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殿下のお悩み 4
そしてそんな未知の生物は、やる事なす事全て、エルメーザにとって理解不能だったのだ。
無駄な雑談をけしかけ、無駄に笑顔を取り繕って向けてきて
邪険にしてもめげずに隣を歩こうとし、終いにはこう言った。
「仲良く……できたらと…」
その言葉が、エルメーザには大層気味が悪くて仕方がなかったのだ。
そんなに自分に気に入られたいのか、と怒りにさえ繋がった。
だからエルメーザはレンシアが口を開く度に憤りをぶつけ、やがてレンシアは何も言わなくなったし
あんまり笑わなくもなり、遂には他の大人達と同じように
エルメーザから一線を引き、合理的かつ最短のやり取りしかしなくなっていった。
レンシアは、きっと“普通”だったのだとエルメーザは今更感じ始めていた。
学園にいる他の生徒達は、出会った頃のレンシアのように
無駄な会話を嗜み、仲良くなりたいと距離を詰め、本当にそうやって笑い合ってみたり
時にはくだらない事で口論し、だけど翌日にはケロッとして再び廊下で馬鹿笑いしながら追いかけっこをしているのだ。
そして他の生徒達は、エルメーザを見ては怯え
エルメーザが何か質問をすると困ったような顔をし、何故そんな当たり前のことを聞くんだとでも言うようだった。
みんなの言う“ふつう”が何かわからなかったし、だけどそのふつうを知っていなければ理解できない事が山ほどあって
それは本になんかは記されていないのだ。
だけど、必死に教えようとしてくれるイオン達と関わるうちに
誰とに関わらず孤独に勉学し、大人達に囲まれて無駄を省いた生活をしていた自分の方が化け物だったのではなかろうかとエルメーザは感じてしまっていた。
レンシアはきっと教えようとしてくれていたのかもしれない。
普通とは何か、わかりあうとはどういうことか。
それを跳ね除けたのは自分だった、と。
今のレンシアは、かつての自分のようにエルメーザには見えていた。
だけどレンシアとエルメーザの違いは、エルメーザはただ知らなかっただけで
レンシアはそれを知っているのにそこから遠ざかっている所だ。
普通から逸脱し、わざと人間から離れているような。
エルメーザが怖いと感じたかつてのレンシアは、ただの普通の、善良な人間だっただけだった。
だけど今は、本当の、化け物に……?
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