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ドレス04
メッセージを貰った翌日、僕はAomi屋さんを訪れた。ドレスを作り始めてからAomi屋さんには結構足を運んでいる。ピンクのサテンはAomi屋さんでお願いしているし、まだ決まらないレースもある。そして寂しいと思った胸元。とりあえず今までに出来ているドレスの原型の写真とデッサン画を持っていくことにする。写真やイラストで見ると僕が言葉で説明するよりはわかりやすいと思うから。それにしても淳さんは若いけれど、すごいな。先代も話すと数日で探してきてくれたけれど、淳さんも変わらない。求められるものを揃えるのはなにを求められているか正確に把握することと、どこになにが仕入れられるか、それも把握できていないと無理だ。先代っだって何年もやってそこまでできるようになったんだろう。なのに淳さんは若いのにそれができている。僕が行かない間に先代から色々教わったのかもしれない。いや、でも言葉で教えて貰ってわかるものではない。だから単純にすごいんだなと思う。そんな淳さんが新たに仕入れたっていうんだから、前回とは違うところで仕入れたんだろう。それがすごいと思った。
「こんにちは」
お店に入って声をかけると店の奥から淳さんが出てくる。
「あ、吉澤さん。レース、持ってきますね」
そう言ってレジ近くの棚からボードのようなものを取り出す。そこにレースを貼ってあるんだろう。そしてそのボードを見せてくれる。
「これ、韓国のものなんです。お話を聞いてて、アンティークなデザインにこだわって探してたんですけど、先日小物を韓国から仕入れることがあったので、レースのサンプルも欲しいって言ったら送ってくれて。韓国は流行の先端を行くようなものなので、あまりアンティーク調のものはないと思ってたけど、意外とあるのに驚きました」
淳さんがそう言うだけあって、確かにそのレースのサンプルはアンティーク調のデザインだ。サンプルは5つ。でも、まだ決まらないというか決められない。どうもピンと来ないんだ。そうして、持って来たドレスの原型の写真とデッサン画を淳さんに見せた。
「そうか。レースはここに使うんですね」
「段のところと胸元の小さなレースは別々のがいいかなとは思ってます。後は胸元の中央が少し寂しい気がするんですけど」
「そうですね。胸元のレースは段のレースとは違う方がいいですね。それなら使えそうなのあるんじゃないかな。それを決めちゃいましょう。それと胸元の中央の寂しさは飾りボタンでどうですか? 小さなやつなら寂しくならずに、かつ煩くならずに済むと思います。そんなボタンなら先代が集めたボタンがいいんじゃないかな。どれもまだ仕入れられますし」
そう言うと、先日見せて貰ったレースと幅の狭いレースを持ってきてくれた。そうだ。今まで段に使うからと幅の太いレースを見ていたんだったと思い出した。でも淳さんの言う通り、胸元に使うのなら、幅が狭い方がいい。
淳さんはたくさんのレースのサンプルを持ってくると写真とデッサン画をじっくりと見てからレースをひとつずつ見ていく。その目は真剣だ。そんな淳さんを見て、僕も幅の狭いレースを見ていった。
「このレースはどうですか?」
そう言って見せてくれたのは幅の狭いオーソドックスとも言える、でも色んなところに使える万能デザインのものだった。
「目新しさはないけど、逆にあまり目立たせない場所だからオーソドックスなのがいいかなと思ったんですけど、どうでしょう?」
「そうですね。これなら使いやすそうだ」
「じゃあ胸元のレースはこれで決まりですね」
「次はボタンか」
そう言うとレースのサンプルを脇に寄せ、先代が集めたという小さなボタンを持ってきた。そこにはメダルのようにデザインが施されたシルバーやゴールドのボタンから定番のくるみ調ボタン。
「こんなふうに西洋の家紋みたいなデザインの入ったものかくるみボタン、どちらがいいでしょう」
俺がそう言うと淳さんは、うーんとひとつ唸ってから言った。
「こういうデザインの入ったのがいいかなと思ってたけど、2、3個並べるとちょっと煩くなっちゃいませんか? レースもつけるから、くるみボタンかガラスがいいかなと思うんですけど」
言われてみればそうだ。この原型だけでもフリルがついていて、そこに細いとは言えレースをつけるんだからボタンは目立たないデザインの方がいい。やっぱり原型の写真とデッサン画を持ってきて良かった。僕が説明するよりずっと早く決まる。
「ここだけサテンじゃなくすることはできますか?」
淳さんに訊かれた。
「普通の生地にすることですか?」
しばらく原型の写真を眺めて考える。確かに全部をサテンにしてるからレースは目立たなくなるだろうし、普通の生地にするほうがいいかもしれない。だけど、そうするとバランスが悪くなるのではないだろうか。
「う〜ん……難しいかもしれません」
「そうしたらくるみボタンよりガラスの方がいいかな。親父のデッドストックとかどうですか」
「あ、あの透明なのはいいと思うな」
「じゃあ、それにしましょう」
そう言って淳さんは先代のデッドストックの箱の中からガラスのボタンを3個を別に分けた。
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