36 / 49
品評会
品評会という過酷で爛熟した狂宴が終わり、二人は会場となった超高層ホテルの最上階、豪華なスイートルームへと足を踏み入れ直した。
重厚なダブルドアが静かに閉まり、外界の騒めきが完全に遮断される。
足首まで沈み込むような毛足の長い絨毯を抜け、キングサイズのベッドの上に崩れ落ちたマイトは、首筋に漆黒の首輪を嵌められたまま、未だに冷めやらない興奮で荒い呼吸を繰り返していた。
「はあ……っ、あぁ……っ、でぃあす……様……ぁ……っ」
特殊な仕掛けなど、一切使われていない。
ただ大勢の観客の面前でディアスの圧倒的な所有物として扱われ、その美貌と愛撫に全身を弄ばれた――その純粋な事実と快感の余韻だけで、マイトの頭脳はドロドロに溶けきっていた。
小麦色の肌は真っ赤に上気し、全身から甘い熱気が立ち上っている。
自分から進んで主人の足元に突き進み、理性を吹き飛ばして啼き散らした興奮。
その肉体の火照りが引ききらず、マイトの指先はシーツを強く握りしめたまま、小さくビクビクと痙攣していた。
ディアスは軍服のジャケットをゆっくりと脱ぎ捨てると、ベッドの端へと静かに腰掛けた。
そして、手袋をゆっくりと外し、剥き出しになった白く大きな素手で、マイトの汗ばんだ金髪をそっと救い上げた。
覚めない熱狂と、主人の「よしよし」とする甘やかしが精神を落ち着かせる。
「まだ熱が引かないかい、マイト」
低く、耳元を撫でるような甘い柔らかな声音。
ディアスの手のひらが、マイトの頭を優しく、何度も何度も「よしよし」と愛おしげに撫で下ろす。
その温もりが頭頂部から伝わった瞬間、マイトの口から「ひぅ……っ」と情けない、甘えた声が漏れ出た。
「ディアス、様……っ! あはっ、手……温かい……っ! 俺、、お、俺さぁ……っ!」
マイトは蕩けきった蒼い瞳からボロボロと溢れる涙も拭わず、自らシーツを滑るようにしてディアスの両腿の間へと這い寄った。
そして、幼子のように主人の膝へと褐色の顔を強く擦り付けた。首輪に繋がる鎖がジャラジャラと淫らな音を立てる。
「俺、な、……っ、ちゃんと言えたろ……? みんなの前で、俺はディアス様だけの特別なめす犬だって……ッ! あんたの美貌に狂わされた、恋の奴隷だって自慢してやったんだぜ……っ!」
「ああ、聞こえていたよ。かつての敵たちの前で、あれほど誇らしげにオレの足元へひれ伏すとはね。……本当にお前は、世界一お利口で、最高に愛らしいオレの玩具だ」
「あはっ……! ディアス様に、褒められた……っ、なでなで、されてるぅ……っ!」
マイトはへにゃりとだらしなく口元を緩め、主人の膝の上で甘えるように頭をすりすりと動かした。
生まれつき頭のネジが吹き飛んでいる彼にとって、こうして主人の足元で知性を溶かし、撫で回される時間こそが、この世の何よりも至高の報酬だった。
ディアスはマイトの乱れた金髪に深く指を滑らせ、そのまま首筋の漆黒の首輪――皮膚に食い込むギリギリの柔らかい肌を、爪の先でゆっくりとなぞった。
「んッ、はぁっ……、そこ、ゾクゾクする、ディアス様……っ」
「大勢の目の前で、自分の意志でオレにすべてを捧げたご褒美だ。欲しいだけ、甘えていいぞ」
「ディアス様……っ! だいしゅき、だいしゅきだよぉ……っ! もっと、もっと撫でて……俺のこと、もっと壊して……っ!」
マイトは涙目で主人を見上げ、掬い上げられたディアスの親指に、自ら熱い唇を寄せてペロリと舌を絡めた。
自分の意志でディアスの手元に溺れ、主人の指先を貪る狂信的な愛。
ディアスはアイパッチの奥の黒い左眼を歓喜で細めると、膝の上でくったりと身を委ねてくるマイトの腰を引き寄せ、その唇に深く、蕩けるような吻を落とした。
「お前はもう、この腕の中から一生出られない。オレにこうして甘やかされるためだけに生きるんだ」
「出られるわけねぇじゃん……っ! 俺の居場所は、ここだけだ………っ」
ホテルのスイートルームという二人だけの密室で、狂宴の熱気を引きずったまま、マイトは主人の温もりに包まれて心底幸せそうに喉を鳴らし続けた。
ともだちにシェアしよう!

