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肉塊
マイトが右腕をだらりとシーツに預け、ディアスの膝の上で猫のように甘えていると、ふいにディアスの指先が、マイトの滑らかな左腕の筋に沿って、ゆっくりと撫で下ろされた。
「……マイト。君がずっと逃げようと足掻いているんじゃないかと思ってたから、わざとその右腕を放置していたんだよ」
ディアスは艶のある声で、耳元に吐息をこぼす。
「オレは、君をナノマシンですぐにでも治してやるつもりだった。君がオレから逃げないと、全身全霊で誓うならって、ね」
その言葉に、マイトは「へぇ、そうだったんだ」と、まるで他人事のように目を瞬かせた。
粉砕された右腕の痛みも忘れて、ただディアスに撫でられていることの心地よさに、ひらひらと長い睫毛を揺らす。
「まぁ、俺はディアスが全部やってくれるなら、このままでも楽でいいんだけどね。俺、案外この不自由な感じ、気に入ってるよ」
その言葉を聞いた瞬間、ディアスの瞳が、氷のように静かな愉悦で満たされた。
この男は、自分が何を奪われても、どれほど無惨な姿になろうとも、すべてを「快楽」と「楽」に変換してしまう。
支配者としての自分の誇りが、マイトのあまりの底なしの能天気さに、激しく逆撫でされるのを感じる。
ならば。
ディアスはふっと妖しく笑うと、マイトの無防備な左腕を強く掴み、そのまま逆の手でマイトの脚へと這わせた。
「そうか。……なら、君にはもう両腕も、その脚も不要だということだね」
ディアスはマイトの首筋に顔を埋め、獲物の頸動脈を愛撫するように、鋭い牙を立てた。
「いっそ全部潰してしまおうか、マイト。君が二度と、オレの元から歩き去れないように。君のすべてを砕いて、オレの寝台で転がすだけの惨めな肉塊にしてあげる」
ディアスの吐息は甘く優しく、しかしそこには確かな破壊と狂気予感が宿っていた。
マイトの背筋に、冷ややかな、しかしゾクゾクと火照るような恐怖が駆け抜ける。
「……全部、潰すのか」
目を見開いたマイトの声が、かすかに震える。
恐怖。そう、ようやくマイトが「恐怖」というスパイスに反応した。ディアスは歓喜に震えながら、マイトの左手首を容赦なく締め上げる。
「そうだよ。君がオレに怯え、泣き叫び、それでもオレなしでは生きられないと懇願する姿が見たい。……どうだい? 今ならまだ、その恐怖で身体を震わせてやる時間がある」
ディアスは、言いしれない恐怖に瞳を見開いたマイトの顔を、慈しむように覗き込む。
マイトは、ディアスの狂気じみた提案に、呼吸を忘れた。
ただの脅しではないとわかる。
眉ひとつ動かすことなくやり遂げてしまうことが、わかる。
従順な愛玩動物として完成されたはずのマイトが、恐怖に染め上げられていく――その刹那の表情こそが、ディアスが何よりも求めていた最高級のデザートだった。
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