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第18話 甘い朝
昨晩、僕の記憶の最後は、レオンと同じウールケットに包まれていた。
彼の広い肩に頭を預け、心地よい温もりに満たされながら目を閉じたところまでは覚えている。
けれど、翌朝。
太陽が地平線から顔を出し、朝露をオレンジ色に染め始めた頃に目を覚ますと、そこは旅馬車の荷台の中だった。
隣の床にそっと触れてみても、ただひんやりと冷たい。そこにはもう、レオンの愛おしい温もりは残っていなかった。
僕はレオンと一緒にいたいし、レオンだって僕と一緒にいたいと言ってくれた。
僕たちは同じ気持ちのはずなのに、背負っている負担が違いすぎる。いつだって、レオンだけが大きくて重い荷物を一人で抱え込んでいるんだ。
僕は王宮で、山のようなマナーや学問を学んできた。けれど、いざあの狭い鳥籠から追い出され、荒い世間に放り込まれると、何一つできない。
自分が今日どこで寝るのか、そんなことさえレオンに頼り切りだ。
やるせなさに身を焦がしながら、僕はウールケットから這い出し、レオンの姿を探しに馬車の外へ出ようとした。
車外の空気は荷台の中よりも何倍も低いようで、容赦のない冷たい風が吹き抜けていく。ぶるりと、全身が寒さで震えた。
御者台から頭だけを外に覗かせると、すぐ近くに、見慣れた大きな人影が見えた。
「レオン?」
かすれた声で呼びかけると、人影がハッとしたように振り返る。
「悪い、起こしたか?」
両腕にたっぷりと薪の束を抱えたレオンが、大股で近づいてきた。
外気はこんなに冷え込んでいるというのに、レオンは城を出てからいつも着ていた焦げ茶色のウールの上着を脱いでいた。
白い麻布のシャツの袖をたくましく捲り上げ、乗馬用の革ズボンにブーツという軽装だ。
手には今しがた周囲の林で集めてきたのだろう、小枝の束や手頃な太さの薪が握られている。
朝早くから薪を叩き割っていたのか、彼の小麦色の額には薄すらと汗がにじんでいた。
「昨夜の薪が少なくなってきてたから、少し足したんだ。すぐに朝食の用意をするから、荷台の中で待ってろ」
流れるような自然な仕草で、レオンは空いた手で僕の髪を優しく撫で、そのまま額に口付けを落とした。
あまりにも当然の権利のように滑らかな動作だったから、僕の心臓はレオンの行動についていけず、数秒遅れてから胸の奥で爆発するように激しく跳ね上がった。
そんな僕の動揺に気づいているのかいないのか、レオンはくるりと踵を返し、焚き火の跡地へと歩き出そうとする。
「待って、レオン!」
僕は急いで荷台から地面へと飛び降り、無我夢中でレオンの背中を追いかけた。
近づいてよく見ると、彼の短い髪の隙間から覗く耳の後ろが、不自然なほど真っ赤に染まっている。
「レオン、待ってってば!」
彼のシャツの裾をぐいっと引っ張り、強引に体の前に回り込んだ。見上げたレオンは、耳の後ろどころか、端整な顔全体を熟れたリンゴのように真っ赤にさせていた。
「どうしたの? 顔が真っ赤だよ。……もしかして、熱があるんじゃない?」
昔、まだ僕たちが幼かった頃。
一緒にウールケットで眠った時、僕が我が儘にケットを独り占めしてしまったせいで、翌日レオンは酷い風邪を引いてしまった。
もしかしたら、今回も、昨夜の寒さのせいで……。
不安に駆られた僕は、精一杯背伸びをして、レオンの広い額に自分の手を当てた。
掌から伝わってくる皮膚は、やはり驚くほど熱い。
「やっぱり熱があるじゃないか! 急いで荷台に戻って、横にならなきゃ……」
慌てて彼の大きな手を引こうとすると、レオンは僕の手首を優しく掴んで引き留めた。
「これは……熱じゃない……」
言い訳をするレオンの顔が、さらに一段と赤みを増していく。
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