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1章(8)

「はぁ、ふ……あつ、ぃ…」 中途半端に脱がされ捲り上げられた服が絡まって、体液で汚れては濡れて肌に纏わりついていた。 「邪魔なものは全部剥いでしまいたいが…そうしたら、お前はまた泣いてしまうだろう?」 「ん、あ──っ?」 「このまま続けようか」 「ぁ…っ、まだ……?」 「まだ終わりじゃない。意識を手放すなよ」 優しい声で宥められ、頰に触れるだけのキスをされる。それだけでうっとりと表情を蕩けさせていると、指を更に増やされて痛みが走った。 「ん、んあ…っ、痛…ぅんっ」 「きついが…入らないほどじゃないな」 「や、やぁ、う……いたい、」 ノアの小さな悲鳴を気に留めることはせずに、アルフは自らの腰に巻かれたベルトを片手で器用に外し膝を着いた。体内から濡れた指をゆっくりと抜いていき、ノアの両足を掴んで太腿の裏側を自らの足の上へと乗せる。 「ぁ……っ?」 「ここで逃がすものか」 「な、に……?」 頭が働いていなかったせいと…アルフにされるがままになっているのを甘受していたせいで、反応が遅れた。今まで自分を散々乱しているだけで、情熱に突き動かされて行為に没頭していないのだとばかり思っていて、想像していなかった欲望の大きさを目の当たりにしてノアは怯んだ。 「や、…む、り…やだ、だめ…そんな、入らな……っ」 「怖がるな。お前は、俺を受け入れるようにできている」 「あっ、だめ、…め……!」 逃れようともがくノアだったが、大した力が入るはずもなかった。いとも簡単に身体を抑え付けられ、とろりとした体液に塗れた小さな後孔に硬く張った勃起が押し付けられる。 「ぁ、い、いや、いやぁ……っ」 「目を逸らすな、ノア」 自らのそこは拒絶をしない。 男の手で散々蕩かされて、雄の欲の硬さを感じて小さいながらに口を開いていた。 「お前は、これから俺のものになる」 ノアはアルフの目を見てしまった。 もう、動けなかった。 「ぁ、っ……」 「分かるな?」 「わ、から、なっ……」 「分からないままでいい。お前の身体が、覚える」 身体とは裏腹にノアの心は恐怖に屈していて、喉が引き攣れまともな声を出せず掠れたものが漏れ出る。 「ひ……ッ」 ぐ、と濡れた後孔を押し入ってきた先端に、痛みを感じるよりも先に心からの悲鳴を上げた。 「ぁ、い、やあぁ……っ!」 「──っ。この、馬鹿が…っ」 暴れるな、と鋭い声が聞こえると同時に、アルフの身体を押し返そうと突っ張っていた腕を、上から強く地面に押さえつけられた。 経験したことのない痛みに襲われる。 身体が引き裂かれるような鋭い痛みに耐えきれず、防衛本能のように涙が次々に溢れ出てきていた。 太い先端が無理矢理に押し入って、中を圧迫していくのを感じる。強引に犯された後孔がアルフのものの形に広げられていた。恐怖と緊張に狭まっていた蜜路が男の欲で勝手に拓かれていく。 「あ、ぁ、あ……い、……いた、痛ぁ…っ、ふ、う……や、やだ、ぁ…っ、いや…!」 「…お前はもっと、痛いだろうな…っ」 「やあ、う…っ、ある、ふ…アルフ……っ」 呆気なく花を散らされた。 アルフが初めて表情を歪め、苦しそうに息を吐き出すのを見ていたが、それに何かを感じる余裕はノアにはなかった。無理矢理に犯したアルフ以上に、犯されたノアの方が苦痛は何倍も上回っている。どのくらいまで入っているのかは分からないが、それでも苦しくて痛くてたまらなかった。 「あっ、ぃ、いやっ、あぁあっ」 腰を揺すられて、アルフの性器が更に深く入ってくる。それだけで苦痛が走り、ノアの目尻から一雫が零れ落ちた。痛みを感じて思わず瞼を強く閉じて、逃れられるはずのない現実から逃避しようとする。指や唇であんなにも丁寧に愛撫され、初めてでも気持ちが良かったと思っていたのに、苦しくて、深くまで嵌り込もうとする勃起を恐れた。 挿入によってみちみちと限界にまで広げられた後孔からは血の混ざった愛液が溢れていく。唇や指先、力の入った瞼まで震わせながら、自らを犯す男の服をくしゃりと必死に握っていた。 「ノア、目を閉じるな」 「い、っ…や、めて……ぁ、は…っ、痛い…」 「まだ怖いんだろう?俺は、怖い時に目を閉じるなと言ったはずだ」 「あ、ぁ……ふ…」 アルフの指が目元の雫を拭った。そのままこめかみのあたりにキスを落とし、頰を撫で上げる。それだけで、自分の全てを持っていかれそうな結合の苦痛は終わらないが、気持ちはだいぶ和らいだ。きつく閉ざしていた瞼をゆっくりと持ち上げて、涙の滲む二つの瞳で自らを犯す男を見上げる。 「流石に、きついな…。全部は入りそうにない、か」 「や、やあ、ら…いやあ…ッ」 それでもなお、アルフは腰を揺さぶることはやめず、打ち付けてくる。全く容赦してくれない男をやめさせたくても、ノアにはその手段がなかった。 アルフが怖い。 怖くて、痛くて、苦しくて、熱くて、どうにもできない。繋がったところから生まれ出た熱に呑み込まれそうなほど熱くて、呼吸さえもまともにできないほどだ。 「やだ、あ…っ、いた、いたぁ、い…っ、ふ、う…っ、いやあ…ッ」 「大人しくしていれば、気持ちよくしてやれる」 「ぬ、ぬい、て…ぇ、ぃた……い、抜いて…っ」 ぬちゅぬちゅと音を立てながら穿たれ、細い腰を抱きかかえられる。がっちりと捕まえられた交接部が熱くて苦しい。力づくで組み伏せられて、猛々しいものを銜え込まされてノアの喉は悲鳴をあげすぎてひくひくと震えていた。 初めて感じる肉棒は大きくて太くて、あまりにも熱い。柔らかな中の壁に男の形を教え込むように生々しい抽送を繰り返されて、ノアは掠れ始めた声ばかりをあげた。 「やあ…っ、アルフ、や…っ、も、出して…出て、ってぇ…」 「分かっているから…」 「ん、ん……!うご、たら…っ、嫌あっ」 「お前にできるはずがないんだ、俺が動かないと終わらない」 男を知ることのなかった身体は無理矢理に拓かれ、馴染むことのない欲望の大きさに追い詰められていく。 アルフの服を掴むノアの手は力が入り過ぎて真っ白になっていた。そんな様子を感じ取っていたアルフは腰を打ち付けることはやめず、深い息を吐き出してからノアの前髪を撫で上げて言う。 「ノア…力を抜け。ちゃんと息をして、身体から力を抜けば少しは楽になる」 「ふ、あ……っ、は…はぁ…っ」 「俺の言うことを…聞けるだろう?」 必死に何度も頷く。それ以外に、今のノアにできることなど一つもなかった。 逞しい雄で内壁を強かに打ち付けられ、竦みあがる身体を抱き締められる。互いの体液が混ざり合い、結合部からはぬぷぬぷと淫猥な音が立ち上っていく。 懸命な姿を見せるノアの瞳はぼんやりとしているが、目の前でアルフが柔らかく笑んだのは分かった。綺麗な微笑に、ノアの胸はじんじんと痺れたように熱くなる。抱きしめられると、アルフの良い香りに包まれ体温に満たされ…少しだけ、全身から力が抜けた。 「ああ……。良い子だ」 「ん…っ!」 それが嬉しくて、ノアは何も考えずにアルフの求めに応じた。唇を寄せられて、そのままキスをする。促されるよりも前に、自ら素直に舌を差し出してアルフのものに絡め取られていくのを許していた。 息が上がって苦しくて熱くて辛くもあったが、唇を触れ合わせて粘膜を舐められ、舌を淫らに絡め合うと気持ちが良くて止められない。 「は、はふ……っ、ん、ぁ……ん」 律動を繰り返されているせいで口付けている間も振動を感じる。 角度を変えるために唇が離れる度に、それがもどかしくてノアは必死にアルフの熱を求めた。 服を掴むノアの手を無理矢理に引き剥がし、その両腕をアルフは自らの首へと回させる。すると、ノアは必死になってしがみついて、口付けを深めようと腕に力を入れていた。 「ん、ん、ん…っ、は…ッ、ぅ」 水音を響かせながら互いの唇を奪い合う。 頭が沸騰しそうなほど熱くて、アルフとの口付けで交わし合う吐息も熱く湿っていておかしくなりそうだった。 「ぁ…っ」 唇が離れ、キスの終わりを知ったノアが泣きそうに顔を歪める。 「いいよ」 そんなノアの小さな後頭部を片手で支えて、再びアルフが顔を寄せればとろんと瞳を蕩けさせた。ノアの方から甘えるように顎を上向けて口付けを強請ってくる。 キスは大変気に入ったようだった。 ノアの身体から一気に余計な力が抜けて少しずつ抽送が楽になっていくのを感じたアルフが、深いところまでそれを埋めた。 「んあっ、あっ……ふ、ぅん、ん…っ」 最初よりもずっと奥深いところまで嵌まり込んでいるものの、苦痛は和らいでいた。それどころか、アルフの手が胸の突起へと伸ばされた瞬間に、じわっとした快感が這い上がってきて悲鳴ばかりだったノアの声に甘さが混ざり始める。 「さ…さき、ぽ……っ」 「ん。気持ち良いな……?」 「ぅん……っ、ふあ、あっ…」 大きくて太い性器で蹂躙されている中とは違って、控えめに、それでいてしっかりと主張を示す小さな胸の突起を指で弾かれて甘い声が上がる。 苦痛が伴う後孔とは違い、乳首を弄られて沸き起こるのは優しい快感だけだった。いやらしくしこり勃った乳首を舌で絡め取られて、それがあまりにも気持ち良くてとろっと愛液が溢れ出す。そんな淫らな反応をしているとは知らず、ノアは埋め尽くされた劣情の大きさに深い吐息を漏らした。 「も、いっぱ…ぃ……や、中、アルフの、いっぱいで、ひあッ、あっ!」 「…良いな。お前の、中は…俺を十分に満たせる」 乳首を指先で根元からきゅ、と摘まれて勃たせられ、捏ねられると性器を銜え込んだ下の口がすくむ。押し潰されるとじんじんとした痺れたような甘い快感がじわっと広がってきて、ノアは艶を含んだ吐息と声を唇の間から零した。 「ここで気持ち良くなったのは、ちゃんと覚えているな…」 「ん、んあっ、は…あっ、ぁ、そこ…っ」 「ああ…こっちも触ってやった方が良いか?」 「あっ、あうぅ、ん…っ、あッ」 懸命にアルフの首にしがみついていると、アルフにしっかりと身体を抱かれて、あんなにも恥ずかしかったはずの密着さえ心地良く感じていた。 幼い性器も手のひらで揉まれて擦りあげられ、後孔を出し入れされて奥深くまで突かれるのが気持ち良いことなのだと錯覚しそうになる。 「は、あ…あ、あっ……ぁ、ア、フ…」 どうにか熱に侵された声で名前を呼んで、アルフの身体に必死になって縋り付く。 ぬぷ、と淫らがましい音を立てながら亀頭が見えそうになるほど陰茎を引き抜かれたかと思えば、またすぐに深いところまでと入ってきて、つられるように声をあげた。 我が物顔で中を満たす肉棒はどんどん硬く張っているようで、本当に自分の中がアルフのものの形に馴染んでしまいそうだった。体液でグチョグチョになった後孔は滑りもよくなっていて、何度も何度も出し入れされる。浅いところを突いて、腹側の壁を亀頭で擦られたかと思えば、深いところまで埋められる。そうやって腰を揺すられ続けて、ノアは意識の糸が焼き切れてしまいそうだった。 「あっ、ん!ぁ、あ…っ?」 太い、エラの張った雁首の部分で深突きされてノアは背中を仰け反らせた。言葉で言い表すことが難しい強い感覚が這い上がってきて、艶めいた声で喘ぐ。 意識していないのに、何も考えていなかったはずなのに、自分の中を満たすパンパンに膨らんだ肉棒を内壁で締め付けてしまい、戸惑った。 「や…っ、はあっ、ン、あぁっ!」 「ノア……」 「あ、あっ、な、なに…?あっ、やあっ!」 アルフの腰遣いが更にいやらしいものになる。深くまで銜え込ませようとするかのように、巧みに腰を遣われて、動き変化していた。 自分の名前を低く囁いた声に吐息が混ざっていて、その声を聞くだけで背中がぞくぞくと震える。自分を襲った感覚が分からなくて、怖くてアルフを見上げれば、目が合った男は艶やかな表情で自分を見つめていた。 「はっ、ん…!あっ、ひあ…っ、ぁ、ん」 下半身がどろどろに溶けてなくなってしまうような、揺さぶられるほどに強くなっていく感覚に震えていると、後孔から愛液が垂れ落ちた。結合部を濡らし、より卑猥な粘着音を響かせる。 「あ、あ、また…っ、また、へんっ、も…!」 「変じゃない。お前の身体が、応じている」 「あっ、ふう、あ、あぁ…ッ!」 苦痛に喘いでいた声とは明らかに違う、発したことのない甘えるような嬌声に、ノアは混乱して緩慢にかぶりを振った。 こんなの、違う、違うのに。 強く律動を繰り返されて、後孔はすっかり淫猥に綻んでいた。 そんな自分が恥ずかしいのに、自らを抱く男はノアの乱れる姿を褒めるように頭を撫でながら甘い毒を孕んだ言葉を紡ぐ。 「そうだ、そうして声をあげて…名前を呼んでくれないか」 「いや、ん…っ、なんで…きもち、ぃあっ、あっ!」 「ノア」 名前を呼んだら、もうだめだと思った。 きっと、言われた通りに名前を呼んだら、もうアルフに囚われて逃げられなくなってしまうと、なんの根拠もなしに確信していた。自分の名前を呼ばれて、もう胸の中が苦しくなるほど熱情でいっぱいにされてしまうのに、アルフの名前を口にしたらきっと、この快感も真実になってしまう。 痛いのも苦しいのも嫌なはずなのに、苦痛の方が勝っていた最初の方が心は楽だった。快楽の方が上回り始めていて、心が苦しい。苦しいのに、アルフに触られると柔らかく解けていってしまうのが怖かった。 「やあ、はあぁっ、ふ、あっ、嫌ぁ……!」 組み敷かれて、抱かれるのは怖かった。 本当に愛情を抱いてもらえているのか未だ定かじゃないというのに、力で全く勝てない大人の男に覆い被さられて怯えていたはずなのに、どうして。どうして、アルフに抱きついてその先を欲する気持ちが湧いてきてしまっているのか、自分の気持ちなのに理解できなくて涙がほろほろと静かに溢れ出てくる。 「泣くな」 「あっ、あぁあっ、ひ、あッ!」 「お前は無理矢理に抱かれているんじゃない、気持ち良くなって当然だ」 「ひうっ、あっ、あっ、ン…!」 愛している、と言われた声が脳内に響いて心が縛り付けられる。ノアが恐れている理由をアルフには見透かされていた。 運命だと言われた。 ノアは、自分でもそうだと思っていた。自分は、この人を知っている。まるで魂ごと寄り添っているかのように。この人のことを知っていた。離れ難い存在なのだと、とっくに理解していた。 どんなにか細いものでもいい、自分と目の前の男の小指を繋ぐ糸が存在してくれているのなら。繋ぐものがあるのなら、儚いものでも何でも良かった。 「あっ、ぁン…っ、ふ、おな、か…中、また…っ、じん、じん…する…っ」 「ああ…、…っ、かわいいな」 「ふ、ふあっ、は……っん、んあっ、も…!」 まるで、ノアの心とは違い、快感の先を知っているかのように身体は悦んで男を貪っていた。心はまだゆらゆらと彷徨っているのに。身体に追いつくことができなくて、苦しい。苦しいのに、アルフが情熱的に抱きしめてくるから余計に苦しくなると思ったら幸福感に満たされて目頭が熱くなってしまう。自分が自分でなくなってしまう、アルフに全て奪われてしまう、怖い感覚なはずなのに、奪われるのを望んでいるかのように歓喜に震える。 「はあぁっ、ん、あ…っ、…め、……っ?」 「ん、」 「あっ、ああッ、…っうん、めい…?」 「ああ……」 運命だよ、と返される。 その言葉に胸を打たれる。熱いものがせり上がってきて、胸の内をいっぱいにしていく。涙が溢れる前に全身が揺さぶられたせいで、涙の花は散っていった。 「あっ、は……、あぁあっ!」 強く腰を穿たれて、衝撃で小さな顎がかくんと上向いて白い喉が剥き出しになった。たっぷりと滴る愛液で濡れた内壁が、男の先端から根元までねっとりと吸い付いていく。溢れ出てくる淫らな交接音と、自分の声と、打ち付けられる肌の音。そこにアルフの吐息が混ざって、堪らない快感に包まれる。 「ん、んぁ…っ、ぅ、ん、ふ……っ」 気づいたら、いつの間にかキスをしていた。 アルフの首に回し、必死にしがみついた腕に力を入れて自分を陵辱する男を引き寄せ、貪るように口付けを交わす。キスするだけで赤面していた初々しさは、今はもうその姿を潜めていた。 キスをして、舌を絡められた瞬間に下から勢いよく雄が突き上げてきて、ノアは全身を痙攣させる。体内に埋まったままの男根を絞り上げながら、音にならない嬌声をあげた。 「は……ッ、ぁ、あぁあ──……っ!」 アルフの唇が離れた瞬間に、悦楽に満ちた自分の声が意識せず溢れた。 一気に昇りつめた絶頂に、唾液に塗れた薄い唇を震わせ、細い睫毛を瞬かせる。小刻みに痙攣を繰り返す全身はままならず、男を食い締める内壁は淫らな収縮をしていた。 肩を大きく上下させて息を吸う。突然訪れた絶頂はあまりにも激しくて深くて…自分が丸ごと呑み込まれてしまいそうだった。 「あ──っ、はぁ、はあ…ッ、ぁ、は……っ」 昇りつめた後は堕ちていく感覚に、必死になって目の前の男の背中に縋り付く。 直前まで深いキスをしていたせいもあり、足りない酸素を吸おうと苦しい呼吸をなんとか繰り返した。 男にもたらされた快感があまりにも深くて、気持ちの良いもので、絶頂感の余韻に浸りながらノアは全身を震わせる。ヒク、ヒクッと断続的に痙攣する内壁は自分を未だ犯している雄に淫らにも絡みついた。 その締め付けにアルフが息を詰め、眉根を寄せる。それには気づかないまま、ノアは懸命にアルフに抱きついていた。 「ついさっきまで…何も知らなかったくせに、…堪らないな」 「あっ、ああ……っ、おっ、き……!や、まだ…っ」 「俺は一度も達っていないからな」 「は、はあ…ッ、ぁ、あん…!」 気持ち良い……気持ち、良い。 身体の、お腹の奥が、疼くように熱を求めている。何も分からないのに、臍下の奥の方はまだ何かを求めて熱く滾っていた。自分ではどうしようもできない、理解の範疇を超えた貪欲に求める衝動に、経験の浅いノアは抗えなかった。 密着したまま腰を揺すられて、頭がくらくらとするほどの快感に襲われる。目眩がして、目の前がぐちゃぐちゃに乱れていくようだ。 「ひっ、やあッ、あっ!」 「っ、逃げるな……。ちゃんと脚を広げろ」 苦悶を伴う愉悦の波に襲われて、ノアは表情をきつくさせながら反射的に足を閉じようとしてしまう。それをアルフは力ずくで制する。 深い絶頂感から抜けきれない狭路は、しかし奥深くまで綻んでいた。今まで以上に深いところまで押し入ろうと腰を進めてくるアルフの律動に鋭い悲鳴をあげて、背中に爪を立てる。まさか、さっきは全部入っていなかったのか、とノアは恐ろしさに全身を震わせた。肌の色がうっすらと変化し、指の跡が残ってしまいそうなほど強く腰を掴まれて、思うままに引き寄せられる。 「慣れれば、奥を突かれる方が怖いくらいに良くなる」 銜え込むことのできなかった、根元近くの部分まで小さな体内に収めさせようとしているのがノアにも分かるほど、強引な動きだった。自らの欲望を呑み込ませて、発露させようとしている。腰の動きは乱暴というよりも、深かった。揺さぶられるノアも苦しかった。誰にも拓かれたことのない所まで、アルフが陵辱しようと押し入ってくる。苦しくて痛いのに、やっぱり気持ち良い波がじわっと広がっていくようで、ノアは悲鳴の中に甘さを含ませていた。 「今は、まだ気持ち良いところだけにしてやる」 「ひう、あっ、や…こ、わ……ぃ……っ」 「怖くない」 怖い、怖い。自分も、誰も知らない、暴かれたことのない奥の方までアルフに支配されてしまう。痛いくらいに強く穿たれては、喪失感を感じてしまうほどまでずるうっと抜けていく。大きくて太いもので蹂躙されるように中を掻き回されて、激しい荒波に攫われてしまうようだった。閉じることのできない唇の端から唾液が溢れて、細い顎を濡らす。激しいそれの繰り返しかと思えば、自分を覆う男の影が大きくなって、アルフが半身を傾けたのが分かった。 「ノア……キスを」 「ぅ、ふあ……っ?」 「キスがしたい。もう…やり方は覚えただろう?」 「ん、く、うぅ、ん、ん……ッ」 頷くよりも先に唇を奪われて、気持ち良いだけの繋がりに酔いしれる。 ぴったりと唇が合わさって、まるで古くからの恋人とキスをしているかのような錯覚に陥る。そんなはずはないのに、絶頂に達して興奮しきった身体では自分に都合の良いことしか考えられなかった。 「あっ、ぁあ…ッ!」 交わりが解け、ノアの嬌声が鮮明になる。 時間をかけて到達した部分を、亀頭の部分でノックされて訳が分からない恐怖と感覚に全身を震わせた。 「や、あ…ッ、こわ、い…っ、こわれ、ちゃ……!」 「壊さない」 「あっ、ぁん…っ、はあっ、あっ、あっ」 ちゅぷちゅぷと音が響き、奥まったところの入り口を硬く勃起した先端で強かに押しつぶされる。奥深くまで入ったと思った亀頭が、そこから更にずん、と押し入ってきて全身が揺さぶられると同時に抗えない快感に襲われてどうしようもできなかった。 自分の中が、アルフのものを欲しがって貪欲に包み込んでいるのがよく分かる。 更に覆い被さられて、本当にこのままアルフと自分の身体の境界がなくなったしまいそうだった。 「っ、は……。末恐ろしいな?初めてだというのに…ここを突かれて、痛くないのか」 達した粘膜の壁が、濡れた音を立てながらアルフの雄にしゃぶりつく。亀頭の段差がある括れた部分にまで絡みついて、奥へ奥へと誘っていた。いやらしい締め付けにアルフが息を詰まらせたことにも気付かないまま、ただノアは子宮に響く衝撃に唇を戦慄かせている。 「もう、終わらせてやる」 「ふあっ…ぁ、あん…ッ」 時間にしたら、もしかしたら短かったかもしれないが、ノアにとっては今までで一番長い時間だった。 やっと、終わる───。 安堵の溜息を吐く体力すらも残っていなかったが、これが終わればきっと解放されるのだと思って肩から力を抜いた。アルフと濡れた欲望で繋がった場所は、もう何度も奥まで犯されてびりびりとした痺れが生まれ始めている。 「中に出すぞ。全部、…ここで飲み込め」 「ひ、あ……っ?」 強い快感が響いて頭がぼんやりとしていたせいで、何を言われているのか分からなかった。アルフの、綺麗な形の唇が残酷な言葉を紡いでいるだなんて思いもせず、ノアは惚けた瞳で真正面の男を見返す。 「分からないか?」 「あ、あぁ……っ、ん」 念を押すように尋ねられて、ノアは自らの脳内でアルフの言葉を反覆させた。 出す…、中に、何を……? 言葉を言ってから、アルフの手が自分の真っ平らな下腹部を撫でてきたのが分かって、ノアの顔は一気に青褪めた。 ───どうすれば妊娠するかくらい、知っている。 アルフの言葉が真実なら、自分にその可能性があるのだということも理解できた。 今までなら怯えることもしなかっただろうが、今は違う。言葉の意味を理解した途端に大きな恐怖が押し寄せてきて、ノアは瞳を大きくさせた。 「や…っ、ま、って……待って…!」 「待たない」 自分がオメガという種の人間であることを今日初めて知ったばかりだ。妊娠する身体であるという自覚なんてなかった。 だって、今日、ついさっき知ったのに。オメガであるというのなら、これからどうしていくのが良策なのか、両親や幼馴染みと相談もしなければならないのに。 「い、いやっ、だめ…!」 こんな…こんなことを、望んだわけではない。 一目見た瞬間から心惹かれていたことは確かで、故郷を離れて一緒にどこか遠くまで行ってしまっても良いと思うほどその存在に惹きつけられた。 けれど、こんな……惹かれた相手だとしても、行為だけでなく、そんな。 ───そんなことをされたら、一生を決めることになる。 今この場で、自分の一生を決めないといけない。自分のことをよく理解できていないのに、そのままこの人に一生を縛られてしまう。 「だ、めぇ…っ、に、んし…したら、」 「安心しろ、浅く出してやる」 それに、とアルフが言葉を続ける。 「その様子だと、発情期(ヒート)だって来ていないだろう?孕む可能性は今はない」 「や、う…っ、…うそ……?」 「本気なら…どうする?」 「いや…っ、わか、ん…な……っ」 「それでいい」 アルフがノアの頰を撫でる。優しい手つきは、本当に恋人のようだった。恐ろしいことをしようとしているのに、その体温だけはあまりにも優しくて温かくて、ノアの心は惑わされた。 アルフの目的が分からない。何を求めて自分にこんなことをしているのか、理解できない。理解できないことは恐ろしい。アルフが怖くてたまらない。でも、怖いだけでは決してなかった。その事実が、怖かった。 「お前は、知らないままでいい」 アルフに腰を抱え直される。 そのまま奥まで進められて、乾ききった喉が痛むのも気に留めずノアは叫んだ。首を横に振って、アルフの身体をどうにか離したくて両手で押し返そうと力を入れながら拒絶の言葉だけをひたすらに並べる。 「や、やだ、やだ、やめ、て……怖いっ、やめて、こわい……!」 泣きながら懇願する。 アルフの身体はびくともしなかった。それどころか、ノアの華奢な身体を無理矢理に自分の中へと閉じ込めようとするかのように、小さな身体は強く抱き込まれた。 「あっ、…アル、フ……!」 「っ、く……ッ」 耳元で低く呻く声が聞こえるとほぼ同時に、自分の中を犯す性器の根元が淫らに脈打つのを感じた。びく、びくっ、と震えた後すぐに熱い飛沫が粘膜の壁に叩きつけられる。 あんなにも名前を呼ぶのを恐れていたのに、躊躇することなくその名前を呼んでいた。 その声が、愛おしい男を呼ぶような、切なさを含んだものである自覚はしていなかった。……いつの間にか、拒絶していたはずのノアの両手は、抱きしめるように逞しい男の背中へと移動していた。 「あ、あっ──……!」 どろっ、と流し込まれた白濁が熱くて、下腹部の奥が焼けそうなほどだった。それなのに、ずっと渇望していたような、焦がれる疼きを潤していくような感覚が生まれ始めて、ノアは困惑して瞳いっぱいに涙を溜める。 「んっ!…ふあ…っ?ぁ、ん……っ」 「…、どうだ…?初めて…ここに出される感覚は」 臍下を熱い手のひらで撫でられ、少しだけ圧される。その下で男の欲を全て呑み込んでいるのだと教え込まれているようで、ノアは息を乱した。生々しい飛沫の感覚に、体内がこの男に全て塗りつぶされていくようだった。 (入っ、て……びくって、して、あるふの、出て……っ) 吐き出されたばかりの熱い精液が、自分の中にじんわりと染み込んでいくのを感じて勝手に涙が溢れ出てくる。泣いても泣いても時間は戻らず、アルフも表情を変えなければ腰を引いてくれることもない。さっきまで未通だった体内に、男の欲望が吐き出されている間ずっと、ノアはぐちゃぐちゃに入り乱れた感情と思考に追い詰められ、熱い涙を流し吐息を吐き出し続けていた。 「はあっ、ぁ、あ………」 ぬぷ、と音を響かせてアルフが僅かに性器を引き抜く。その動きにすら敏感な粘膜は快感を受け取って、ノアが艶めいた声をあげる。 狭まる濡れた粘膜の壁に包まれた彼のものが、今もなおビクビクと脈動を繰り返していた。 「な、中ぁ…っ、…ドクドク、して…ひあっ、ぁッ」 精液を吐き出しながらもゆっくりと淫らに腰を前後されて、ノアは震えながらアルフの腰に手を添えて制止しようとする。 「や、やあ…ッ! うごかな、で……っ」 「……自覚がなかったとはいえ…俺を拒むとは」 しかし、アルフは聞いてくれない。ノアには理解しきれない言葉を呟いては、熱のある瞳で見下ろしてくる。 見つめるだけでなく、未だ弱々しくも抵抗を見せようとするノアの小さな手を握り、包み込んできてしまう。その温度にどこか安堵してうっとりと蕩けてしまいそうになる自分をどうにか叱咤して、ノアはかぶりを振った。拒絶したがっているはずのノアのその手は、本人の意思とは無関係に大人の手を握り返していた。しっかりと繋がれた手が二人の交わりを深めていく。 「あ、あぁ…っ、ん…いや、や…ッ」 「は……ッ。いい、の間違いだろう?」 「あ、はぁ…っ、……っ、ん……あ、熱いの…出て…る…っ」 まだ続く征服に、ノアは熱い息を吐き出して耐えようとする。そんな健気な努力を裏切って、精で満たされた臍下から甘美な波紋が全身に広がってきて、抗えないノアの身体はビクンと何度か波打つように大きく跳ねた。 「あっ、ぁああ……っ、…ん…!」 嫌だ、こんなの、こんなの、おかしい。おかしいのに、嫌なのに、自分の身体の中が男の精で満たされたのを悦んでいるかのように昇りつめていく。 自分の身体が信じられなかった。 何度も味わされた、自分を翻弄する感覚に襲われて、ノアの瞳にはまた新しい涙の山がこんもりと出来上がる。 「──っ、はあっ、あ、……ッ、あ……」 力なんて残っていないのに、落とされた深みがあまりにも強すぎて、ノアは背中を仰け反らせていた。 息を止めてしまった頂きからどうにか逃れようと、必死に呼吸を繰り返す。 「ひ、あ…っ、…はあ、ぁ、ん……っ」 自分を陵辱して淫らな行為に耽っていた、未だ覆い被さる男は、そんな痴態を見て冷艶と微笑んだ。欲望を全て出し切って、美しい指先をノアの下腹部に這わせてくる。 「っ、…中にかけられて…達ったのか」 「あっ、ひう、ぅ……」 「出されてよがるとは…いやらしい身体だ」 頭がぼんやりとして、何も考えられない。 ただ、目の前の男に全て奪われた悲しみと…歓喜が、あるだけで、自分が何を言うべきで何を聞くべきなのか、まともに考えることができなかった。 本当なら罵ってもいいはずなのに。身体が押さえつけられているからその頰を引っ叩くことは到底できないが、手を上げて怒り散らすことをしても許されるはずなのに、ノアは何一つできなかった。 それどころか、自分が幸福と充足に満たされていくのを自覚し始めて全身が震えるようだった。この男に抱かれている今この瞬間こそが全てだった。 「初めてだというのに…よくできた」 「あ、あぁっん……っ」 アルフの手が、ノアの汗ばんだ前髪を後ろへと優しく払った。 払う指の動きが、ひとつだけ長かった。 意味は、ノアには分からなかった。理解できないままに、ノアはその指の動きを身体で受け取っていた。 「自分の中が、俺が出したものを吸い上げているのが分かるだろう?」 「ふ、う…ぅ……?」 言葉が理解できなくて…アルフもまた、理解させようと言っているのではないことが何となく分かって、ノアは惑う瞳を揺らした。 「ん、んあ…っ、は……あ…ッ」 ぬぷん、と淫らな粘ついた音を立てながら自分の中を埋めつくしていた熱の塊が引き抜かれる。その刺激に、絶頂の余韻を引いたような声をあげて、脚の間を伝う体液を感じていた。何も知らなかったはずの、無垢な身体から欲に塗れどろっとした精液が溢れてくるのを見て、アルフは吐息を漏らす。 自分を征服した男を見上げ、ノアはその張本人に助けを求めるように掠れた声で名前を呼んだ。 「は……あ、アル、フ……」 「───逃がさない」 確かな声に、肌がぞくぞくと粟立つ。 地面に敷かれた外套と背中の間にアルフの手が差し入れられて、そのまま身体を抱き起こされる。力が全く入らない身体は、もう自分の言うことは聞かずアルフにされるがままだった。 「誰にも邪魔はさせない。これで……ノア、お前は俺のものだ」 捕まえられた腕の中で、その身に全てを委ねる。 (アルフ、の……?) どういう意味なのか分からない。考えようと思考を働かせる力も残っていない。 自分と比べると、ほんの僅かにしか肌蹴ていないアルフの熱い胸に頬を寄せる。 すぐそばで、独語のような静けさを持ちながらも、まるで宣言するかのように囁かれた言葉を聞き入れて、ノアの意識は糸が切れたかのようにぷっつりと途絶えてしまった。

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