は、すっごい精力漲るセックスしてくるんだから、こいつ人魚より愛が重いんじゃないかとすら思う。
風呂だって絶対一緒がいいって言って、でっかいホテルのでっかい湯舟で洗いっこしたがる。
オレの体を洗うのは、自分じゃなきゃ嫌らしい。
しかも洗い方がイヤらしいので、直ぐにセックスになってしまう。長風呂になってばかりだ。
「重いよ。愛が」
オレが苦言を呈すると、伏竜はニヤリと笑う。
「こっちは二十年片思いしてたんだ。仕方ねぇだろ」
「二十年!?」
オレは驚くも、伏竜は溜息をついた。
「……やっぱり覚えてやがらねぇのか」
とか言うけど、人をアホの子みたいに言うなよ!
オレは手の平をポンと打つ。
「覚えてる覚えてる! あぁ、あのことね! スゴかったよなあ~」
オレが目を逸らしながら適当ぶっこむと、伏竜がネクタイを緩めて外す。
「……仕置きが必要みてぇだな」
「ただヤリたいだけだろ~! も~! ばかーっ!」
そう言いつつも、オレの股座は既に伏竜を求めて反応していて……。
それを見た伏竜は舌なめずりし、オレを机に押し倒す。
山のように積まれた書類が舞い落ちる中、オレは伏竜と深いキスをするのだった。
ともだちにシェアしよう!

