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「ほら、言い値だ。うけとれ」
「……確かに~。受け取りましたぁ」
ベッドで気だるげに金を数えるマリ。ベッドの脇では服を整えるリンリザール王家の人間。何が王家だ。することして終わった後の相手に背を向けて服を整える滑稽な姿なんてみんな変わらないじゃないか。どれだけ顔が整っていようがどれだけ醜い男でも、同じ。
みんな日頃のストレスと欲を溜めに溜め込んで僕にぶつけにやって来る。それはそれは手荒く。回数は増えるかもしれないけどもうちょっと小分けにしてほしい。いい加減に身体がもたない。……ここ最近、客の人数が急激に増えて正直まいっている。どうしたんだか。
今までの客の相手と言えば確かにお偉い所ばかりだったがそれでも最高で議会議長や宰相、大臣だった。だからこの人、リンリザールの王家の紋章が入ったジャケットを着た人が現れた時はさすがに少なからず焦った。
王家の人間なんて相手にしたことはない。敬語の使い方がわからない訳ではないが久しく話していないのであたっているかどうか……。せっかくの上客だ、逃したくはない。
最初は1ヶ月の数回のペースで訪れていたが段々とその間隔が狭くなり、今や1週間とあけずにここへやってくる。他の客との予定もあるのでスケジュールを組むのが大変だった。
僕はどの客に対しても贔屓、というものをしたことがなかった。だが相手が王家の人間ともなれば話は別だ。この人が指定した日にもし他の客との予定が入っていたとしてもそれを潰してこちらを優先させていた。……それには理由がある。
せっかく王家の人間と知り合えたんだ。この人にうまく取り入ってこの生活から脱却したい。そしてあわよくば_____
「おい、きいているのか」
「……ぇ、あ。ごめんなさい、もう1回」
「だから、次は4日後の来ると言ったんだ。いいな」
「……はぁ~い」
4日後ですか…またなんとも日の浅いことで……。もういい年なはずなのに元気だねぇ~。
その人はこちらを軽く一瞥し、家からでていった。家の外で馬が軽くいななく声がきこえる。
「……それにしても今日のあの子って……まさか、ねぇ」
すっごく……似てた、なぁ。
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