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夏休み明け 1
結局あの廊下で何があったのか、気を失う前の出来事がすっぽりと抜け落ちてしまっていて
ローラは自分の記憶がちぐはぐな事に対して少々憤りのようなものを感じていた。
記憶の魔法を授かっていてもいなくても、自分は人よりも記憶力は鮮明な方だと自負していたし
それなのにまるで何も思い出せないという事が薄気味悪いし
という事はつまり“何か”があったという事だし、それは“記憶から消されないといけない何か”だったという事は容易に予想がつくので。
ローラは何度か例の廊下を訪れ、魔法を駆使して何があったかを視ようと試みたり
ウィリンスを問いただして証拠を掴めないかとやってみたが結局は無駄足に終わってしまったのだった。
長期休みを終え学園は再開し、学園を離れていた生徒達が戻ってきて
あんなに静かだった学園内があちらもこちらも賑やかさで溢れかえっていた。
ローラのルームメイト達もその筆頭で、
廊下でぶっ倒れて吐き散らかしたんだがストレスと寝不足が原因かもしれんぞ、と自分の体調不良を振り翳してみても
気を付けるね、と頬を赤らめて謝られたきり一向に良くはならず
自分が死んでも盛るのをやめないのではないかと恐ろしくなったりするローラであった。
そんな賑やかさの陰で、レンシアやリウム達に対しての対応は様々だった。
相変わらずレンシアは遠巻きにされており、彼が現れると誰しも口を閉じるが
いなくなると口々に悪態をつき始める始末だった。
まだこの学園に居座っているのか、とか
捕まってしまえば良かったのに、とか
恥知らず、とか。
生徒達はとにかく聞いていて不快になるような言葉ばかりをひそひそと話していたりする。
国を揺るがす事態と言っても過言ではなかったのかもしれないが、本人に直接言った日には返り討ちに合うからそうしているのだろうかとローラには思えてならなかった。
一方で実際の“大天使の生まれ変わり”だと思われているリウムは絶賛されているのかというとそうでもなく、
次期皇帝を正式に寝取っただとか、庶民の出ばかりが“大天使の生まれ変わり”だと言われる事に対しての不満だとか
彼の後継人であるジョルシヒン伯爵の政治的癒着なども噂される始末だった。
リウムは長期休みの間、エルメーザと共に皇帝家の屋敷に行っていたようだったが
戻ってきた彼は疲労がその表情から見て取れるくらいには憔悴していた。
以前の彼は元気に忙しそうに走り回っていたから、その対比で余計に不健全に見えてしまうのだった。
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