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※まな板のコイビト(注 猟奇)
2週間ぶりに取り戻した自分の手足で、壊れんばかりにディアスの首筋へしがみつくマイト。
その荒い息と、必死に自分を繋ぎ止めようとする力強い腕の感触を噛みしめながら、ディアスはアイパッチの奥の左眼をトロンと甘く濡らし、心底うっとりとした吐息を漏らした。
「……ふふ、本当に美しい顔だったよ、マイト」
白く美しい手が、マイトの背中を、再生したばかりの滑らかな肌を、慈しむようにゆっくりとなぞり上げる。
「手足が無く、ガラスの向こうでただ揺れるしかなかったお前の顔……。ただ痛がるのとは違う、オレを失うかもしれないという本気の『恐怖』に歪んだ蒼い瞳は……息を呑むほど綺麗だった」
ディアスにとって、2週間の欠損治療は単なる肉体の再構築ではなかった。マイトの中に眠る真の恐怖――「ディアスから離される絶望」を引き出し、それをガラス越しに観察し続けるという、至高の観賞時間だったのだ。
ディアスはマイトの耳元に唇を寄せると、その過敏な耳たぶを優しく噛み含み、甘く、溶けるような声音で囁いた。
「ねぇ、マイト。……また、お前のその綺麗な手足を切ってもいいかな? 今度はもう少し長く、手足の無いお前を愛でてあげたいのだが……我慢できるかい?」
耳元で囁かれたあまりにも酷いおねだりに、マイトの体がビクッと跳ねた。
直ったばかりの手足。まだ身体の奥には、細胞が急ピッチで再生された熱い疼きが残っている。またあの14日間の「抱きしめることも、這い寄ることもできない絶望」を味わわされるかもしれないのだ。
普通なら「ふざけるな」と悲鳴を上げて逃げ出す場面。
マイトはディアスの胸元に顔を埋めたまま、うーんと唸り、涙目の蒼い瞳を吊り上げて睨みつけた。
「あー……っ! ディアス、あんたマジで言ってるのかよッ!? 今直ったばっかだぞッ! 2週間あんたを抱きしめらんねぇの、どんだけ焦ったと思ってんだよバカッ!!」
口では必死に抗議し、ジト目で文句を言っているマイト。
だが――ディアスの首に巻きつけられた両腕も、その腰をがっちりと挟み込む両脚も、1ミリたりとも緩むことはなかった。
逃げる気など最初からゼロなのだ。
それどころか、また切られるかもしれないという恐怖を感じながらも、今直接触れ合えている主人の体温に興奮し、ナカを熱くさせている。
マイトは不機嫌そうに口を尖らせると、ディアスの首筋にガブッと甘噛みし、そのまま力任せに顔を強く押し付けた。
「また切るなら……ッ! 今度はカットする前に、俺が気絶するまで死ぬほど抱いてからにしろよッ!! そうじゃなきゃ……いくらあんたのお願いでも、絶対納得しねぇからなッ!!」
マイトの「抵抗」と呼ぶには甘すぎる条件提示に、ディアスは満足のゆく爆笑を低く響かせた。
「ふふ……くははっ! ああ、いいとも、マイト。気絶するどころか、お前の頭が完全に狂い切るまで……たっぷり愛してあげよう」
ディアスはマイトの身体を抱え直すと、そのままキングサイズの深々としたベッドの上へと押し倒した。
恐怖の表情を見せられたことに満足し、さらにそれを繰り返そうとするサイコパスな暴君。
恐怖に引きつりながらも、「抱き潰してからにしろ」と自ら過激な愛を強請る狂犬。
手足を失う恐怖すら、主人の圧倒的な美貌と甘い毒の前には最高のスパイスにしかならないようだった。
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