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真夜中の弊害 5
「人間が酷く小心者だからだ。
過去や未来といった、“ここにないもの”や
感情や思考や意識といった“目に見えないもの”に恐れを抱き
答えが分かりようのないものに怯えて“今”を疎かにするのは人間だけだ。
呪いだの霊だの運命だのに怯えて、与えられている選択を放棄するのもな」
腕を組んだままローラが答えると、リウムは小さく息を吐き出して俯いた。
「人間が…ありもしないものに怯えているのは分かる気がするよ…
だって分からないことって怖いんだもん…」
リウムの背景は、ただの寮のはずなのに何故か黒い闇のようなものがローラには見えていた。
油断すると意識を引っ張られそうなその闇はあんまり見ない方がいい気がして、ローラは廊下の奥へと目を向ける。
廊下の先は何もいないし、静まり返っている。
「………確かに、お前が“変”なのは分かるさ…
少々人よりも生き辛いだろうってことは察するよ」
「…本当?」
「俺だって見たくて見ているわけじゃない…そもそも見えていたって大概は人間には分かりようもない事だったり
俺にはどうすることもできないようなものばかりだ。
油断すると意識を乗っ取られたりもする。
“見抜き”ってのは人間にとっては不都合の方が多いくらいだ」
「未来が…見えてるんじゃないの?」
「そういう時もあるが、過去も未来も、今も…無限にあるもんだ。
“認識している現実”ってのは一枚の絵みたいなもので、それが連続しているから関連しているように見えるだけで本当は瞬間瞬間が折り重なっているだけだ。
無数にある中の一枚絵が見えたとてどうしようもないだろ?
次の瞬間俺とお前がここで会っていない絵が来ても、全く別の存在になっていても理論上はおかしくないからな」
「うーん…だけど…、見えてしまった事が起こらないわけではないよね…?」
「…人の“意識“ってのはかなりの高次的エネルギーだ。
“俺は俺であり、お前はお前である”という意識が簡単に覆らないおかげでこうして連続して関連しているような絵を見続けていられるわけだな。
次にどの絵が来るかはただの確率だが…確率のパーセンテージを引き上げているのは人間の意識や思考なのかもしれん…」
リウムはまたもや不思議そうな顔をしてローラを見つめている。
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