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第55話 出逢い 13

 レオンは迫り来る男の腕を瞬時に巻き取ると、鮮やかな身こなしで綺麗な背負い投げを決めた。  ドシン、と激しい衝撃音が響き、男は再び地面へと激しく打ち付けられる。  今度こそ意識を刈り取られたのか、巨漢の男はピクリとも動かなくなった。 「た、大変だ! 大丈夫っすか!?」  取り巻きらしいひょろっとした二人の男が青ざめた顔で駆け寄り、倒れた男の体を必死に揺さぶる。けれど、反応はない。 「お、覚えてやがれ……!」  ひょろっとした男たちは、自分たちよりもはるかに大きい男を懸命に抱え上げると、蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ去っていった。 「シリエル! 怪我はないか!?」  レオンは僕の元へと引き返し、心配そうに頭の先からつま先まで、何度も指先で触れながら確認し始めた。 「僕は大丈夫だよ、レオン」  大丈夫だと声をかけてみたけれど、レオンが自分自身で完全に納得するまで、この入念な点検作業は終わらない。  僕は苦笑しながらレオンの手にかまわれていると、 「あの……」  さっき倒されていた金髪の男性が、ゆっくりと僕たちの方へと歩み寄ってきた。 「先ほどは助けていただき、本当にありがとうございました」  男性が深々と頭を下げると、続いて後ろにいた若い女性も「ありがとうございました」と丁寧にお礼を述べた。 「いえ、そんな……助けたのは僕ではなくて、レオンで……」  思わず僕がそう答えたものの、当のレオンは相変わらず僕の身体検査に夢中で、周りの声が聞こえていない様子だ。 「レオン、レオンってば」  僕がレオンの上着の裾をキュッと引っ張ってみたけれど、彼はまったく気づく素振りをみせない。  これではまるで、せっかくのお礼を無視しているように見えてしまう。 「ごめんなさい、なんだか……彼、レオンは一つのことが気になり始めると、他のことが全く目に入らなくなってしまうみたいで……。決して、皆さんに悪気があるわけではないんです」  レオンが失礼な人だと思われてしまわないか心配になり、僕は慌てて頭を下げた。 「いえいえ、滅相もありません! ご迷惑をおかけしたのはこちらの方ですし、あなたが謝られることではありませんよ」  男性は慌てたように顔の前で両手をパタパタと振ってみせた。  そこで、僕は初めて彼の顔を正面からしっかりと見つめた。  不意に、胸の奥がドクンッと恐ろしいほどの衝撃で跳ね上がった。  一瞬にして息が詰まり、全身の血が逆流するような不思議な感覚。  立ち眩みにも似た激しいめまいが僕を襲う。 (なに……これ……)  今まで一度も味わったことのない、身体の芯から引き絞られるような奇妙な感覚に、僕は言葉を失った。 「よし、シリエルに怪我はないな」  ひとしきり確認を終えたレオンが、ようやく満足そうに僕の顔を見た。 「あ、あのね、レオン。この方たちが、お礼を言ってくれているんだよ」  僕が金髪の男性と女性を紹介すると、レオンは初めて彼らに視線を向けた。

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