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第54話 出逢い 12

 楽しい時間は、過ぎていくのが本当に早い。  さっきまで僕たちの頭の上にあったはずの太陽が、街並みをあたたかなオレンジ色に染め上げながら、ゆっくりと西の空へ沈もうとしていた。 「シリエル、そろそろ帰ろうか」  沈みゆく夕日を見上げながら、レオンが優しく声をかけてくる。 「そうだね……」  本当はもっとレオンと一緒に街を歩いていたいけれど、これ以上遅くなったら、村で待っているヘイワードさんたちが心配してしまうだろう。 「また二人で、買い出しに来ようね」  僕がそう言いながら二人で手を繋ぎ、あるお店の前を通りかかった、その時だった。  大きな打撃音とともに店の木扉が荒々しく跳ね開き、中から一人の男が弾き飛ばされるように路上へと倒れ込んできた。  何かが勢いよく迫ってきたことに驚き、僕が咄嗟に身を引くと、飛び出してきたのは輝くような金髪の若い男性だった。  彼は勢いを殺しきれず、レンガの地面へ激しく尻餅をついてしまう。 「もう一回言ってみろ、あぁ!?」  倒れ込んだ金髪の男性を逃がすまいと、店から巨漢のガラが悪い男がドスの利いた声を張り上げながら飛び出してきた。  男は地面に伏せる男性の上に(また)がり、威圧するように覆いかぶさる。 「だから……他のお客様にも、ご迷惑が……かかっています」  倒された男性の声は消え入りそうなほど小さかったけれど、その言葉にははっきりとした強い意思が込められていた。 「なんだと!? 俺が誰を口説こうと、お前なんかに口出しされる筋合いはねぇんだよ!」  巨漢の男は怒りに顔を歪ませると、男性の胸ぐらを(わし)掴みにし、そのまま殴りかからんばかりに拳を振り上げた。 「やめてください!」  店の中から若い女性が悲鳴を上げ、倒れている男性を庇うように駆け寄ってくる。  騒ぎを聞きつけた通行人たちが、遠巻きに集まり始めていた。 「だったらお前が、おとなしく俺と酒を飲みに来ればいいんだよ!」  巨漢の男は男性の胸ぐらを投げ捨てるように放すと、今度は駆け寄ってきた女性の細い腕を強引に掴み上げた。 「嫌! 放してください!」  女性が恐怖に顔を強ばらせて悲鳴を上げた、次の瞬間だった。  巨漢の男の巨体がふわりと宙を舞い、そのままレンガの地面へと叩きつけられる鈍い肉音が響いた。 「え……?」  あまりの早業に、何が起きたのか分からず呆然とする。  隣にいるはずのレオンへ視線を向けると、彼はすでに男の手首を固く握り締め、男を地面へと組み伏せたあとだった。 「いい加減にしろ」  レオンの低く冷たい声が響く。  叩きつけられた巨漢の男は、自分が何によって倒されたのか理解できていない様子で、地面に横たわったまま目をキョロキョロと泳がせていた。 「いつまでそこで寝ているんだ。邪魔だ」  レオンは氷のように冷ややかな瞳で、地面の男を見下ろした。 「てめぇ……よくもやってくれたな!」  ようやく状況を把握した巨漢の男が、顔を真っ赤にしてレオンへと跳びかかっていく。 「レオン、危ない!」  僕が叫んだのと、レオンが動いたのはほぼ同時だった。

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