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肉塊
医療ポッドの液体に全身を沈められ、揺蕩うように身を任せる。
壊れた細胞がひとつづつ再生され作りかえられていく。
数時間して、淡い光が消え、マイトの四肢から失われていた血色が戻る。
医療ポットからディアスはマイトを抱き上げると、ベッドにおろしてタオルで体を優しく拭いていく。
マイトは試すように指を動かした。
再生された腕は、かつての傷跡さえ残さず滑らかで、まるで何もなかったかのようにしなやかに動いた。
自分の腕を確かめるように何度も握ったり開いたりするマイトの表情には、先ほどまでの翳りは微塵もなく、いつもの脳天気な笑みが戻っていた。
「わあ、すっげぇ! ……ディアスの技術、やっぱり最高だな!こんな、元通りに治せるとか」
マイトは機嫌よくベッドから飛び降りると、治ったばかりの腕を振り回して見せた。自分を追い詰めた男を恨むどころか、その高い技術力を純粋に称賛する様子は、まさに調教の完成形と言える。
「これでまた、あんたの役に立てるな! 整備もいいけど、やっぱり戦場で戦闘機ぶん回すのが一番ワクワクするよな」
マイトが快活にそう笑った時、ディアスは満足げに目を細め、マイトの顎を指先で掬い上げた。
「……マイト。君には、メカニックとしての腕はもちろん評価しているが、それだけでは足りない」
ディアスはマイトを壁際に追い詰め、逃げ場を塞ぐようにして、その瞳を射抜くように見つめた。
「君には、その優れた直感と、かつての首領としての経験を活かしてほしい。……これからは、メカニックの仕事だけでなく、私の『副官』として、艦の舵取りと戦術判断にも深く関わってもらう」
マイトは一瞬、目を丸くした。単純な作業よりも、高度な頭脳労働と軍団の統率を任せるというディアスの言葉は、彼に対する最大の「信頼」と「独占」の証だった。
「副官……? 俺が? ……まあ、デスクワークはちょっと肩が凝りそうだけど、ディアスの隣で、あんたのやりたいように艦を動かせるなら……まあ
新しいこととしては、結構面白いかもな」
マイトは頬を紅潮させ、期待に胸を躍らせる。
ディアスは、そんなマイトの髪を愛おしげに撫でた。自分という絶対的な王の片腕として、かつて敵だった男を組織の要に据える。
それは、マイトを完全に自分というシステムの部品として固定し、一生離さないという執着の強い宣言だった。
「……期待しているよ、副官。君のその脳みそも、心も、すべてオレのために使い切ってくれ」
「任せとけって。……副官の仕事も…………。あんたの夜の相手も、全部俺が完璧にこなしてやるよ」
マイトは力強く頷き、再生されたばかりの手でディアスの首に抱きついた。
ディアスは、マイトのゾクゾクとするような悦びを覚えた。
――治せるならば、何度でも壊せばいい。
そのたびに味わえる、マイトの恐怖に歪んだ顔と、そこから這い上がりディアスに愛を囁く姿。
それはディアスにとって、終わりのない極上の娯楽であり、絶対に壊れない永久機関だった。
壊されて、砕かれて、それでも最後にはディアスの隣という居場所を選び取る。
マイトの心には、もうディアス以外の選択肢は存在せず、彼はそのあまりに歪んだ幸福のなかで、新たな『副官』としての第一歩を踏み出したのだった。
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