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殿下のお悩み 3
13歳の時、初めて会ったレンシアは
どこか緊張した面持ちで、頬を染めながら紫色の瞳を煌めかせてぎこちなく頭を下げた。
「は…初めまして…、ヴァガ・レンシア…です…
お会いできて、えっと…嬉しいです、エルメーザ殿下…」
エルメーザは、なんだその言葉遣いは、と呆れてしまって
ただ無言で頷くことしかできなかった。
綺麗な服にまるで着られているような細い身体が見窄らしく見えたし、この国では珍しい金色の髪もどこか浮ついて見えた。
その取ってつけたような紫の瞳だって、ふざけているのかと言いたくなった。
こんな男と婚姻するのか、と一瞬苛立ったけど、国の取り決めだから仕方ないと自分に言い聞かせたのだった。
それからレンシアは“癒しの魔法”を披露した。
見たこともない美しい、桃色の光がレンシアの周りに溢れ出して空間を包み
部屋の空気がガラッと変わったのを覚えている。
“大天使の力”に、普段は冷たい表情を貼り付けていた大人たちが心地良さそうに目を細めて口元を緩ませていて
生まれた時からピリついた空気しか知らなかったエルメーザには、少し恐ろしくもあった。
蕩けたような表情の大人達が、
妙に甘く暖かいその空気が、
そしてその中心にいるレンシアが。
どこか嬉しそうに微笑み、両手から美しい光を放つレンシアが
当時のエルメーザには、理解できなかった。
魔法を、そんなに腑抜けた顔で、緩んだ空気で使う人間なんて見た事がなかったから。
だけど大人達は一瞬でレンシアの虜になり、興奮したように彼に賞賛の言葉を投げかけていた。
エルメーザには、レンシアが何か恐ろしい化け物のように見えてしまった。
冷たく凍っているような大人達を一瞬で魅了し、懐柔し、それなのにへらへらと笑っている少年が、
未知の生物のように見えたのだ。
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