20 / 42

ルートの裏側 1

外では大雨が降っていて、遠くの方でゴロゴロと雷も鳴っている。 基本的に晴れている事が多いこの地域では珍しい事だった。 エルメーザにとっても雷なんていうのは人生で数回しか経験がない。 分厚い雲に覆われた空の所為か昼間のはずなのに部屋は薄暗くて、ランプが必要だと感じるほどだった。 エルメーザは授業終わりに皇帝家専用のプライベートサロンで軽く自習をするのが日課だったが、 ひゅうひゅうという風の音や時々地響きのように鳴っている雷の音にあまり集中できなくて つい窓に顔を近付けて、風で荒れ狂っている木々を眺めてしまっていた。 「…エルメーザ……」 なんの気配もなかったのに、急に声だけが飛び込んできて エルメーザは内心驚きながらも振り返った。 いつの間にか一人の生徒に侵入されているようだった。 俯きがちに立っている小柄な生徒は、最近編入してきたジョルシヒン・リウムだった。 「リウム、…どうした?」 エルメーザは何故か珍しく俯いたままのリウムに近寄った。 エルメーザはレンシアと同じく孤児院出身の彼が、最初はどうも苦手だったが リウムは何故かエルメーザの心の隙間にするりと侵入してきて、今は文字通りサロンにも侵入されている始末だった。 リウムは見目が愛らしい割に言動はどこか強かで、その割に妙に遜ったり卑屈になったりするような妙な男だった。 狡猾なようで見え透いた嘘をついてみたり、その割にエルメーザ以上に物を知らなくて純朴に感動していたり。 そんな彼の言動に最初は苛立っていたが、出会ったばかりの頃のレンシアもそうだった、と気付くと エルメーザはなんだか罪悪感のようなもので胸がチクチクしてしまうようになっていた。 リウムが楽しそうに笑っていたり、目をキラキラと輝かせて驚いていると、本当はそれを取り上げたり邪魔をしてはいけなかったのだろうと思い知るし 彼が言われのない悪口や暴力に傷付いていると知ると、そこに対してあり得ないほど怒りを覚えたりするのだ。

ともだちにシェアしよう!