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第68話 翌朝 ①
——そして、翌朝。
目を覚ますとレオンの温かい腕の中に包まれていて、それだけでも顔が爆発しそうだったのに、今はリアーナちゃんに付いて宿の仕事を手伝っている。
「シリエルさん、ここはこうやってシーツの端をピンと張るんですよ」
「あ、うん……こうかな?」
教えられた通りにベッドのシーツを手で撫で伸ばした瞬間、手のひらに残るシーツの感触が、一気に昨夜の記憶を呼び覚ましてしまった。
(っ〜〜〜〜〜〜っっっ!?)
頭の中に、昨夜の光景が怒涛の勢いで蘇ってくる。
自分から「いやだ」と我儘を言ってレオンに抱きついたこと。
太ももの間にレオンの硬くて熱い存在を挟み込まれ、何度も擦り合わされたこと。
恥ずかしい声を上げて何度も甘い絶頂を迎えてしまったことや、耳元で囁かれたレオンの熱い愛の言葉……。
(僕……僕、なんて破廉恥なことを……っ!)
身体の奥がキューッと甘く疼き、顔が一気に沸騰したように熱くなる。
シーツを握りしめたまま、僕はその場に固まってしまった。
「シリエルさん? 顔が真っ赤ですよ、どこか体調でも悪いんですか!?」
「ひぇっ!? だ、大丈夫! 全然大丈夫だからっ!!」
心配そうに顔を覗き込んできたリアーナちゃんに慌てて首を横に振り、必死で顔の熱を冷まそうと手で仰ぐ。
レオンと心も身体も通わせ合えた幸福感と、思い出しても直視できないほどの恥ずかしさで、胸の中がぐちゃぐちゃだった。
「ふぅ……。とりあえず、午前中の仕事の半分はこんなところです!」
最後の客室の掃除を終えたリアーナちゃんは、腰に巻いたエプロンから布を取り出すと、ぱっぱっと手を拭った。
「これが午前中の仕事の……半分なの?」
朝一番から教えてもらった仕事の内容がびっしり書かれたメモを、エプロンのポケットから取り出して改めて見返す。
店前の掃き掃除から始まり、酒場の掃除、空いている客室の換気とベッドメイク、部屋や庭に飾る草花の手入れ、そして宿を利用する客の帳簿付け……などなど。
「はい! 朝食を食べ終わったら、後半の続きを教えますね」
リアーナちゃんにニッコリと眩しい笑顔を向けられ、僕は「う、うん……」と引き攣った笑みを返すのが精一杯だった。
(とりあえず……全力で頑張ろう……っ)
メモをぎゅっと握り締め、小さく頷く。
「私にだってできたんです! シリエルさんなら、絶対に大丈夫ですよ!」
僕の不安を察してくれたのか、リアーナちゃんは僕の両手をぎゅっと握ると、元気いっぱいに上下に振ってくれた。
「さぁ、もうすぐお楽しみの朝食の時間です。今日はエリアスさんが朝食当番なんですよ」
「朝食当番?」
「はい。この宿では住み込みの従業員で順番に朝食を作っているんです。エリアスさんはこの街にいる間、ここで働きながら泊まっている方なので、当番のローテーションに入っているんですよ」
(エリアスさん……)
昨日の夕方、初めて出会った時のことを思い出す。
彼に見つめられると、なんだか体の奥がソワソワとして、妙な感じになってしまうのだ。
リアーナちゃんの話し方からして、エリアスさんは良い人だということは分かる。
けれど……どうしても、どこか苦手だと感じてしまう部分があった。
(仲良くしていけるかな)
胸の奥に小さな不安を抱えつつも、僕は「こっちですよ〜」と僕の手を引いて前を走るリアーナちゃんの後ろを、慌てて追いかけていった。
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