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(九)砂漠の国フッサール王国の召使い(下女中)エルシャの証言
嗚呼、また私の許に来られてしまわれたのですね、ザナッシュ卿。
そうなのです。私は見てしまったのです。
地下の食糧倉庫で、アスラン殿下がフコック料理長の慰み者になっているところを。
それは、口にするのも憚られる光景にございました。自らのモノを殿下の口に含ませるなど、あってはならないことです。そればかりか、排泄に使う場所に指を出し入れなさるなど……。
いえ、挿入に至っているかは、私は存じかねます。何故なら、それ以上の光景を私は目にしたことがありませんので。
私は耐え難かったのです、ザナッシュ卿。そして、憎くなったのです。あの素直で純粋なお方があれだけ気を許していたというのに、その気持ちに付け入るようにして身体の関係を結ぼうとしていたあの男が。ですから、わざと物音を立ててやったのです。そして更に声をかけてやったのです。そこに誰かいるの? それでフコック料理長は諦めざるを得ないと感じたようでした。しらじらしくもジャガイモ入りの木箱を手に、殿下と一緒に姿を現してきたのです。
二度とはあの男の思うようにはさせまい。私はそう誓いました。
ですから、なるべく殿下のお側を離れまいと思って行動をともにしていたのです。
とはいえ、恐ろしい話です。ましてやこちらは召使い。あちらは料理長ではありませんか。意見が真っ向から対立した際に、私の味方をしてくださる方がどれだけいらっしゃるでしょう。私は自分の胸にこの秘密を仕舞っておくことにしました。フコック料理長が諦めてくれることを願いながら……。
それからもう半年が経過しています。
ザナッシュ卿、お願いがあります。どうかこの件を胸ひとつに収めておいてはいただけないでしょうか。
傷物と知れた殿下が、ハスラーム殿下に見捨てられるところなど、私は見たくないのです。ようやく目前に迫った幸せが、殿下の前から去ってゆくのを見たくないのです。どうか、どうか、お願いいたします。あのお可哀そうなお方に、人並みの幸福を与えてやってくださいませ。
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