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憂い多き理事長 1
ハートン学園は広く、この町の半分以上も学園の敷地となっている。
生徒は勿論、教師や用務員の大半も住み込みだし、なんでも揃っているといえば揃っているから
学園から出なくたって生活には困らない。
魔法使いしかいないこの学園で、気が付けば人生の半分以上も過ごしている事になる。
その理由というのも十家であるハートン家に生まれたというだけのことだ。
例え魔法を授かっていないとしても。
ウィリンスは十家の、よりにもよってハートン家の嫡男として産まれてしまったのにも関わらず
魔法を授からず、非魔法人として存在してしまっていた。
家の立場などさまざまな事を鑑みて、理事長という立場に立たされてはいるが
実際は学園の面倒ごとを押し付けられているような雑用係にすぎない。
しかしウィリンスは甘んじて受け入れる他なかった。
十家でなくとも、貴族の生まれで魔法を持たないのはかなり部が悪いことだ。
“呪い”とも言われるほどに。
そんな縁起の悪い自分が生かされているだけマシなのかも、と思うようにしているウィリンスだった。
だけど、これから死ぬまでそうなのだろうか、とふと恐怖するような瞬間が幾たびもあった。
嫌とか、そんな簡単な言葉では言い表せない複雑な感情だ。
勉学や青春に一生懸命な生徒達は、素直に可愛くて守ってやらねばとも思うし
そんな生徒達をサポートする熱心な教師達にも同じような感情を抱いている。
生涯をこの学園に捧げている教師だって少なくはない。
その崇高な志には頭が上がらない思いだったし、少しでも魔法使い達が快適に安心して魔法と向き合えるような環境を整え続けるのが務めだとも理解している。
だけど、学園を守る為には学園外とのやり取りの方が寧ろ重要で
学園をただの国営機関として政治的に利用しようという魂胆を持っている貴族達や
或いは貴族としての威厳だのなんだので口を出そうとしてくる輩と上手く付き合っていくのは必須科目なのだ。
生徒の保護者達だけでなく、国の重要な存在である魔法使いの生徒達は様々な所から期待をかけられ或いは脅威とも思われているから。
そんな大切な存在を、お前のようなものに預けていていいのか、と。
口に出されないまでもそんな雰囲気を感じ取ってしまうから、長期休み前のパーティはウィリンスにとって一番苦手な行事とも言えるのだ。
だけど年に一度くらいは、あらゆる方面に顔を立てる意味でも生徒達を労う意味でも我慢せねばならない。
ハートン学園の理事長であるウィリンスは、学園にやって来た上位貴族や然るべき機関の重要人物達を朝から晩まで接待し
嫌味や小言を言われても笑顔で受け流すような一日を過ごしていた。
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