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第76話 運命の日 ①

 それからの数日間、僕の身体には少しずつ奇妙な異変が表れ始めていた。  最初は、ただの夏の暑さによる夏バテかと思っていた。  けれど、体にまとわりつくようなだるさは日を追うごとに増し、時折、理由もなく顔がカッと熱くなることが増えていった。 「シリエルさん、お冷や持ってきましたよ。……あれ? 顔、赤いですよ? 熱があるんじゃないですか?」  厨房で手伝いをしていると、リアーナちゃんが心配そうに僕の顔を覗き込んできた。 「大丈夫だよ、リアーナちゃん。少しお日様に当たりすぎちゃったみたいで……」 「ダメですよ、無理しちゃ! 今日もすっごく暑いですから!」  心配してくれるリアーナちゃんに笑いかけてみせるけれど、自分でも身体の奥にくすぶる『熱』の正体が分からず、薄気味悪さを感じていた。  風邪の熱とは違う。  身体の芯からじわじわと甘い熱が滲み出してくるような、吐き気を伴う重苦しい怠さ。  特に、エリアスさんが近くを通ったり、彼の甘い匂いが風に乗って漂ってきたりする度に、その熱はグッと強まり、心臓が脈打つように疼く。 (大丈夫……僕は大丈夫。レオンがそばにいてくれれば、なんだって耐えられる……)  身体の奥で暴れ出そうとしている何かから目を逸らすように、僕は固く拳を握りしめることしかできなかった。

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