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1章(7)
「ノア」
「ふ、あ…っ?」
唇が一度離れる。
それを名残惜しそうに、瞳をとろりと蕩かせたまま見つめていると、腰に響く色っぽい声で名前を呼ばれ、前髪を撫で上げられた。その次に頰を撫でられ、優しい手つきにうっとりとして無意識に大人の手に擦り寄る。
「ん、んぅっ、──!」
再び唇が触れ合ったかと思えば、いつの間にかうっすらと開いていた隙間を通ってアルフの舌が口内に侵入を果たしていた。唾液に塗れてぬる、とした感触のそれに驚いたノアがアルフの硬い胸を両手で力一杯に押し返そうとするがびくともしない。
「ぅ、んんッ、…ん…!」
歯列の裏をなぞり、上顎を舐められる。
生まれて初めての感覚にぞくぞくと肌が粟立ち、閉じた瞼に力が入るせいでノアの睫毛はふるふると小刻みに震えていた。
「ん、ふ……ぁ、ん…」
アルフの舌に捕まり、自分の舌が甘噛みされる。舌を吸われて、くちゅくちゅと唾液に濡れた音がいやらしく響いた。
舌同士が絡まり合うと、なんとも言えない疼きが下腹部から湧き上がってきてノアの頭をぼんやりと痺れさせていく。互いの唾液が混ざり合い、飲み込みきれなかったものが口の端から溢れて顎まで伝い落ちては水の線を結んだ。
息継ぎの仕方が分からなくて、とろとろとした快感と苦しさに口内がヒクンと震える。
「んあ…は、はぁ…っ、ふ…」
蹂躙されるのに抗うこともできないままでいたせいか、唇が離れ解放されてすぐにノアは酸素を求めて荒い呼吸を繰り返した。
キスする角度を変える時にしか息ができなくて、苦しくてたまらなかったはずなのに、アルフの唇に覆われて舌に触れ、唾液が交わると気持ちが良くて堪らなかった。
苦しいのに気持ち良くて、もう自分をコントロールするのは不可能なところにまで来ている。
「ちゃんとしたキスの仕方を教えてやれば良かったか?」
「ふ、ぁ………は…ン…」
教えてもらったところで、きっと自分は上手にできない。
性愛に関する知識も技術も一つとしてない。アルフに奪われるような濃密なキスをされて、底抜けに気持ち良かった自分と比べるとアルフは息も乱していなかった。
「鼻で息をすればいい」
「そん、な…簡単に、できな……」
「簡単だ。俺が言った通りにすればいいだけのことだろう?」
「ぁっ、ま、また、キス…っ?ん、ぅ……っ」
角度を変えて啄ばまれ、すぐに口付けを深くされる。閉じていた唇を開けと舌で催促をされて、ノアは抵抗することなく侵入を許してしまった。ぬるぬるとした熱い舌が自分のものに触れては絡んでくるほどに気持ちが良くなっていく。意識が白ばむほど交わりを濃厚なものにされると、最初はその身体を押し返そうとしていたはずのノアは、半ば無意識にアルフに縋り付いていた。両手で彼の胸元あたりの衣を弱々しく握る。
「ん、あ……っん、ん…」
縋り付かれてもアルフはそれを振り解かず、煩わしそうにすることもなく、むしろ快く受け入れるかのように背中を抱いては口付けを深めてくる。
───キスは、とても気持ち良い……。
もっとと欲しがるように、甘えるように、ノアは最初に言われた通り瞳を閉じてアルフにその身を委ねていた。
「は、ぁ……ン、」
ちゅ…、と音を立てながら唇が離れる。
アルフによってもたらされる快感にすっかり虜にされつつあることを自覚しないまま、ノアは熱に浮かされた瞳で男を見上げた。
先ほどまで自分が貪っていた唇をアルフは指の腹でなぞり、その指の体温にノアはふるりと全身を震わせる。
「……あっ…」
「これだけで震えて…お前は可愛いな」
嫌だと抵抗していた自分が嘘のように感じるほど、アルフがくれる熱に浸っていたことに気がついて、ノアはまたしても羞恥心に襲われる。
「あ、やっ…!なに……っ?」
一度は引き剥がされていた服はノアが動いていたせいで乱れ、肌を少しだけ隠していた。
しかし、アルフはそれを首の方へとたくし上げ大きな手を平らな胸へと這わせる。驚いたノアが声をあげるものの、彼は意に介さず無言のままそこへ顔を寄せた。
得物を扱うにはあまりにも美しく長い指が、見た目を裏切らない繊細なタッチで胸に這わされると共に、ぬるっとした感触を感じて思わずそこを注視する。
「ひ…っ、ぁ…」
キスをしていた時とは全く違う感触の舌が敏感な所を這っているのをまじまじと見てしまい、ノアは赤面した。赤い舌が蠢き、綺麗な形をした唇で胸の突起を覆われて臍下がうずうずとする。
「あっ!やぁ…っ、あ、ぁ…ッ」
乳首を口に含まれ、小さな突起の形に沿うように舌で吸い上げられる。片方の胸の飾りは先端を指先でくりくりと弄られて、甘い衝撃が突き上がってくるのに合わせて声を漏らした。こんな風に声をあげるなんて恥ずかしくて、駄目だと思うのに甘やかな声を出すのを自分では止められそうになかった。
「ふ…、あ…あ、あぁ…っ!」
艶っぽい吐息を吐き出し、喉を晒すように下顎が上向く。誰にもされたことのないことをアルフにされて、ノアは理解できない感覚に溺れていきそうだった。
一度アルフの唇が離れて、剥き出しになった乳首が外気に晒される。唾液で濡れそぼって淫猥に雫を垂らすそれを自覚しないまま、冷んやりとした空気を感じて震わせた。生温かい舌に包まれ弄られていたせいで、過ぎ行く空気が余計に冷たく感じる。
「あっ、ふあ……っ、」
突起を舐めしゃぶる唇の角度が変わって、ノアの息はどんどん上がっていった。
絶妙な力加減の舌で扱かれて、もう片方は指で摘まれては弾かれて身体中が熱くなっていく。
だめだった。もう、声が止められない。
ノアは、手の甲で自分の口元を隠すように覆った。
「声を抑えるな」
「やだ、はずか、しい……」
「誰も聞いていない」
「アルフ、が、」
「俺は構わない」
手を掴まれて外される。大した力はなかったのに、ノアはされるがままだった。
こんな、気持ち良くなったらきっとだめなのに。本当は、やめてと言って抵抗しなければいけないなずなのに。
そう思ってはいるはずなのに、自分の唇の間から溢れては音になって出てくる声は止まらない。アルフの耳にも届いているのは間違いなくて、恥ずかしいと思うのに快感を得ていることを隠す手段はひとつもなかった。
「はあ…っ、ぁ、舐め、ちゃ…っ」
性的な刺激を初めて受けて、ツン、と上向いて尖りを見せる乳首が摘まれ、根元を指先で扱かれる。その間にも、もう片方を舌で吸われて口内で転がされては、抑えきれない悦楽に溢れた声が引っきりなしに漏れていく。
アルフに与えられる刺激全てが気持ち良い。自分で触ったことも、ましてや他人にこんな風に触られた経験もなかったものの、触られて舐められるところ全部気持ち良かった。
「驚くほど、俺の手で気持ち良さそうにする」
「やっ、ちがぁ…っ」
「違うと言えるのか?俺が触る度に身体を跳ねさせて…」
「あっ、あ…、や、」
いやらしいことをして、自分がそれで悦んでいるのだと指摘されて、余計に身体が敏感になっていく。下腹部の奥に灯されていた快感の火はどんどん大きくなっていて、アルフが触れてくる度に臍下の疼きも増していった。
「は、はあ……っん」
「こんなに尖らせている」
「あっ!や…っ、あぁっ、ン」
勃たせられて、小さいながらに主張してみせる乳首に舌が絡みついてきて悲鳴混じりの甘い声をあげる。口内に含まれ、ぬろぬろと蠢く舌が更に尖らせてきて、堪らない快感にノアは細い腰をくねらせた。
「ふあ、ぁ、ん…っ、」
「ノア。気持ち良いか」
「や、やあ…っ、ん、ぁ……」
アルフのその声で、耳元で囁かれると、身体から力が抜けていってしまうほどぞくぞくっ、と何かが這い上がってくる。官能的に響く声に、自分の中の何かが刺激されて、何もかも奪われてしまう。
「…い、やらし……声…出さな、で…」
「俺は何も変えていない、地声だ」
「ぁ、ん……!」
「お前が…俺を意識しているだけだ」
そんなの、当たり前のことだった。
こんな風に触られて、アルフを意識しない方がおかしい。熱い指と舌に翻弄されて、熱情的に囁かれて、もう頭の中はアルフでいっぱいで、他のことも考えなければならないはずなのに何も考えられなかった。
未知の快感が恐ろしくて、ノアは不安げに瞳を揺らしながらアルフを見上げる。その瞳が、困惑だけでなく、期待と情欲をも含んでいることに気付いたのはアルフだけだった。
「ア、ルフ……」
「そう怯えるな。初めてだからな…身体が知らないものは、痛みになる。ゆっくりやる」
服を捲り上げることをせずに、アルフはその手を小振りなノアの尻に這わせた。突然のことに驚いたノアが身を跳ねさせ、短い悲鳴をあげる。小さいながらも柔らかな弾力を返す双丘を揉みしだかれながら、首筋に唇を寄せられて思わずぎゅ、と瞳を閉じた。
「ぃ、あ…っ、そんな、とこ…っ!」
「ここは初めて触られるな」
「や、やだ、や…!」
この身体にとって重要な、秘めたる部分はもっと奥にあるのだ、そのことさえも知らなかったのだから、性に疎いのは当然と言えた。
アルフがそんなことを考えているとは知らず、ノアは再び近づいた気配に身を硬くさせる。
「あっ、あ、そこ……、め…っ」
「触って欲しそうだな」
「や、ちがっ、んあ…ッ、ぁ!」
恥ずかしくて強張る身体を解していくように、アルフが慣れ始めた胸への愛撫を再開した。じんわりとした快感に惑わされている間にも、後孔にアルフの片手が添わされて、指でその入り口を弄られる。新たな刺激に驚き怯えながらも、上と下両方から与えられる感覚にノアの身体は恐怖とは異なる意味で震えていた。硬く閉ざされていたはずのそこはしっとりと濡れていて、アルフの指がなぞるように動く。
「んっ、あ、ぁ……や…なん、で…」
身体の奥から、とろりと何かが溢れてくるのを感じて、訳が分からず困惑する。
しかし、アルフはそれを不思議がることもなく、小さな胸の突起を舌で舐め、長い指を控えめな性器へと絡めた。
「はあっ、あっ、や…いや、いや…っ」
「ノア」
「あっ、あぁ、ぅ…っ、いじ、ったら…あっ!」
優しい力で擦られて、ノアは身悶えた。
どっちの刺激に意識を向ければ良いのか分からなくて、それなのに不意打ち的に強い快感を与えられるから甘ったるい声ばかりが出てきてしまう。
混乱して泣きそうになっているノアを宥めるようにアルフはその額にキスを落として、頭を撫でてやった。
「あ…っ、ふ…ぁ…や、へん……変に、な…へん、に、なっちゃ…だめ、ぼく、」
「逃げるんじゃない。優しくしてやるから、ちゃんと足を開いておけ」
力の入らない足はアルフの手で容易に左右に開かれる。慰めるような声とキスをしてくれている割に、アルフは覆いかぶさったまま体重をかけてきて、ノアが万が一にでも逃げることができないようにしっかりと押さえ込んできた。
あの人数の野盗を相手にした男だ、体格の差があって、成熟したその身体から逃れようともがいてみても叶うはずなく小さく喘ぐ。
「ぃ、やあ…っ、あっ、あ」
下衣の中まで指が侵入してきて、誰にも触られたことのない秘部をなぞられる。とろりと甘い蜜のような体液が滴り足の付け根まで濡らしていく。アルフに触られた後孔からじわりと甘い痺れが広がってきて、ノアは全身を震わせ耐えようとするものの、経験も何もかも上回るアルフに対抗できるはずもなく、気持ちのいい誘惑に浸った。
「は、はあ…っ、あ、ん……っ、や、だめ、いや…っ」
片方の指先で初々しい後孔を押し広げられる。
溢れる蜜を掬い取ったアルフの指が小さな入り口に塗りつけられるのを感じて、ノアがびくりと内腿を引き攣らせた。
「慣れてしまえば怖くない」
「う、うそっ、…そんな、あ、やだ、うそ…ひあっ、ん!」
先端を弄られながら後孔をぬるっ、とした指で往復されて、途端に広がっていく甘い波紋にノアは唇を震わせた。指で撫でられた入り口を意識してしまうせいか、動かされる度に中の奥の方が疼いて仕方なくて、じんじんと下腹部が痺れてくる。
「んっ、ん…っ、ふあ…っあ、あ、ぁん…」
とぷとぷと、先端から透明な体液が溢れる。
やんわりと扱かれながら、ぐ、と力が入った指を感じて期待に後孔がきゅんと竦んだ。そのことには気付かずに、ノアは今にも入ってきそうな指に怯えて思わず膝を擦り合わせ足を閉じようと足掻く。しかし、自らの足の間を割って入るアルフの身体に邪魔をされて、かえって甘えるようにその腰に擦り寄る形になってしまい赤面した。
「ちゃんと息を吐いておけ」
「あっ、ぃ……っ、や、だめ、…は、入っちゃ、ぅ…はい、る…や、あっ、だめ…あっ!」
誰にも暴かれたことのない秘部を撫でていた指に力が入り、そのままくぷ、と音を立てながら熱く溶けきった体内に侵入してくる。
「あっ、やだ、やだぁ、…ンっ、抜いて、」
「これは入れない。指だ」
「指、でも、嫌、ぁ……っ」
あの、綺麗な指が信じられないところに入ってきているのだと考えて、生々しい感覚に慄く。後孔が指の形に広げられ、自分の身体の中に侵入してくる少しの圧迫感と痛みに小さく悲鳴を漏らして瞼を力一杯に閉じた。
「ひ……っあ、い……ぃ、た…」
初めて自分の中に押し入れられるのに引き攣れた声が出てしまう。耐えきれないほどではないが痛くて、どうすればいいのか分からなくて震えた。
「あ、あぅ…、い、た…いた、ぃ……っ」
「大丈夫だ、ちゃんと入っている」
「は、はあ……っ、ん…」
異物の感覚に、ノアの身体は強張った。強張った身体を、アルフは慌てずにゆっくりと解した。指がどう動いているのか、ノアには見えなかったが、動くたびに身体の奥に違う種類の熱が灯っていくのが分かった。
痛みではなかった。でも、痛みではないものを感じる方が、痛みよりずっと怖かった。
「は、ぁっ、あ、ぅ……ん、んん、っ」
知らない場所で、知らない感覚が広がっていった。
身体の奥にあった、自分でも触れたことのない場所が誰かによって初めて触れられている事実が、頭ではなく身体に刻まれていく。
刻まれていく感覚に、ノアは耐えようとしていた。
「アル、フ……っ、アル、フ……」
「ここにいる」
ノアの呼びかけは、意味のある問いではなかった。
ただ名前を呼んでいた。呼べる名前が、この場にはひとつしかなかったのだ。
「はあっ、あ…っ、ん、ん……」
自分を捕らえて、絶対に離してくれない男の下で腰を捩らせてじんじんと響いては広がっていく甘い波紋に困惑した。触ったことも触られたこともない、見られたことすらないであろう後孔に異物が入ってきて痛いのに、内側の壁にぴったりと密着しながら侵入されると、感じるのは苦痛だけではなかった。
「痛いだけじゃなさそうだな?」
「あっ、あぁ……っ、わか…な、ぃ…あっ!」
じんわりと、徐々に浸透していく甘さに惑乱の色をその瞳に映す。
「んっ、はあっ、あっ、ふ……」
性感帯のひとつだと教え込まれたばかりの後孔を指で出し入れされて、腰が重くなる感覚に包まれる。
唇への深いキスや、太腿などへの愛撫よりもずっとずっと直接的で快感が深くなり、僅かにでもアルフの指が動かされるだけで意識が支配されていった。
「ああっ…ぁ、ぁ……ん…っ」
少しでも羞恥から逃れたくて開かされた足を閉じようと力を入れるものの、アルフの手で簡単に陥落させられていく。自分の身体のはずなのに、自分よりもアルフに従順になり所有を明け渡しているようだ。
長い中指が熱いぬかるみの中を遠慮なく進んでは引いて、弱い粘膜の壁を擦り上げる。
「あっ、ん!っあ……?」
怪我をしていない方の足が人の体温に触れる。膝裏を掴まれて、何を言われることもないままに足を大きく開かされた。
ノアの身体は柔軟で、アルフの力に抗うことなく容易に言うことを聞いてしまう。加えて、アルフの手で腰を浮かせられて不安定になっていた。
腰が少しだけ持ち上げられ、その角度にノアの身体は無防備に晒された。蜜を垂らし始めたそこを眺められていて、羞恥が襲ってくる。
「あぁ、ぃ、やだ、見ない、で……」
「俺以外、誰も見ていない」
「アルフが、見て、る……っ」
「ああ。俺だけが、見ている」
それは慰めの言葉ではなかった。
慰めではないのに、ノアの胸の中の何かが、その言葉に静かに撫でられた。
アルフだけが見ている。自分のことを、こんなにも近くで見ている人間は、生まれて初めてだった。母も父もセシルも、こんな見方では自分を見たことがなかった。
アルフの視線から逃げようとして、掴まれていない足に力が入った。
「ゃ、いたっ…あ、い…」
「動かすなと言っただろう…?こっちの足は大人しくしていろ」
「ぃあ…!あ、あ、ふぁ…っ」
中に入ったままのアルフの中指がゆっくりと動き始めた。指を出し入れされると、苦痛よりも艶かしい気持ち良さが上回ってきているように思えて、きゅ、と眉根を寄せながら深い吐息を零してしまう。
「あぁ、あっ…は、ぁ…ん、あっ、も……っ」
変化していくそんな様子を間近で見ていたアルフは、自らの指を更に奥へと咥えこませていった。濡れた粘膜の壁は未だ狭いが、硬く閉ざされた未通のそれではなく、快感をもたらす指を欲しがり甘えているものだ。
「お前の中は、随分と気に入ったようだ。俺の指を締め付けて離さない」
指摘されると、どうしたことか中に入ったものを意識してしまい、奥の方まで濡れた粘膜の壁がひたひたと吸い付くように締め付けてしまう。
熱に覆われた思考でもそんな自分の身体を自覚して、恥ずかしくなる。その羞恥心がまた意識を昂らせた。
「ひあっ、あっ、ち、ちが…うぅ、んあ……ッ、ぼく、ちがう、…のに…っ」
「すっかり興奮している」
「ふ、あっ、あ!はあ、あ…ぁ、んっ」
アルフの言葉通りになってしまったかのように、弄られた後孔がヒクッ、ヒクッと震える。抽送を繰り返されると共に粘ついた愛液が溢れ出て、自らの太腿とアルフの指を濡らしていた。そのことには気付かず、滴る体液が更に指をスムーズに動かさせている自覚もないまま、ノアはアルフが触りやすいように足を開いていた。それも、無意識の行動だった。
「ん、ん…っ、むず、む…する…ふあ、ぁ…っ」
臍下の奥底から沸き起こってくる熱にもどかしさも感じる。焦れったいような、何かひとつ足りないような不思議な気持ち良さをもたらす快感の火が広がるのを感じながら、手のひらを下腹部に添わせた。細い、未熟な指先が無意識に臍下を撫でる。
アルフはその手をすくい上げ、人差し指に口付け、そのまま軽く歯を立てた。
「ひん……っ。 や、噛ん、じゃ…だめ、あっ、あっ!」
たった少しのはずの、指先への刺激だった。人差し指にほんの僅かに歯を立てられただけなのに、それだけでノアは背を反らした。
指を飲み込まされた中から淫らな体液が更に溢れてきてしまい、気持ちの良い感覚に小さな唇を震わせた。
「吸った、らぁ…っ、あっ、ぁふ…ん、あ…っ、も、やあ…っ」
気づけば、首筋や鎖骨を音を立てながら吸われて、もうめちゃくちゃだった。
どこから甘い波が押し寄せてきているのかも判断できなくて、恐ろしかった。恐ろしい波はどんどん大きくなってきているようで、全身の力はすっかり抜けている。良いようにされるのが怖くて嫌だったはずなのに、アルフに従順になってしまった全身は脱力していた。
「お、おなか…じわっ、て…して…ひあっ、あっ!」
「そんな可愛い感想を言われると、もっとしてやりたくなるな」
「あっ、あう、ぅ…っ、ん、あ、そんな…だめ、なのに…んっ!」
「お前の好きな場所は覚えておく。だから、何も考えず喘いでいろ」
言われなくても、もうアルフと…アルフがくれる気持ちの良い感覚に満たされることしか頭になかった。
自分が何を言っているのか分からなくなるほどの強い刺激を与える愛撫に、下肢が痙攣する。怪我を負った足は痛いはずなのに、それが気にならなくなるほど熱に満たされて爪先まで張り詰めた。
「は、はあ……っ、ぁ、…ッ」
呼吸はどんどん小刻みなものになり、小さな肩を大きく上下させなければ息を吸うのも難しくなってきた。
執拗な愛撫に蕩けさせられた身体は拓ききり、後孔は好んでアルフの指を迎え入れているようだった。入口から潤みが零れては男を喜ばせる。
「や、なん、か…あっ、も…いやあ…っ、お腹、熱…やだ、あっ!」
さっきから、下腹部の、ずっと奥が疼いて仕方がない。
自分では手の届かない、熱く熟れきった奥がかっ、となっていてどうしようもできなかった。
「も…っ、せつ、なぁ……っん…」
「ん…?」
「な、中……っ?あっ、あっ、も、やあ…っ、おなか、中…切な、て…」
どこからその感覚が沸き起こっているのかすら分からなくて、ノアは今にも泣きそうな目で視線を彷徨わせた。
濡れた瞳は助けを求めている。
その間にも、アルフの指は奥まで入ってきては抜けていくのを繰り返していた。天井の壁を擦られると特にじん、と痺れて意味を持たない声が勝手に出てくる。
「からだ、おく…っ、へんに、なる…なんか、くる…きちゃ、ぅ…!」
「ああ、──変じゃない、大丈夫だ。そのまま気持ち良くなるのを教えてやる」
「い…あ……っ!」
自分が分からなくなるような感覚が強くなって恐ろしい。
経験したことのない、未知の感覚に支配されて呑まれてしまうのが怖くて、ノアは拙い言葉で嫌がり訴えた。ぐずるノアをあやすように、アルフが震える小さな手を握ってやれば、浅い吐息が漏れ出る音が聞こえる。
そんな自覚をしないまま増やされた指で奥まで入れられる。
強くも、激しくもない動きだった。ただ、的確に、そこに触れてきた。
濡れた内壁を指腹でなぞるように、吸い付く粘膜にぴたりと当てながら動かした。瞬間にノアの全身は大きく跳ね、ピン、と張り詰めた。背中が大きく仰け反る。
「あっ、ぁ…ん、ああっ──……!」
強い感覚が迸る瞬間に身構える暇も、惑う隙もなかった。頭の中が真っ白に塗り潰されて、自分が呼吸をしているのかすら分からなくなるほどの鋭い終わりに、ノアの瞳に溜まっていた涙が音もなく溢れ出ていった。
生まれて初めての感覚に思考が吹き飛んでいく。
頭がくらくらとする。息が苦しい。気持ち良すぎて、知らない感覚が恐ろしかった。
うっすらと開きっぱなしになった唇の間から唾液が伝い落ちる。顎を濡らし、雫となって下に敷いた外套を色濃くした。
「は、はあ…っ、ぁ……あ、…あ…」
「達ったな。こんなに…背中まで震わせて…」
「あ、ぁ……は…あ……?」
張り詰めた全身から力が抜けていく。
くたりと弛緩した身体に自分で力を入れることはできなくて、唯一自由にコントロールできる瞳をアルフへと向けた。
涙で濡れた瞳は表面がつやつやと煌めいていて、目前の男の姿だけを映す。
「本当に…美しい瞳だ」
アルフの手のひらが赤く上気する頰に添えられ、優しく撫でる。
防御の術ひとつ持たない、油断しきって剥き出しになってしまった心では、アルフの言葉が真っ直ぐに降りかかった。嘘だなんて疑う余裕もないほどに、その声が蕩けているように甘くて優しくて、目の前の男を見つめることしかできない。アルフの声と言葉に陶酔する。
「ん、んんぅ……ッ、ふ、あ…、あっ、も…」
未だ小さく震えて、ビクビクと不規則な収縮を繰り返す内壁を二本の指で擦り上げられる。身体が、まるで全ての感覚の中で快感だけを拾うようになってしまったかのように、敏感に指の感触を感じ取り朦朧としていた意識が研ぎ澄まされた。
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