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パリ05
翌日はホテルの近所のカフェでクロックムッシュの朝食を済ませ、店の前で淳さんと別れた。淳さんはそのまま蚤の市へ行った。そして僕は時間が少し早いので、一度ホテルの部屋に戻り昨日買ってきたレースを取り出して見る。やっぱりあのドレスにはこのレースがいい。日本にいるときは全然ピンとこなくて焦ったりしたけれど、パリでこうして巡り合うことができた。淳さんに誘って貰えて良かった。淳さんのことだから、きっといいレースを見つけて買い付けてくれていただろうけれど、その中にこのレースがあったかはわからない。そう考えると僕自身がパリへ来るべきだったのだ。それにパリでは資材を買うだけでなく、服を見て回ることもできる。
そんなことを考えていて、ふと時計をみるともうお昼近くになっていた。少しゆっくりしすぎたかもしれない。でも、特に予定はなく、ぶらぶらと歩いて服を見るだけなので焦る必要はない。それでもそろそろホテルを出た方がいいかもしれない。今日はサントノーレ通りでハイブランドを見るつもりだ。
サントノーレ通りへは地下鉄を乗り継いで行った。モンマルトルからは結構時間がかかるけれど、電車の中で女性たちが身にまとっている服を見ているのが何気に楽しい。今、どういった服がパリで好まれているのかがよくわかる。オートクチュールはそれだけで楽しいけれど、ファストファッションなども見ていて楽しいのだ。
お昼はサントノーレ通りから少し脇道に入ったカフェで食べ、その後はサントノーレ通りをぶらぶらと歩いていく。僕が好きなのはDiorのエレガントさが好きだ。ドレスならジバンシィ。オードリー・ヘップバーンが着たジバンシィのドレスがとても綺麗で、夢中になって見たのを覚えている。だから僕がデザインするものもエレガントなものが多い。サントノーレ通りはたくさんのハイブランド店があるので、服を見て歩くのだけでもかなりの時間がかかる。だからDiorやジバンシィ以外はショーウインドウを見て、気になった服があれば中を見るということにしている。これはいつものパターンだ。
今シーズンのDiorの中ではピンクの女性らしい服が目を引いた。まるで花畑にいるようなデザインは女性をより女性らしく美しく見せている。対して、ジバンシィはモノトーンで黒一色だけれど、アシメントリーで女性らしいドレスがあった。やっぱりジバンシィはドレスが美しい。
ハイブランドを見たあとはファストファッションブランドが多く入る巨大な地下ショッピングモール、フォーラム・デ・アールへと移動する。ここは地下なので先ほどまで寒い外の中を歩いていたから、暖かさにホッとする。
ここはZARAやBershkaといった若者が好む店が入っている。そしてパリジェンヌたちはファストファッションだけを身に着けていることはない。ファストファッションと古着をミックスして着るのを好む。だから日本の女性たちとは同じようなファストファッションを着ていても印象は全く異なる。
ハイブランド、ファストファッションと服を見て疲れたなと思って時計を見ると、そろそろいい時間だ。モンマルトルに戻ろう。淳さんも間もなく帰ってくるだろう。そう思って地下鉄に乗ったところでスマホがメッセージを着信する。淳さんからで、やはり今からモンマルトルに戻るという。恐らく僕の方が少し早く着くくらいだろうか。なのでモンマルトルに着いたら連絡を貰う旨メッセージを返した。
地下鉄を乗り継いでホテルへと戻り、ホッと一息ついていると淳さんからメッセージが来た。ホテルの最寄り駅に着いたということで、昨日と同じカフェで落ち合うことにする。ホテルの部屋を出てカフェに向かうと、既に淳さんは着いていた。席は店内の窓際の席。体を温めるのは店内に限る。僕が淳さんの姿を見つけたのと同時くらいに淳さんも僕に気がついた。なので足早に店内に入る。
「お待たせしました。蚤の市、どうでしたか?」
「今日もいいものに巡り会えましたよ。重厚感のある生地と、コールテン。安っぽくならないいいサテン生地がありました。レース生地もいいのがありました。日本に帰ってから段ボールを開けるのが楽しみです」
そう笑う淳さんの顔は輝いていた。やはり資材が好きなのだろう。
ギャルソンが温かいカフェ・クレームを持ってきて、淳さんはカップで手を温める。その仕草を見て、今日は寒い中歩くことが多かったんだろうと推測した。
「吉澤さんがもう一着ドレスを作れそうなくらい買付けました。でも、やっぱり蚤の市は楽しい。普通の資材店も楽しいけど、蚤の市はまた別の楽しさがあるんですよ」
ほんとに楽しそうに話すから、聞いている僕も楽しくなる。
「吉澤さんはどうでしたか? いい刺激得られましたか?」
「そうですね。僕の好きなエレガントな服も見れたし、気軽に着れるファストファッションも結構見ました。パリに来て良かったと思いましたよ。誘ってくれてありがとうございます」
「いい刺激が得られたみたいですね。それなら良かった。ところで明日はどうしますか? 俺はモンマルトルの資材店をもう一度見て回りますけど。まぁそれも半日くらいかな? 綺麗なサテン生地を扱っている店があるんです。吉澤さんが購入したグリーンのサテンを仕入れた店です」
「あのサテンか。いいですね。同行してもいいですか?」
「俺はいいですけど、服はいいんですか?」
「今日1日でかなり刺激を貰えたので、明日は資材を見て回りたいです」
「わかりました。じゃあ明日は一緒に行きましょう」
そう言って最終日である明日の予定が決まった。
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