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第46話 出逢い ⑥

 お昼の仕事が終わり、待ちに待った休憩時間。  広場の大きな木の下には、美しい木漏れ日が僕と子供たちを柔らかく照らし出していた。  時折優しく吹き抜ける風が、いたずらっぽく本のページをパサパサとめくっていく。 「次は私の番よ!」 「違うよ、僕だよ!」 「私よ!」  僕が一冊の本を読み終えるたび、毎回のように目の前で繰り広げられる、子供たちによる微笑ましい順番争い。 「確か、次はカノンちゃんの番だったはずだよ」  僕はあらかじめ本を読む順番を書き留めておいた小さな紙を、上着のポケットからそっと取り出した。 「え〜。僕の番、なかなか来ないじゃん」  僕のすぐ隣に座る男の子が、不満そうに小さな唇を尖らせる。 「ほら、見てごらん。確か次は君の番だからね」  手元のメモを見せてあげると、男の子の顔がパッと嬉しそうに綻び、素直にカノンちゃんの隣へと腰掛け直した。 「じゃあ、読むね」  僕が物語の題名を優しく読み上げ、ゆっくりと表紙をめくる。さっきまで不服そうにしていた子供たちが、一瞬にして本の中の世界へと吸い込まれていくのが分かった。  ことのきっかけは、カノンちゃんが僕に本を読んでもらっているというお話を、村のお友達に自慢したことから始まった。  初めは「僕にも読んで」「私にも」と集まってきた子は数人だったけれど、日が経つにつれて徐々に増え、今では村の子供たちが全員集まったのではないかと思うほどの賑やかさだ。  小さな絵本から、少し長めの冒険のお話まで様々。僕自身、たくさんの本に再び出会えることも楽しかったけれど、何より、この村の子供たちが僕のことを必要としてくれていることが、たまらなく嬉しかった。  やがてカノンちゃんの本を読み終え、「おしまい」と静かに本を閉じる。  すると、カノンちゃんの隣に座っていた男の子が、「次は僕の番!」と大急ぎで自分の持ってきた絵本を僕の手に押し付けてきた。 「じゃあ、読むね」  本のタイトルを読み上げると、周りの子供たちから「え〜っ」という一斉不満の声が上がってしまった。 「その本、もう何回も読んでもらったよ。同じ本は嫌だ!」 「うん! もう飽きちゃった。違う本がいい!」 「同じのだったら、次の子に順番を変わってよ!」  次々に厳しい声が突き刺さる。 「でも、この本もとっても面白いお話だよ? もう一回、みんなで見よう?」  僕が優しくなだめてみたけれど、「え〜、やだやだ〜!」と子供たちの不満の合唱は止まらない。 「でも……」  チラリと隣の男の子を見ると、自分の大好きな本を否定されてしまったショックからか、今にも大粒の涙をこぼしそうなほど顔を歪ませている。 (どうしよう……。何か、みんなが納得してくれるいい案はないかな……)  僕が困り果てて、男の子と他の子供たちの顔を交互に見つめてオロオロとしていた、その時だった。 「こらこら、あんまりシリエルを困らせたらダメだぞ」  低い、けれどとても心地のいい声が頭上から降ってきた。  見上げると、木の(つる)で編まれた小さなバスケットを手に持ったレオンが、「お菓子を持ってきたぞ」と、いたずらっぽく微笑みながら近づいてくるところだった。 「ああ、この本か〜。これ、俺も大好きなんだぞ」  レオンは僕の手元から、男の子が持ってきた絵本をひょいと受け取った。 「俺も小さい頃、何回も母さんに読んでもらったんだ。俺も久々に声に出して読んでみたいんだが……みんな、いいかい?」  レオンはそう言いながら、今にも泣きそうだった男の子を大きな腕で軽々と抱き上げると、僕のすぐ隣にどさりと腰を下ろした。

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