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殿下のお悩み 1

産まれてからずっと、皇帝家のだだっ広い屋敷で過ごし 大人に囲まれ続けていたエルメーザは ハートン学園で過ごすようになり、同い年くらいの人間達の中で生活をし始め、毎日毎日驚きと戸惑いの連続だった。 いつもエルメーザの周りにいた大人達は、丁寧ながらも一線引いたような場所で機械的に声をかけてきて 余計な会話などは一切してこなかった。 それこそ何かの許可を得る為だったり、すべき事を示すくらいの会話内容で エルメーザはそれに、はいかいいえで答えればいいだけで 実に合理的かつ最短で終わるような事だったのだ。 だからこそエルメーザは、そうじゃない会話をけしかけてくるようなレンシアが煩わしくて実に無駄が多いような気がしていた。 はいかいいえで答えられないような質問をされれば苛立って、要件だけ言えと叱りつける事もあった。 エルメーザはそんな産まれて初めてそれなりに関わった同い年の人間であるレンシアの事を、なんて落ち着きのない人間だと思っていたのだ。 しかし、学園生活をしている上で寧ろレンシアはあり得ないほど落ち着いている方で 実際の同い年くらいの人間はもっと子どものような存在らしいと思い知る。 学園で発生する会話のほとんどが、謎の文言から始まり、ダラダラと続き、どこに着地するかも分からず 寧ろ着地しないまま終わるようなものばかりなのだ。 意味のない言葉で笑い合っていたり、平気で“間違い”を発言し、それを訂正されてもヘラヘラしていたり 更には言葉ですらないような奇声を発しあっていたりするのである。 行動だって意味不明な事ばかりで、複数人でつるんでバカ笑いをしていたり、廊下を走って教師に怒鳴られていたり、妙な悪戯をして怪我をしていたり 時々、年の離れた弟達と変わらないのではないかと思うくらいにはエルメーザには幼稚に見えてしまうくらいだった。 最初はそんな、煩くて落ち着きがないような世界に辟易して苛立っていたエルメーザだったが ある時から急に、人間は所詮こんなものなのだろうな、と悟って諦めてしまい ただの雑音として処理できるようになっていた。 エルメーザは昔から、理解の及ばない事に慣れるまで少々時間を要するものの 慣れてしまえば一切そこには心を動かさずにいられるような仕組みが自分の中に組み上がっていたので 数ヶ月も経てば、平然として自分のペースで学園内を闊歩できるようになっていた。 だけど複数の生徒達と言葉を交わし始めると、 彼らがただ馬鹿騒ぎをしているわけではない事に気付いてしまって 折角、こんなもの、と位置付けて慣れたはずの学園がまた別の感じに見えてきてしまい エルメーザは再び戸惑う事になっていた。

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