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第4話 事務所の夜
散々悩んで結局二人が行き着いたのは、近くにある組の事務所だった。こんな街中で人目 が避けられる場所を探したところで、せいぜいホテルくらいしかなくて、当然ながら高校生は入店禁止だ。
「ありがと、トクさん」
さも業務用の黒い合皮のソファに腰掛け、丈一郎はこの事務所の主に電話をかける。
ここを普段任されているのはトクだ。トクは舎弟の中でも古株で、鬼倉田の組の中でもとにかくあちこち顔が効く。組長である江太郎の子供の頃からの幼馴染でもあり、下手をすると本物の兄弟よりもお互いの方が仲が良い。
だから丈一郎もトクにとってはほぼ甥っ子みたいなものだ。お嬢の過保護筆頭と言っても過言ではなく、赤ん坊の頃からとにかく可愛がっている。
「そりゃァ、かわいいお嬢にこんなに一所懸命頼まれたんじゃねェ」
トクは電話口で、ハハッ、と快活に笑った。一緒に、すぱっ、と煙を吐く音も聞こえて、タバコを吸っているのがわかる。
「父さんには黙っててよ」
「今日のことですかい? 言やしませんよ、わざわざ。江 のヤツだって昔は散々ワルさしてたんで、それに比べりゃカワイイもんです」
ついでにイイモン見つけてもらいましたし、と呟いて、トクは、ふふん、と笑んでいる。その笑い方が胡散臭くて、丈一郎は辟易した。
風貌も性格も、トクと江太郎は真逆である。体が大きく筋骨隆々、豪快で面倒なことが嫌いな江太郎に対し、トクはスーツと着流しが似合うスラリと背の高い二枚目で、ものすごく人当たりは良いが、計算高く、裏で何を考えているのかわからない。
例えるならゴリラとヘビが長年親しくしているようなものだ。
「ま、でも、私もお嬢が心配なのは変わりねぇんで。オイタはそこそこにしてくんなさい」
江が泣いちまいますよ、と、さらりとした声でトクが言う。江太郎を唯一「江 」と愛称で呼べるくらいの仲だからこそ、苦労がよくわかるんだろうと思うが、その割には全く気のない言い方で、トクのこういうところがいまいち読めない。
「明日の朝には帰るから」
「あい、気ィつけて」
じゃあね、と通話を切ろうとして、おっと、とトクが声を上げた。
「ちょいとタツに変わってくんなせェ」
「えっ」
さりげなくトクに言われて動きを止めた。
タツといるとは伝えたが、さっき「液体」をかけられたことや「今のタツがどうなっているか」は教えていない。
「タツに? なんで?」
「なんでってそりゃ、大事なお嬢を一晩頼むってんですから」
一言くらい言ってやらなきゃ、と、トクは素知らぬ振りをする。
そんなトクにムッと眉根を寄せ、丈一郎はチラリと隣のタツを見た。
タツはソファに浅く座り、丈一郎の肩に凭 れ、軽く頭を預けている。その頬はさっきよりも赤く見え、口から吐かれる息も間隔が短く荒かった。額に薄ら汗を滲ませ、いつもはフワフワと浮く茶色の癖毛が束になって重力に負ける。
「だっ、だめだよ! タツは!」
タツを見て、丈一郎は慌てて拒否した。こんなタツを電話越しにでも誰かに晒すのは嫌だった。
が、その丈一郎の慌てた様子に何かを察したのか、トクは、ヘェ? と頷いた。それがどうにも楽しげで、丈一郎はビクッと肩を揺らす。
「なんでです」
「なんでっていうか、えっと」
「丈一郎、貸せ」
電話口の攻防が漏れ聞こえたのか、タツが丈一郎からスマホを奪って座り直す。
タツがトクと何を喋っているのか、丈一郎には聞こえなかった。しばらくは、ああ、とか、うん、とか、電話口のトクにタツが時々相槌を打つだけだったが、不意に最後に、「はぁ? 出すわけねぇだろ!」とタツがトク相手に語気荒く吐き捨て、一方的に通話を切った。
「くっそ、何なんだよ」
タツは忌々しげにスマホを下ろしソファに沈む。
「タツ、なんだったの? トクさんが何か言った?」
「何でもねぇ」
はぁー、と深い息を吐き、タツはまた丈一郎に凭 れかかった。
再度肩に当たる頬は、さっきよりも熱い気がする。
「タツ、熱いよ。熱ある?」
「ねぇよ」
丈一郎が言うことをタツは即座に否定した。それでも熱に浮かされたような瞳はトロ火のようにとろとろ揺れて、ほんのり涙で潤んでいる。
いつもは感じない温度で体温を感じるせいだろうか。すぅっ、と鼻で息を吸う音すら色っぽい。
――やばい、どうしよう。
丈一郎の心臓はどきどきと弾み、腹の奥に、例えようがない疼きがじんわり貯まっていくのを感じる。
「タツ、ごめん。あのさ……」
ちょっとだけ離れて。
ジンジンとする腹がもどかしく、でもどうしたらいいか分からずに、丈一郎はタツを自分の肩から起こしてそっと押し戻そうとした。
このままだと何をしてしまうかわからないと、自分でも思ったからだった。
その時。
「……んんッ! あっ、ばか……!」
起こそうとして伸ばした右の指先がタツの耳朶 あたりに触れる。その瞬間、タツの肩がびくんと揺れて、銀のピアスがチリッと鳴った。
「ご、ごめ……っ!」
丈一郎は慌てて右手を引っ込める。
タツが触れられた右耳を押さえて、真っ赤な頬で睨みつけてくる。でもその苛立たしげな表情にすら動悸がして、はっ、はっ、と息が荒くなる。
「……さっきの」
「え?」
睨みつけたまま、タツが小さく口を開いた。苛立たしそうなのに、申し訳なさそうでもあり、なんとも言えない影があった。
「さっきかけられたやつ、クスリ混じってて……すぐ吐いたけど、やっぱ、ちょっと飲んじまったから」
――だから、さわんな。
か細くて、消え入りそうで、風のない日の風鈴みたいな声だった。
えっ、と丈一郎は息を飲む。
さっきと変わらず不機嫌そうな口元が、今はそれだけにはとても見えない。
もう、無理だ。と、思った。
「……タツ。ねぇ、タツ」
そう思った一秒後には、熱に浮かされたように口が勝手に動いていた。さっき慌てて引っ込めたはずの右手を滑るように動かして、輪郭をなぞってこめかみを梳く。
「やっ、やめっ……じょういちろ……っ」
タツが目を見開く。逃げようとして身を捩って、晒された首筋が、白くて、真っ直ぐで、綺麗だった。
多分、あんまり綺麗で羨ましかったのだ。気づけばその筋に、口先だけで軽く口付けていた。
だめだ、やめろ、と肩を掴まれる。でもその手がいつもよりもあまりに弱々しくて、タツよりも軽いはずの体重をかけて無かったことにしてしまった。
「やだ、いや……っ、丈一郎っ!」
「タツ、かわいい」
「んんッ、んあ……ッ!」
舌先で上から下へ首の筋を舐め上げる。
するとタツの口からくぐもった喘ぎ声がして、自分の口からも、あ、と声が漏れてしまった。
「やば……なんか、おれも変かも。ねぇ、タツ。どうしよ」
頭がぼうっとする。でも、手は勝手に動く。
本能のままに蠢く右手はいつのまにか、Tシャツの裾を捲 って、中に潜り込んでいる。
「タツのお腹、あっつい」
「やめ、やめろ、って……はっ、あ、あッ!」
脇腹をなぞって腹筋を撫で、そこから上に向かって這う。すると、ささやかに、でも確かに固くなっている突起があって、親指で、くっ、と軽く捏ねた。
「んっ、んんっ! ばかっ、やめ……あっ」
クスリが回ってしまっているせいだろうか。想像以上に反応が良かった。
押し潰したり摘んだりする度、タツの背がきゅっと軽く仰け反って、茶色の癖毛が空《くう》に舞う。
「あ、あ、あっ、んぅっ」
段々と大きくなっていく掠れた喘ぎに、さすがにまずいと思ったのか、タツが不意に自分の手の甲で口元を押さえた。甘くなってきた声色が急に曇りガラスの向こうに行ったように遠くなる。
そのある意味意地らしい仕草に、この時ばかりは、なんだかイラッとしてしまった。
なんだよ。クスリでトんでるのはそっちのクセに、それでもまだ我慢すんのかよ。
俺なんかクスリ無しでもおかしくなりそうなのに。
見てるだけで頭沸騰しそうなのに。
やっぱ好きなのは俺だけなのかよ。
「ねぇ、タツ。おねがい」
イラつく頭のまま言って、勢いで着ていたシャツまで脱いだ。
外はもう月が出ていた。雑居ビルの四階のこの事務所の窓からは、ちょっと見上げると満月が見える。
「俺としよ」
そんな月明かりの下で、誰もが見惚れる美しい顔に、はらはら黒髪を散らして小首を傾げた。
これで皆簡単に落ちる。どいつもこいつも、名前すら知らないやつだって。
なのに、なのに。
「はっ、ん、ばっか……っ!おまえとできるわけ、ねぇだろ……ッ!」
丈一郎の好きで、好きで、どうにもならない人だけが、どうしてもこっち側に落っこちてこない。
丈一郎がタツを拾って帰った日、タツは酷い熱だった。体温なんて計らずとも、手のひらで軽く触れただけで、人間の平熱を完全に超えていることがすぐ分かる。
あの日もタツは、目を閉じ、肩を揺らして、熱い吐息を、短く、等間隔で吐き出していた。その度に体温が上がって真っ赤になった舌が時折ちらちら見え隠れして、それが目に毒だと思った。
「タツ、きれい」
自分の下でソファに横たわるタツに、丈一郎は、ほう、と感嘆した。
シャツは胸元まで捲り上がったままで、よく締まった腹と胸が薄暗い部屋に浮かび上がる。自分の、うっすら筋肉を感じる程度の、ただ滑 らかで真っ平らなだけな腹とは違う。
でもこの世にはタツのそれよりも自分の腹の方が好きな輩が大勢いるのだ。本当によく分からない。
「真っ赤だね」
タツの皮膚のどこかしこも、淡いピンク色だった。触れるとしっとりと吸い付いてきて、まるで歓迎されているような錯覚に陥る。
「丈一郎、だめ、だめだって」
でもやっぱり所詮それは錯覚だった。タツの色っぽい口は、何をされても譫言 のように、ずうっと丈一郎を拒否し続ける。
「なんで? タツは俺のこと嫌い?」
「ばかっ、なんでそうなるんだよ……っ、できねぇって、そんだけじゃねぇか!」
「だって、俺がしよって言ってるんだよ」
別に俺のことなんか好きじゃなくても、俺としたいヤツは死ぬほどいたよ。
丈一郎は肩を竦め、そう自嘲気味に笑って言った。
それを見たタツは、どこかハッとして目を見開いた。そしてその後、何故か悔しげな顔で歯噛みしていた。
「……おまえなぁ。そういうこと言うな」
さっきまでとにかく頑なだった声色が、呆れ混じりにゆるく解 けていったのがわかった。
それと共に下から腕が伸びてきて、大きくて骨ばった手のひらが二つ、壊れ物でも扱うみたいに、丈一郎の両頬を静かにそっと包み込む。
「いつもお前に言ってんだろ。みんな、お前がかわいくてしょうがなくて、だから一番大事にしてやりてェんだよ」
わかれよ、と、大きな両手に撫でられた。
その手はいつもより数段、数倍熱かった。
タツは平熱が低いから、いつもなら触れると寧ろひんやりしている。でも今は、タツが触れたところから順に灼 け焦 げていってしまいそうだ。
「……タツも?」
「ああ?」
「タツも、俺がかわいい? 俺のこと大事?」
頬を撫でられながらそっと聞いた。
タツは、うん、とまでは言わなくて、でも、そりゃあなァ、と一応肯定はしてくれた。
「俺もタツが大事だよ。だから、タツがしんどいの助けたい。どうしてそれがダメなの?」
どうしよう。そんなつもりなかったのに、このままじゃ泣いてしまいそうだ。
タツはいつもこうだ。
ふとした時に丈一郎がうっかり好意を示しそうになると、同い年のはずのくせに突然年上ヅラをして、優しく、美辞麗句で覆い隠し、全部無かったことにする。
丈一郎はそれが嫌いだ。さっきまで「丈一郎の拾ったタツ」だったのに、その瞬間、急に周りの「お嬢の保護者」と同じ顔になってしまう。
「俺の気持ち無視すんのが、タツの言う『大事にする』ってことなの?」
涙目になりながら、やけくそで言った。言って、タツの首に絡みついて身を寄せた。
イライラに任せて叫んだつもりが、滲む涙のせいで声が震えて、まるで追い縋ってるみたいになってしまった。これじゃあ、親に置いていかれたくなくて泣く子供みたいだ。恥ずかしい。
そのまましばらく無言になった。辺りが、しん、と静まり返り、部屋のボロい換気扇だけが、ごおっ、と低音を鳴らしている。
一体何秒の間が空いたか数え切れなくなった頃、タツが不意に自分の下でのそりと動いた。
そして、はぁー、という、長い長いため息の後。
「……最後まではしねぇからな」
ぼそりと小さく、そっぽを向きながら言われた。
一瞬わけが分からなくて、そのままポカンとしてしまった。
「……いいの?」
「誰にも言うなよ」
「最後まではだめって、じゃあどこまで?」
「だから、俺は挿 れねぇからなって」
「えっ? タツは挿れなくていいよ。俺が挿れたいもん。俺は挿れていい?」
「まじかよ」
目眩 するわ、と、タツが眉間を押さえている。
それでも、さっきまでの、ひたすら拒否されている時とは気配が全く違った。下手をすると、恋人のわがままに振り回されてうんざりしているような雰囲気すらある。
どうしよう。嬉しい。嬉しすぎて、勝手に頬がにやついてしまう。
「ゴムも何もねぇから、お前が挿れんのもダメだ。ってか、なんで俺がお前にこんなこと言わなきゃなんねぇンだよ……」
呆れ顔で状況説明していたと思ったら、最後に、諸々の事の顛末への嘆きが聞こえた。でも、その嘆きとは裏腹に、さっき丈一郎の頬を撫でていた手が、今度は両肩に甘えるようにかかっていた。
クスリで少しぼうっとした瞳で上目遣いに見つめられて腹の奥がまた熱くなる。
「だって、タツがかわいいんだもん」
またタツの固い腹に指を這わせた。タツはすぐに口を噤んで、んん、と、自分の下で身を縮こめる。
遠慮がちな声が心地よくて、今度は指を下に下ろした。ウエストの緩いパンツのゴムを引っ張って、下着との間に右手を突っ込む。
「ぅあっ」
既に下着の中で固くなっている先端を軽く揉むと、タツの腰がびくんと震えた。そのまま擦るように揉みしだく。
すると、段々下着が湿り気を帯び始めた。湿気はすぐに染みになり、いつのまにか丈一郎の指先は、布から染み出た透明な粘液で濡れていた。
「ん、んんッ、あ、やっ、ちょっ、まて……っ」
タツが丈一郎の肩をギュッと強く掴む。
「タツ、我慢してるの?」
「あっ、ち、ちが……っ、」
「濡れちゃうから脱ぐ?」
そう言って、元々ずり落ちかけていたパンツに下着ごと手をかけ一気に下ろす。
今まで見たことなかったわけじゃない。何しろ既に一年間、同じ家で一緒に住んでいるのだ。男同士の友達以上兄弟未満みたいな関係性、お互い暑さに耐えかねて、下着一枚でうろつくこともあるし、ふざけて一緒に風呂に入ったことだってある。
それなのに今の丈一郎には、この光景がとても新鮮に見えるのだから不思議だ。何なら寧ろ、未だにちょっと、夢かも、と思っている。
夢かもしれないなら尚更決して忘れるまいと思って、パンツから足を引き抜く時の、足の指先の動きでさえも目で追った。
「んぁッ! あっ、ああっ!」
直接濡れる鈴口 を摩 ると、今までで一番の喘ぎが聞こえた。
頭が仰け反って丸い喉仏が見える。
もっと見たいと、ただただ思う。
「あ、まっ、まって……も、いく……ん、んんっ」
「いいよ、いっぱい出して」
切羽詰まった声に嬉しくなって、愛撫の手を早めた。
あ、あ、と短くて控えめな息遣いの果て、眉間の皺が一層深くなり、タツが丈一郎の手の中に白い液を吐き出していた。
「はっ、はっ……あ、悪ぃ……」
精液で濡れた丈一郎の手を横目に見て、タツは反射的に丈一郎に詫びを入れた。
多分何か意識したわけではないのだろうが、謝られると、やっぱり「ワルイコト」をしてるんだなぁという気にはなる。
「タツならいいよ」
ずるいよな、と思いながら、丈一郎はそう言って微笑み返した。
「ワルイコト」をしてるのは明らかに自分だし、そんなことは丈一郎が一番よくわかっている。
でもここで辞めたくなかった。ここで物分りがいいフリをして「いや、自分が悪かった」なんて言ったら、急に正気じみた空気になって、この素晴らしい時間が終わってしまう。
だから丈一郎は、謝るタツを敢えて否定しなかった。
そう。こんなことになったのはタツが悪い。タツがかわいいのがいけない。タツが世界一綺麗で、かっこよくて、自分を夢中にさせるのがいけない。そう、タツが。
「あ、丈一郎! いやだっ、そこは……っ!」
やんわり微笑んだまま、いったばかりの中心から、濡れた手を更に下に滑らせていくと、タツが慌てて丈一郎の右腕を掴んだ。
「おねがい。ちょっとだけ」
ね? と可愛らしく小首を傾げる。
顔は複雑な表情のままでも、丈一郎の肩を掴む手の力が途端に緩められたのがわかる。
またずるいことしちゃったな。
でもいい。またと無いであろうこのチャンス、使えるものは使ってやる。
「ん、じょういちろっ、やだ、やめ……っ」
一応口では拒否するタツの片足を担いで割広げた。
周りよりもさらに一段赤い小さく窄 まった孔 が見え、堪らなくて、さっそく襞 をなぞる。
「んんっ、んっ! だから、ンなとこ、やめとけって……っ」
「なんで? すっごく綺麗でかわいいのに」
「あぁッ!」
笑って、つぷっ、と指を差し入れる。
意外にも、と言ったら正しいのか分からないが、タツのソコは素直に丈一郎の指を受け入れた。
宙に浮いた足先は何かを堪えて、きゅうっと固く丸まっている。
「あっ、あっ! やだっ! じょういちろっ、ぬけ……っ!」
腰をビクビク細かく揺らしながら、タツは何度も首を横に振る。
ずっとイヤイヤと首を振るのに、ぐるっと円を描くようにナカ擦ると、さらにタツの腰が大きく震えた。
今度は、トン、トン、と浅めの所を指を曲げて小突く。やだ、やだ、と言いながら、タツの中心はまた少しずつ固くなって、すぐ透明の蜜を零すようになっていた。
「……タツ?」
ここで、あれ、と丈一郎は思う。
「もしかして、ナカきもちいい?」
丈一郎がおずおず尋ねると、ちがう、と答える口とは正反対に、丈一郎の指を咥えた内壁は、きゅうきゅうとさらに強く締め付けてくる。
「タツ?」
「うっ、んんっ、やっ、やだ……丈一郎っ、もっやめ……っ、やだ、あ、あっ!」
タツの切れ長の目尻からぼろぼろと涙の粒が零れていた。
口では嫌と言ってるし、やめろ、抜け、とも、はっきりと言われている。
でも丈一郎にはこれが、慣れない場所に異物を突き入れられた苦しさからの嘆願、というわけではないのがもう分かっていた。
激しく動悸がする。
顔の血の気が引くのもわかる。
血圧が下がったような感覚に胃の下の辺りがヒュンとする。
「……タツ、ナカでしたことあるの?」
どうにも我慢ならずに聞いてしまった。
十八年生きてきて、これほど自分の発言を悔いたことは今まで無かった。
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