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番外編

番外編SS「変なやつ」ルーセル視点 学園で変わったやつに会った。 伯爵家のくせに魔力が弱いだけでも珍しいが、そもそも見たことない髪色ってだけでも無駄に人目を引く。そんな奴がよりにもよって公爵家のご子息様に専属指名されたとなれば、騒ぐなと言うほうが無理だろう。それ自体は別に好きにすればいいと思うが、自分達は噂を鵜呑みにして近づきもしないくせに、あいつが指名された途端、飴に群がるアリ状態だ。 俺には関係ないなと見て見ぬふりを決め込んでいたが、それが三日以上も続くと流石に腹が立ってきた。しつこいようだが、アイツはとにかく目立つ。 色素の薄い髪は光に透けるわ、囲まれても怒鳴るどころか笑ってるわ、囲んでるやつの目的が公爵様に指名されたから…だけが原因じゃねえ気がする。 「あんなんでも伯爵家だろ?しかも公爵家が後ろ盾だ。何とか手懐けたいよな」 「あいつ大人しいから楽勝だろ」 考えるより先に椅子を蹴ってた。 派手な音を鳴らして倒れた椅子に教室中の視線が一斉に集まったが、知ったことじゃねえ。 「ア、アークハルト…」 「うるせえぞカスが」 「なっ!」 睨んだだけで何人かは逃げていったが、プライドが高いんだかなんだか、残った一人は綺麗なお貴族様にしては分かりやすいくらい怒りを露わにしていた。煽った自覚はあるがめんどくせえ。 「人の事情をほじくって楽しんでるようにしか見えねって言ったんだよ」 「指名無しが偉そうに!」 「指名なんかめんどくせーだけだろ」 どうするかと頭をかけば、教室の入口からこの場にそぐわない音がして見てみれば、原因本人が呑気に拍手する姿に、急にアホらしくなった。 「伯爵様は大変だな」 「ん?俺?⋯まぁ、便利なこともたまにはあるよ?」 「あっそ」 目が合ったから嫌味のひとつでも言ってやれば、通じないどころかあっさり否定してきた。ただ流されてるように見えていた分、意外だと思いながら席に戻ればなぜか当たり前のように隣の席に座ってきた。 勝手に話し始めたアイツに返事をしてやる自分も意外だったが、今まで会った奴らよりはマシだと思ったアイツに、その後もやたらと話しかけられるとは思ってもいなかった。 今日も見学をいいことに昼寝でもするかと木に寄りかかれば、クミルが俺の目の前を陣取ってきた。 またか…と思いながらも、毎回よくもそんなに話すことがあるもんだと呆れながら、あぐらを組んだ上で頬杖をついた。こいつは気づいているのかいないのか、話の内容は決まってレイヴァートの事だった。噂は信じちゃいないが、クミルが話すレイヴァートはあまりにもかけ離れていて毎回少し驚く。 「なんでいつも公爵様の話を俺にすんだよ」 「公爵様じゃないよ。レイヴァート様だよ」 「同じだろ」 こいつの爵位で見ない所が気に入ってんだろうなと諦めて、クミルが話終わるまで聞いてやるのが当たり前になりつつあった。 ――― 番外編SS 「4.5話 何気ない午後」シェリオス視点 いつも通り授業を終えたクミルが研究室に来ると、軽く掃除をし始めた。本来学園側が用意した部屋である為、手入れが行き届いている部屋はたいして汚れてはいないのだが、俺が面倒くさがって出しっぱなしにしている本や紙の束をクミルはこまめに片付けている。 片付けが終わると、クミルはソファで持ち込んだ本を読み始めることがほとんどだが、その様子を眺めるのは嫌いではないと思う。今は父に丸投げされている家関係の仕事も特にないからか、余計かもしれない。 「眠い…」 「お前、本当によく寝るな」 クミルは時間が空くとよく昼寝もする。 魔力が定着しない不安定さのせいだとは思うが、あまりに頻繁だと初めて会った時の光景が一瞬、脳裏を過ぎる時がある。 「どこか調子が悪いか?」 「特には。昔ほど疲れやすくもないですし、熱も最近はでてないですし」 確かに学園で会ってからのクミルは話に聞くほど身体が弱いようには見えなかった。 気になったものにすぐに飛びつく癖は何とかしてほしいが、それでも寝込んでいるよりはマシだとも思う。 「魔力が足りないと、回復するのに眠くなるやつもいるらしいぞ?」 もう少し流す魔力を増やしてみるかと考えて、以前渡しすぎた時には気を失っていたことを思い出し、すぐにその考えは捨てた。昼寝をしたからといって、夜に寝れないわけでもないみたいなので、今のところはほっといても問題ないだろう。 手元の紙に視線を戻すと、ペン先を走らせた。 すぐに寝るだろうと思っていたクミルから返事が返ってくると少しだけインクが滲んだ。 「レイヴァート様も魔力使うと眠くなります?」 「いや、なったことないな」 「聞く人を間違えた気がします」 ソファにあるクッションを好みの高さにすると、そこに埋まるように寝始めたクミルからは、すぐに穏やかな寝息が聞こえてきていた。 「……早いな」 一時間くらいで起こせばいいかと思いつつも、インクが滲んだ紙を睨むと新しい紙に手を伸ばした。

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