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例の如く、城を抜け出したマテウスは早速あの森へと足を踏み入れた。昨日と同じようにすべての分かれ道は右を選ぶ。
……昨日、城に戻り自室にこもったマテウス。あの後はなかなか熱が収まらず本当に大変だった。いくら欲を出してもおさまらないそれに軽く苛立ったほど。
それほどにあの家でみた青年の姿はマテウスにとっては毒だった。毒でしか無かった。艶のあるあの顔を己の手で歪めてみたい、そんなあらぬ欲求をもったのも事実だ。
「……ここ、か」
気付けばあの赤い屋根の家の前にいた。
昨日の所にシャルキークをつなぎ、足音をたてないようにゆっくりと家に近づく。……と。
「あれ? もしかして昨日の子?」
「!!」
右の背後から1つの声。思わず振り返ってしまう。
「あ、やっぱりそうだ。どんしたの、こんな所で」
驚いたのとバレた……!! という思いで開いた口はパクパクと動くだけ。
なんとも情けない姿をさらしたわけだが声をかけてきた青年は気にせず続ける。どうでもいいらしい。
「……ぁあ、もしかして昨日の忘れられなくてまた来ちゃた?」
にやにやと艶やかな悪魔の笑みを浮かべる。ここまできてようやくマテウスの口が声を発した。
「ぇ……っと、その! 昨日は、えっと、あの…決して覗いたわけではなくて!!」
「ぇえ、言い訳? 別に人に見られてするのなんて慣れてるからいいよぉ」
あの最初の色っぽい笑みはどこへやら。今度顔に浮かべたのは言っていることの内容とは裏腹の、それはそれは優しそうな表情だった。
「ね、せっかくこんなところまで来たんだし、家に入ってお茶でものまない? 昨日の人、おいしいの持ってきてくれたんだ」
「あ、あぁ」
マテウスは言われるがまま、青年に手を引かれて赤い屋根の家に入っていった。
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