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第2話

 ブチブチと音を立てて、シャツのボタンが弾け飛んだ。  性急に衣服を剥ぎ取られ、床の上に落とされる。それを思わず視線で追ってしまったネムは、熱に浮かされながらも、後で転がったボタンを探さなきゃと思った。破けたシャツは縫えばまだ着られるはずだ。まだあれは買ったばかりで、捨てるのも勿体無い。  そんなことをつらつらと考えていると、熱っぽい声色で名前を呼ばれた。 「よそ見をするな、ネム・ノワール」  床に落ちたシャツから声のする方へ視線を動かすと。  そこには荒く息を吐きながら、大きく口を開けるクロヴィスの顔があった。 (……食べられる……)  そう思った瞬間には、首筋に噛みつかれていた。 「あっ……っ」  甘く噛まれただけで、ジンとした痺れが腰の奥へ響いてくる。べろりと生暖かい舌で舐められただけで、下腹部に熱が集まっていくのがわかった。 「んっ……ふっ、あっ……ああっ!」  足の間に割って入ってきたクロヴィスの膝が、ぐいとネムの股間を押した。直接的な刺激に堪らず腰が跳ねるが、覆い被さるクロヴィスの体が邪魔をしてベッドに押さえつけられてしまった。逃せない熱のもどかしさに、ネムは喘ぐことしかできない。  大きな手のひらが胸の突起を押し潰すように触れてきて、背中が仰け反った。 「ひいいいぃっ! あっ、あああっ!! やっ、あああっ」  初めての感覚に、もうどうして良いかわからない。声を上げるのを我慢できず、腰も揺れてしまう。クロヴィスの膝に腰を擦り付けるようにしてしまった。でもその刺激も気持ち良くて、腰を動かすのが止まらない。 (あっ、あっ、ど、どうしよ……っ) 「少し触っただけでドロドロだな」 「……あ……んっ」  熱が集まり膨らんだ股間を、クロヴィスの膝がぐりぐりと力をこめて押してきた。唯一身に着けていた下着を下ろされて、勃起してはしたなくも濡れそぼっている陰茎を顕にされる。赤い瞳がじいっと食い入るようにネムを見つめてきていて、恥ずかしさから身を捩った。 「み、みないで……」 「何故そんな事を言うんだ?」 (何故って恥ずかしいからに決まってる!)  それにネムの容姿は醜悪で、他者からは眉を寄せられるようなものだから――。  クロヴィスの指先が、ネムの目元に触れた。 「そう言って、どれほどの人数を誘い込んだ?」  何の事だかまったくわからず、ネムは答えられない。もしや先ほどと同じように、クロヴィスは誰かと勘違いしている可能性が高い。  ネムは恋人がいたことがない。ほしいとは思うけれど、人から嫌わているから望んでもできないのだ。だから誰かと肌を合わせることすら初めてなのに。 「したことなんて……っ! あっ、ひぁあああっ!?」  つぷりと、窄まりへ指が差し込まれた。しかも容赦なく押し広げるように指を出し入れされ、ネムは悲鳴をあげる。 「感じまくってるな」 「ちが……ひいぃんっ、やああっ!」 「何が違うんだ? こんなにヌルヌルにさせて」  窄まりに入り込んでいるクロヴィスの指が二本に増えて、肉壁を掻き分けるように奥へと侵入した。そんなところ人に触れられたことがなかったネムは、半ばパニックになってしまう。けれども窄まりの奥にある突起を擦られて、痙攣するかのようにビクッと激しく震えてしまった。 「あああああっ!?!?」  押し潰されるように指を動かされるたび、激しい快楽がネムを襲った。腰の奥から頭の上まで貫くように、強い刺激がやってくる。声なんか我慢できやしない。  窄まりの奥を擦られるたびに、勃起したネムの陰茎は震えながら透明な液を滴らした。 (ひぃ、き、きもちよすぎておかしくなる……っ!!)  媚薬の影響なのか、体の反応がおかしい。痛みもなく、ただただ熱く体が疼くばかり。 (きもちいのに、たりない)  もっと腹の奥を抉るような熱くて太いモノがほしい。覆い被さっているクロヴィスの腰の付近に、硬く熱いモノがあるのに気付いてしまってからは、それの事しか考えられない。 (もっとおく、ほしいっ)  何度も与えられる強い快感に、とうとうネムの理性は焼き切れてしまった。クロヴィスの指が三本に増やされ、とうとうネムは我慢できずに手を伸ばす。 「もっ……もう……、いれて」  お願いと譫言のように繰り返す。視界は涙で滲んでしまっていてよく見えず、クロヴィスがどんな顔をしているのかネムはわからなかった。  乱暴に指を引き抜かれて、ネムは声を上げて震えるだけだ。 「はあ……あっ……はっ、……?」  クロヴィスは何も言わない。どうしたのだろうと荒く呼吸をしながらも、不思議に思っていたその時だった。 「……っ!? あっ、ああああああっ!!!!」  火傷しそうなほど熱いモノが、ネムの窄まりに押し当てられたかと思うと。肉壁を掻き分けて奥へと侵入してきた。 「ひぃいいいっ!!」  異物感に泣き叫びそうになるのに、待ち望んでいた質量に歓喜の声を上げてしまう。  相反する気持ちに支配されて、ネムは助けを求めるようにクロヴィスに縋った。 「……っ!」  クロヴィスが息を呑んだように動きを止めたため、ネムは無意識に腹の奥へ埋まっているそれを締め付けてしまった。 「あっ……あっ、ああっ」  短く喘いでいると、クロヴィスは再び腰を押し進めてきた。クロヴィスの陰茎の雁の部分が、窄まりの奥の突起を突き上げた途端、ネムは声を上げて絶頂してしまった。 「ひゃああああっ!!!」  指などでは比べものにならないくらいの刺激。 「はああっ、ああう……うっ」  ネムの意識は朦朧としていたが、クロヴィスはそんなネムのことなどお構いなしに腰を動かし始めた。 「ひぃいいっ!? いぎっ、いっちゃ……やあああ、いまいったばっかっ……!」  クロヴィスが奥を突き上げる度に、ネムの陰茎の先からはびゅうっと精液が噴き出した。クロヴィスの腹を汚してしまっているのに怒る様子はない。それどころか、興奮したように顔を紅潮させて、激しく腰を動かしていた。 「あっ、ああああっ!!」 「……すごいな、ネム・ノワール。絡みついて離さないつもりか」  耳元で囁かれただけで刺激になってしまい、体を震わせた。  潰れたカエルのようにみっともない格好。恥ずかしいのに気持ち良くて堪らない。 「ひぃう……っ、ああああっ……、んひぃいいっ!!」 (きもちいい、きもちいいっ)  圧倒的な体格差。筋肉質なクロヴィスの肉体が、ネムの体にぴったりと密着して押し潰すように伸し掛かる。身動きの取れないネムの最奥を貫いて、熱を放った。 「んんんひいい……っ!!!」 (こ、こんなの、だめだ……っ、だめっ)  誰かの熱を感じながら絶頂する快感に、ネムは悲鳴のような嬌声を上げた。こんな快感を覚えてしまったら、自分はもうどうしたら良いのかわからない。  ネムの窄まりに埋まったクロヴィスの陰茎からは、精液が吐き出され続けている。最奥に種付けでもするかのように、腰を緩く動かしていて、その度にネムは軽い絶頂に至った。 「ひぅ……っ、あっ……あっ。おか、あたま、おかしくなるぅ」  思わず呟いたネムの言葉に、クロヴィスが小さく笑った。  喘ぐネムの唇を指先でなぞった後で、  パンパンと乾いた音が部屋に響く。  それと結合部から、湿った音も。 「あっ、……もっ……、だめっ……っ」  体が熱くて堪らない。繋がってるところも、触れられているところも熱い。  クロヴィスが腰を動かして突き上げてくるたびに、意識が焼き切れそうになった。  と、その時。クロヴィスがネムの腕を引っ張り、強引に体を起こした。ズンッと重い衝撃が腹の奥へ響き、ネムは悲鳴のような喘ぎ声をあげた。 「おっ、おおぉ……っ、んあああっ……!」  目の前がチカチカと点滅する。  ふっと意識が遠退きかけたネムの体を、クロヴィスは後ろから抱きしめた。太くしっかりとした腕と密着する体の熱さに、あまりにも幸せで震えてしまった。 (だ、抱きしめられるの、……はじめてっ)  幼い頃に両親が死んでしまってからは、誰もネムのことを抱きしめてくれなかった。  同族はネムを遠巻きにするし、稀に優しくしてくれる相手がいても、周囲が近付くことを許さなかった。  ネムがそばにいくと「気持ち悪い」だの「何を考えているかわからない」だの。酷い時にはお前みたいなのが近付くなと殴られたりもした。  仲間外れにされるのは寂しい。ひとりぼっちはもういやだ。  ずっと誰かに抱きしめられたかった。  誰からも嫌われている自分がこうして誰かに触れられ求められるなんて、もう二度とないかもしれない。  そう思うと、もっと抱きしめてほしいという欲望に火がついた。 「あうっ、……っ!! もっ……もっと……」 「……うん?」  喘ぐようにつぶやいた言葉に気付いたクロヴィスが、動きを止めた。ネムの顔を覗き込むように見てきて、爛々と燃えるように赤い瞳と視線が絡まる。 「もっと……っ、ぎゅっと……して……っ」  心の奥底にある切なる願いだったからか、ネムの声は震えていた。  クロヴィスは口元に笑みを浮かべると、耳元で囁いた。 「ああ、……もっとだな」 「ぎぅっ、……っ、……ひいいいいいっ!?」  ズンっと音がしたかと思うほどに、深く抉るように突き上げられる。あまりの衝撃に目を見開くネムに、クロヴィスはさらに言葉を掛けた。 「ネム・ノワール。お前がこんなにみっともなく喘ぐなんて、思ってもみなかった」 「ひぃいうっ、あっ、あああああっ」  腰を打ち付けながら、クロヴィスは舌でネムの首筋を舐め上げる。 「徹底的に可愛がってやる。……覚悟しろ、ネム」  鋭い犬歯が、ネムの皮膚に刺さった。甘噛みだったが、それでも痛みはある。 (た、たべられる……!?) 「ひっ、ああああっ!!」  でも食べられても良いかしれないという考えが、ネムの脳裏に過ぎった。だって抱きしめられるのは、気持ちが良すぎて。 「も、……もう、……だめええっ」  背中を仰け反らせながらネムは叫んだ。  本当にもう限界だったから。  ポンッと間抜けな音がして、とうとうネムが隠していた耳と角が顕になってしまった。 「……角だと?」  クロヴィスの怪訝そうな声が聞こえてきたが、ネムは手で隠すこともできず脱力していた。 「あっ……あう……」  そう、これはネムが嫌われる原因。  普段は人族のふりをしているものの、ネムの本当の種族は羊獣人。しかも角があるという大変稀有な見た目だったのだ。

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