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王子__もとい、マテウスが家の中で見たもの。 それは、妖しく、そして艶やかに男とまぐわうマリの姿だった。 マリの住む赤い屋根の家の中の構造は、窓から一直線になんの障害物もなくベッドが見えるようになっている。家の外からでは声こそ聞こえないものの、マリの乱れる姿をみれば、どんな風に喘いでいるかは容易に想像できた。 「______っっ!?」 窓を覗き込んだマテウスは驚きで硬直しているのと、それだけではない身体の火照りを感じていた。 今、自分がみているのは男と女の情事ではない。男と男だ。しかも、抱かれているのはまだ自分とそうたいして変わらないであろう少年。…ふと、ベッドの下に脱ぎ捨てられている黒いジャケットを見つける。そこの胸の紋章をみるなり、マテウスは更に驚いた。 「あれは……リンリザールの!?」 そのジャケットの紋章に描かれていたのは、提携を結んでいる隣国リンリザールの王家の家紋だった。なぜ王家の、それも隣国の王家の者がこんな所に……! マテウスは混乱を極めた。これはただごとではない。自分は見てはいけないものを見てしまった__。そう本能的に察知したマテウスは、急いでシャルキークの元へと帰ろうと窓から離れようとする。 ……が、硬直した身体は動かない。窓から離れたくても、それは叶わなかった。 家の中にもう1度視線を戻す。すると、ちょうど同じタイミングで顔を上げた、家の中のマリと視線がかちりと合った。 視線があった瞬間、それは時が止まったようだった。 思わずまじまじとマリの身体を眺めてしまうマテウス。真っ白な身体から伸びる長い手足、およそ男のものとは思えない、紅潮して恍惚とした表情。 後ろから男に抱かれたいる男は、今までにないほど美しかった。 ニヤリ。 抱かれている男が、うっすらと笑ったような気がした。そのまま右手を口元にもっていき、「しーっ」。完全にこちらを見ていた。 はっ、と我に返り、大急ぎでシャルキークの元へとかけていくマテウス。その勢いのままにシャルキークに飛び乗り、赤い屋根の家から離れていった。 「__くそっ、くそ……!!!」 マテウスの身体はありえないくらいに火照っていた。今までに感じたことがないくらいの熱さで。 あの、恍惚として自分を見据えた時の表情が、どうしても頭から離れなかった。冷たい夕方の風がいくらあたっても、マテウスの身体の熱は冷めなかった。 城に戻り、誰にも見つからないように急いで自室へと戻る。 帰城を知った宮廷教師がマテウスの部屋へと来たが、そんなの相手にしている余裕など微塵もなかった。 早くこの身体の中を暴れる熱をどうにかしたい。マテウスの頭の中はそれしかなかった。

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