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※まな板のコイビト(注 猟奇)

残りの七日間。 それはマイトにとって、肉体を再生させるための期間であると同時に、与えられた「ディアスの熱」を細胞の一つ一つにまで定着させるための、甘美で残酷な『熟成期間』だった。  培養液の中で、薄紅色の未熟な皮膚は徐々に本来の厚みを取り戻し、千切れていた筋肉は再び強靭な繊維を編み上げていく。  皮膚が形成されるたび、あの半生の状態で叩き込まれた圧倒的な快感と、ディアスの手のひらの熱が、そのまま細胞の髄に閉じ込められていく。 培養槽に浮かびながら、マイトは眠ることもできず、ただ自分の内側で脈打つ『主人の記憶』に当てられて、ポコポコと泡を吐き出しながら絶頂と虚脱を延々と繰り返していた。 あぁ……ディアス、ディアスの熱が、俺の身体の中で固まっていく……。早く、早く出たい……早く、俺の全部を捧げたい……っ。  そして、約束の十四日目。  プシューッ……!!  医療区画の密室に、培養槽の排気音が重々しく響き渡った。  青く光る液体が急速に抜け落ち、分厚いガラスのハッチがゆっくりと開かれる。  冷たい空気が流れ込んでくる。傷跡ひとつない、滑らかで引き締まった肌。かつての強靭で完璧な四肢がそこにあった。 「……おはよう、マイト。素晴らしい仕上がりだ」  手術台の傍らで、優雅に腕を組んで微笑むディアス。  その声を聞いた瞬間、マイトの蒼い瞳からボロボロと大粒の涙が溢れ出した。 「あ……あぁ……っ、ディアスっ……ディアスッ!!」  マイトは完璧に再生した両腕を伸ばし、ディアスの胸へと飛び込んだ。  そして、主人の背中を狂ったように強く、強く抱きしめる。自分の意志で手足を動かし、大好きな人にすがりつけるというその当たり前の事実が、今のマイトにとっては発狂するほどの歓喜だった。 「あはは……っ、手ぇ、動く……っ! 俺の手、あんたを抱きしめられるよぉっ! ディアスっ、ディアスぅッ!!」 「よしよし、よく耐えたね。意識を保ったまま、再生するまで過ごせるなんて、流石だよ、オレの狂犬。……どうだい、自分の新しい身体の使い心地は」  ディアスはすがりついてくるマイトの背中を、手素手でゆっくりと撫で下ろす。  その瞬間、マイトの身体がビクゥッ!と大きく跳ね上がった。 「ひぁッ!? あ、あぁ……ッ! す、すごい……っ!」  マイトはディアスの胸に顔を擦り付けながら、だらしなく口端を緩めてよだれを垂らした。  皮膚は分厚く、正常に再生しているはずなのに。ディアスに撫でられた瞬間、細胞の奥底に閉じ込められていた『半生の時の快感記憶』が一気にフラッシュバックし、ただ背中を撫でられただけで、マイトの脳髄は目の前が白く飛ぶほどの絶頂を迎えてしまったのだ。 「あはっ……あぁ……っ、おかしい、おかしいよぉ……っ。ただ撫でられただけなのに、中が、ぐちゃぐちゃにされてるみたいに……っ」 「当然だろう? お前のその新しい皮膚も、肉も、神経も……すべてオレが一度壊し、オレの愛を直に流し込んでから蓋をしたものだ。お前の身体はもう、オレが触れるだけで最高の快感を再生する『専用の玩具』として完成しているんだよ」  ディアスはマイトの顎をすくい上げ、涙に濡れたその顔をうっとりと見つめた。  恐怖も、後悔も、プライドも何一つない。ただ目の前の主人に壊され、作り直されたことを至上の悦びとして受け入れている、最高傑作の笑顔がそこにあった。 「……あはっ、最高だ……。俺の細胞、全部あんたの形を覚えてる……っ。俺、もうマジで、あたま、ぐちゃぐちゃでわかんねぇよ……っ」 「ああ。一生オレの腕の中で、その狂った愛を啼き叫びながら生きていくといい」  ディアスはマイトの唇を塞ぎ、深い、魂ごと飲み込むようなキスを交わした。  胸元に埋め込まれたバイタル管理のディスクが、歓喜で爆発しそうに脈打つマイトの心拍を静かに刻み続けていた。

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