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第16話

「暖炉の側に運んで!! 靴を脱がせてお湯を!!」 「濡れている服は脱がせて、毛布を掛けるんだ」 「凍傷にはなっていないようね」  公爵邸へ辿り着くと、クロヴィスを待ち構えていたかのように、兄夫婦が出迎えた。そして止められることなく暖炉の前へ通されると、すべて準備されていたかのように、冷え切ったネムの体を温めるべく動き出す。 「魔法使いが来て、凍死寸前の獣人が運ばれてくるから準備しておけと言われた。クロヴィス、この子がネムくんか?」  公爵である兄のレオネルが言った。クロヴィスはネムを抱きしめながら、魔法使いがと鸚鵡返しで言葉を口にする。 「……っ!? クロヴィス様」  使用人の一人が声を上げた。  視線を向けると、お湯につけて温めていたネムの手の先が透き通り透明になっていく。だんだんと腕の方にまで広がってくるのを見て、クロヴィスが青ざめた時だった。 「やれやれ、相当ひどい目にあったようだな。すぐにこの世界から消えたがってるなんて、難儀な奴め」  不意に声が聞こえたかと思うと、クロヴィスの目の前に角のある魔法使いが現れた。その手には一枚の葉が生えた若木が握られている。 「この私の魔法をかき消すなんて、相当だ。おい、そこの」  魔法使いはクロヴィスに声をかけてきた。 「お前、此奴と深い仲なのだろう。安心させるように声でも掛けてやれ。それから密着して温めておけ」 「はっ?」 「此奴は警戒しまくっている。いくら私が此奴の魔法を打ち消しても、無意識に掻き消してくるのだ」 「魔法とは、……ネムが魔法を?」  クロヴィスの疑問に、魔法使いは大きく頷いた。 「そうだ。それも常時無意識に発動しておる。誰も自分を見つけないように、消えてしまいたいという願いから生まれた魔法だろう。それが暴走しているから、存在そのものがこの世界と切り離されかけているというわけだ」  そんなと唇を震わせたクロヴィスの頭を、魔法使いは握っていた若木で叩いた。 「だが、お前さんが触れても消えようとはしておらん。つまりそういうことだろ。ほら使用人共、他の連中も、部屋から出て二人きりにしてやれ。それが一番手っ取り早く、凍死から助かる方法だ」  行くぞと有無を言わせぬ迫力で、魔法使いは部屋の中にいた兄や使用人たちを下がらせた。  残されたクロヴィスは呆然としてしまったが、腕の中のネムがうめいたような気がしたので慌てて視線を向けた。 「……うぅ……」  小さく声を漏らしながらも、ネムはほぼ無意識にクロヴィスの胸に顔を擦り寄せている。  それはいつも寝入っているネムがする仕草で、クロヴィスが抱きしめると顔を緩めて笑うのだ。  それを思い出したクロヴィスは、ネムを抱きしめる。すると小さく笑ったような気配がした。 「……ネム」  名前を呼ぶと、ネムの耳がぴくぴくと動いて反応する。  クロヴィスはネムの頬を両手で包むように触れると、その唇に口づけを落とした。  ***  寒くて冷たくて寂しいところにいたはずなのに。  熱くて苦しくて、気持ちがいいと、ネムは堪らず息を吐いた。ぴとりと頬に当たる肌の熱さ。 「……クロヴィス……」  名前を呟くと、荒い息遣いが耳元で聞こえた。 「……ネム」  なんだかくすぐったくて、耳がピクピクと動いてしまう。すると湿った生暖かいものに包まれて、ネムは思わず声を上げてしまった。体をびくりと震わせて、微睡から強制的に覚醒させられる。 「……やぅ……ぅっ」  ねっとりとしゃぶられて、敏感になった耳を甘噛みされて。  ネムは逃げようとして身をよじった。むずむずとくすぐったい。だが腰を動かした途端、自分を貫いている太くて熱いそれに気が付いた。 「あっ……ああっんんっ……っ!?」  腹の奥が疼いて嬌声を上げてしまった。逃げるように腰を浮かすと、がっしりとした手がネムの腰をつかみ押さえつけ、打ち付けてくる。 「ひっ……ひぃんっ、あっ……あっ……ああああっ!!」  目を見開くとそこには、会いたいと思っていたクロヴィスの顔があった。 「はっ……はっ……あっ……?」  これは夢なのかなと思ってしまうほどに、なんだか現実味がない。触れ合う肌が火傷しそうなくらい熱くて。 「……っ!? くあっ……あああっ!!!」  ぼんやりと夢見心地のネムを現実に引き戻すかのように、激しく腰が打ち付けられて、ネムはわけもわからず喘いだ。 「ひぃう……、あっ……あっ……」  肌がぶつかる乾いた音と、結合部の湿った音がネムの耳に響いてくる。  そして洗い呼吸の合間に、ネムの名前を呼ぶ、クロヴィスの声も。 「……ネム、……食べていいか?」  ──じんと、身体の芯が蕩けてしまうような感覚に陥った。  ああ、食べられてしまいたい。  食べられてクロヴィスの中に溶けてしまえたら、もう怖いことなど何もなくなって幸せだと思う。  でも、溶け合ってしまったらこうして腹の奥を突き上げられて、頭がおかしくなるほどに気持ちいいと感じることはなくなってしまう。  それは少し寂しい。  こうして肌を合わせてくっついているのが、何よりも幸せで。  もっとぎゅっとしてほしいとネムはクロヴィスに抱き着いた。  そして喘ぐようにもっとと、足を絡めてねだった。 「……もっといっぱいちょうだい」  グンと、ネムの後孔に収まっているクロヴィスの陰茎が大きくなった。  内壁を押し広げ、その存在を主張している。覆いかぶさってきているクロヴィスの体に圧されて、逃げることもできない。 「あ、……あっ、きもちいのから、……にげれな……っ」  腰だけが激しく動いて、快感だけがネムの中に募っていく。 「あっ、ああああっ!!!」  目の前が真っ白に弾けた。  注ぎ込まれた熱い熱に促されるように、密着したクロヴィスの腹にネムは精液を吐き出してしまう。  何度も痙攣するかのように体が震えてしまう。 「はぁ……あっ」  荒く呼吸を繰り返したネムのこめかみに、クロヴィスの唇が触れた。 「……ネム、目が覚めてよかった」 「……えっ?」 「どこか痛いところかおかしく感じるところは?」  痛いところはない。おかしいところと言えば。 「お、……お腹の奥、……熱くて、じんじんして……」  もっと欲しいと思ってしまうのは、明らかにおかしいとネムでも思う。おずおずとクロヴィスを見上げてみると、目を見開いたまま固まっていた。  それから。 「……ネム、もっともっと、食べさせてくれ」 「ひあああああんっ!?!?!?」  部屋の中に嬌声と湿った音が延々と響いたのだった。

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