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(一)砂漠の国フッサール王国の王宮筆頭女官エリダバの証言
アスラン殿下のお話でございますね。
あの方もお可哀そうなお方にございます。産まれて直ぐにお母上を亡くされてお寂しい思いをされてきたことでしょうに、上に五人の王子と八人の王女がおられたこともあってか、国王陛下はあまりアスラン殿下をお構いにはなりませんでした。恐らく庶子であることも関係しているのでございましょうね。国王陛下は嫡子との差をつけないことには示しがつかないとお考えであるのかも知れませぬ。
ええ、既にフロリナ王国もご存じのように、アスラン殿下は庶子であるが故に、王位継承権を持たぬ王子にございます。
正妃と側妃五人の争いにお疲れになられた国王陛下の気の迷いでございましたのでしょう。お忍びで参られた市井の踊り子に一目惚れをなさってお妾としてお迎えになられたまでは良かったものの、やはり慣れぬ宮廷生活にお疲れになられてしまわれたご様子でした。
お心を病まれた殿下のお母上のお身体は、出産の苦痛に耐えられなかったのだと思われます。産後の肥立ちが悪く、そのまま……。
それでもアスラン殿下は、あのように天真爛漫にお育ちになられました。
偶に木登りや水浴びをしては私どもを困らせますけれども、それも純粋さの表れにございます。好奇心旺盛な面もございまして、私どもの仕事に興味を持たれてはお手伝いをなさってくださることも珍しくございません。特に料理に関心が強いようで、料理長のところに良く出入りしているところを見かけております。料理長も独り身でおられるからでしょう。我が子のように可愛がっております。
アスラン殿下をお育てしたのは、わたくしどもと云っても過言ではありません。
それほどまでに国王陛下に手をかけられずに育ったお子さまにございます。ご兄弟にあらせられましても、庶子として軽んじておられるのでしょうか。あまり親しくされてはおられないご様子にございます。アスラン殿下があのように無垢なお方なだけに、せめてもう少しばかり心をお開きになっていただきたいものではございますが……。
ですからアスラン殿下には幸せになっていただきたいのです。
これはわたくしども使用人全ての願いにございます。ハスラーム殿下にはその点良くお伝え願えないでございましょうか。長く親交を深めておられたハスラーム殿下でありましたら、きっとわたくしどもの願いを叶えてくださると、わたくしは信じております。
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