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余談 ペットについて

静寂に包まれた深い夜が明ける少し前。 血生臭い抗争や組織の世界から完全に切り離されたベッドルームで、二人の間に流れる空気は、狂おしい愛欲の嵐のあとを埋めるように、ひそやかで穏やかな余韻に満ちていた。 ディアスは腕の中にぐったりと凭れかかるマイトの髪をすくいながら、静かに、誰にも打ち明けたことのない昔話を紡ぎ始めるた。 その声音は、いつもの冷酷な支配者のそれではなく、どこか遠くを見つめる少年のように淡かった。 「……昔はな、生き物を飼うのが怖かったんだよ」 マイトは微かにまばたきをし、ディアスの胸元に顔を寄せたまま「ん……?」と声を漏らす。 「力加減を間違えて、な。……愛おしいと思った小動物を、自分のこの手で壊してしまったことがある。ほんの少し強く抱きしめただけで、息絶えてしまった 」 「アンタ、昔からバカ力だったのか」 「それからずっと、何かを愛して、自分の手で触れることが怖くなったんだ。生き物に触れること自体を、ずっと禁じて生きてきた。殺害する以外でね」 淡々と語られる過去の傷。 それはディアスという圧倒的な男が抱える、あまりに不器用で、深い孤独のトラウマだった。 マイトは呆れたような、それでいてどこか切なさを孕んだ苦笑を浮かべる。 力を持て余す化け物と恐れられる男が、そんな繊細な呪いに縛られていたなんて、いかにも彼らしい不器用さだと思った。 「なんだよそれ……。アンタらしくもない、変なところで繊細なんだな」 からかうように呟きながらも、マイトはディアスの胸板にそっと腕を回し、その強張った身体を包み込むようにぎゅっと抱きしめ返した。 「でもさ、安心していいぜ。……俺は、そんな簡単に折れたりしねぇよ」 マイトは顔を少し上げ、ディアスの整った顎先を見上げながら、不敵で、けれどどこまでも優しい笑みを浮かべる。 「まあ。君は強くて死なない。どんなに強く掴んでも壊れないから……だから、愛している」 それはディアスにとって、何十年もの間渇望し続けていた救いであり、あまりにも重すぎる愛の告白だった。 ディアスは息を呑むように瞳を揺らし、愛おしさと狂気が入り混じった複雑な熱を帯びた眼差しでマイトを見据える。 マイトはその不器用な独占欲の重さを丸ごと受け止めるように、再びディアスの胸元にすっぽりと身を預け、その体温を心地よさそうに吸い込んだ。 「そうだな。アンタを置いて死なねえな、俺は」

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