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余談 文句
応接室での公開展示という異常な時間を耐え抜き、自室に戻ってから数日後。
ディアスの私室にあるキングサイズのベッドの上で、マイトはだらりと体を投げ出し、ごろごろと気怠げに転がっていた。
動くたびに、全身の急所をつなぐプラチナの鎖が「しゃらん」と軽やかな、しかし冷たい金属音を立てる。その微弱な振動さえも、今のマイトの過敏になりきった神経にとっては強烈な刺激だった。
「なあ……俺の身体、もうすっかりどこを触っても全身性感帯なんだけどさー……」
不満げな文句を垂れながらも、マイトの瞳はトロリと熱を帯び、声音はどこか甘ったるく蕩けている。
自分で身じろぎするたびに自らの重みや鎖が急所を擦り、勝手に身体が熱を持ってしまうのだ。
文句を言いつつもその表情は快楽の余韻に支配されていた。
ベッドの端に腰掛け、そんなマイトの姿を面白そうに見つめていたディアスは、ふっと妖艶な笑みを浮かべる。
「文句を言うわりに、いい音を鳴らしているじゃないか。お前のその身体をそんな風にしたのは誰だったかな?」
ディアスが意地悪くそう言いながら手を伸ばすと、マイトはビクリと身体を跳ねさせつつも、すがるようにその冷たい指先へと身を擦り寄せるのだった。
「まあ、いや、んー、あー。文句じゃねえよ。……いや、文句だわ。もっと俺に構えよ」
マイトはベッドの上でゴロゴロと転がるのをやめると、ふわりと起き上がり、ディアスを見上げてそうぼやいた。その顔には不満を装いながらも、どこか愛おしさを求めるような熱っぽい甘えの色が浮かんでいる。
そう言ってマイトは、ディアスの返事も聞かずにふっと身を乗り出した。
求めているのは激しい快楽の責め苦ではなく、ただ自分の存在を確かめさせるような、そっと唇に触れるだけの優しいキス。
「こういうのが、してえの、俺は……っ」
かすかに掠れた声でそう呟きながら、マイトはディアスの唇に自分のそれを重ね合わせた。
全身を繋ぐプラチナの鎖が「しゃらん」と微かに涼やかな音を立てる。
かつて宇宙を震撼させた海賊の首領が、今はただ一人の主人の前で、愛おしそうに、そして恥ずかしそうに甘いキスをねだる。
ディアスはその予想外の可愛らしい仕草にわずかに目を見張った。
すぐに柔らかく妖艶な笑みを浮かべると、逃がさないようにそっとマイトの背中に腕を回し、その唇を受け入れるのだった。
ディアスはマイトの背中に回した腕に力を込め、その身体を自分の方へと引き寄せた。
ただ触れ合うだけの、浅く優しいキス。
激しい調教や狂気的な快楽の責め苦とは違う、穏やかで体温を感じるだけの触れ合い。
マイトはとろんと目を伏せ、ディアスの胸元に額を預けた。
「……ふっ、可愛いことを言うようになったね、マイト」
ディアスは低く心地よい声を響かせながら、マイトの乱れた髪を優しくすくい上げ、愛おしげに指先で梳いた。
今では自ら進んで主人の愛を求め、こうして甘えてくる。
その変化は、ディアスにとってもこの上なく満たされるものだった。
「文句があるなら、いつでもいくらでも聞いてあげるさ。お前がこうしてオレを求めてくれるならね」
ディアスはそう囁きながら、マイトの耳たぶや頬に優しく口づけを落としていく。
全身を繋ぐプラチナの鎖がシャランと小さく鳴る。
キングサイズのベッドの上、静かな午後の光に包まれながら、二人はお互いの温もりを確かめ合うように、穏やかで満たされた時間をゆっくりと過ごしていくのだった。
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