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スランプ05

 生地を購入してきてからドレスを作り始めた。まずはパターンを起こす。気に入った生地に巡りあえるかわからなかったので、まだパターンは起こしていなかった。パターンを起こしたあとは、少しずつ作っていく。裏地はアイボリーのサテン。これはAomi屋さんではなく、他の店で買ったものだ。癖のない色は裏地にぴったりだ。そしてまずは上半身から作っていく。トルソーの胴に白いサテンを巻く。そしてコサージュがどれくらい生地を使うのかわからないので、とりあえず一個作ってみる。ピンクのサテンで作るのだけど、それだけだと寂しいと思った。なにか差し色が欲しい。としたら、葉の部分でグリーンだろうか。葉の部分でどれだけ生地が必要かをはかるために裏地に使ったアイボリーの端切れで葉を作ってみる。思ったよりもグリーンも使いそうだ。ピンクのサテン地も予想よりも使いそうだし、このコサージュに使うサテンもAomi屋さんにお願いしよう。グリーンと言っても濃淡色々あるから、これに関しては後日また見に行こうと思った。何しろ上半身だけでなく、スカートの後ろのレースの縫い目にもあしらっていく。これが3段。そうするとなるとほんとにかなりの量が必要になる。  コサージュで使う場所がはっきりしたところで肩の部分にレースを縫い付けていく。そして袖にレース生地をつけたところで、どう考えてもレース生地が足りないことに気がついた。レース生地はスカートの後ろ4段の白の生地につけていく。その中でも1段目はスカートの前にも回すし、他の段も生地の端にもつけていくのでかなりの量が必要そうだ。でも、その前に袖に使うレース生地とスカート部に使うレース生地は違う方がいいと今になって思う。買ってきたレースは袖に使うのが良さそうだ。だけどスカートのフリル部に使うレースはもう少し幅があってアンティークな雰囲気のあるものがいい。これはまたあの店主に探して貰う必要がある。グリーンのサテン。幅広のレース。ああ、あとはファスナーを買ってなかった。  ドレスを作り始めて必要となるものがわかることもある。今回はそれがグリーンだ。近いうちにまた行ってみよう。グリーンのサテンは濃淡があるにしても難しい色合いが欲しいわけではないから、きっと店内にあるだろう。そんなことを考えながら、黙々と作り続ける。  ふと集中力が途切れ、コーヒーを飲みたくなった。以前なら近くのカフェに飲みに行っていた。僕が失恋した湊斗くんのお店だ。湊斗くんの淹れるコーヒーは美味しいし、お店も落ち着いた雰囲気で好きだった。なぜ過去形で言ったかといえば、失恋して、どういう顔をして行ったらいいのかわからないから、その後行っていないのだ。なんでもない顔をして行けばいいのかもしれないけれど、今はまだそんな顔をすることができない。どうしようか。インスタントで済ませるか……。今、ここにあるコーヒーはインスタントしかない。自分で美味しく淹れることなんてできないし、昼間は大体湊斗くんのところに行っていたからコーヒーを淹れるものなんて揃える必要はなかった。でも、こうやってコーヒーを飲みたくなったときに困る。湊斗くんのお店以外で美味しいコーヒーを飲めるところと言えば、湊斗くんが修行したというカフェ・サンクだ。ほんとに美味しいコーヒーを飲めるけれど、湊斗くんと一緒に行ったお店だし、マスターの正門さんは僕と湊斗くんが行ったことは覚えているだろう。そう思うと行くことができない。仕方がない。チェーンのカフェに行くか。そう思って財布とスマホを持ってアトリエを出る。湊斗くんのことを思い出しても大丈夫になったら、真っ先に湊斗くんのお店へ行こう。それまではチェーン店で我慢だ。いや、アトリエにコーヒーメーカーを置けばいいのかもしれない。とりあえずは目先の1杯だ。  カフェに着き、スマホを見ると青海さんからメッセージが入っていた。 『生地はどうでしたか? イメージにあったでしょうか? もし作ってみてイメージと違った場合には、またお探ししますのでお声かけください』  グリーンのサテンと幅の広いレース。これを買いにいくことをメッセージしておこう。 『グリーンのサテンともう少し幅の広いレースが欲しいので、また近日中にうかがいます』  そうメッセージを送るとすぐに返事が返ってきた。暇なのだろうか。まぁ生地の問屋だから、そんなに忙しいこともないか。 『グリーンは様々な濃淡のものを取り揃えております。レースもあるといいのですが、こちらでも探しておきます』  探しておいてくれるのはありがたい。しかし若いけれどしっかりしている。これなら先代も安心して任せていられるだろう。と、人の良さそうな顔をした先代の顔に、跡継ぎとなった若い彼の顔が重なった。  

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