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再生01

 運命のレースと出会えた帰国後はアトリエに籠もってドレスを作った。手を休めるのは寝るときだけで食事はろくにとらなかった。というより作ることに夢中で食事なんて頭から抜けていた。下手をしたら寝る時間さえまともにとらなかった。  ドレスと向き合う気持ちがパリへ行く前とでは大きく違っている。パリへ行く前は手を動かしていても、ほんとにこれでいいのだろうかという迷いがあった。ほんとにこれで魅力的なドレスができるのか、このコサージュは必要か。必要なら、場所はここでいいのか。あらゆることに迷いがあった。でも今は違う。このドレスはこれでいい。コサージュはこの場所に必要だ。コサージュがないとこのドレスは少し寂しくなる。このドレスはコサージュありきなんだ。そう自信があるからドレス作りは捗った。  そうして1週間。ドレスは完成した。レースをつけて、コサージュをつけるだけだけど、そのコサージュが大変だった。コサージュも1個、2個じゃない。上半身に少し。スカート部には段ごとに縁取るかのようにコサージュをライン状につけていっているからコサージュを作るのに時間がかかったのだ。  少し離れて見ると白いサテンにピンクのサテンが映えているし、コサージュも映えている。後ろから見ると、ギャザー、段、レース、コサージュ、大きなリボン。ピンクの裾は長く。バッスルドレスならではの盛り盛りのドレスは自分としては良く出来ていると思えた。そして、このドレスのデザイン画を描いたときから今までのことが走馬灯のように蘇る。  ドレスを作ろうとしたけれど全くデザインが出来なくて、ドレスが展示されているミュージアムへ行って刺激を貰って、でも今度は見てきたドレスに酷似してしまって自分ならではのドレスのデザインができたのは数日後だ。  デザインが出来たあとは生地を買いに問屋街へと行った。そしてそこからがまた大変だった。裏地やベースとなる白いサテンとレース生地は早くに決まったけれど、ピンクのサテンは思ったような色がなくて淳さんに取り寄せて貰った。  そうだ。このドレスは淳さんがいなかったら作れなかった。僕が思っていた通りのピンクのサテンを探しだし、胸元を飾るレースとボタンはAomi屋さんで購入した。そして大変だったのがバックの段に付けるレースだ。レース専門店に思ったものがなくて問屋街の全ての店を見て回った。もちろんAomi屋さんも見ている。それでもピンと来るものがなくて、それを知った淳さんは、あちこちからレースを取り寄せてくれた。それでも見つからなくて、もうこのドレスは完成しないんだ、と諦めかけた。  そんな僕をパリへ連れ出してくれたのも淳さんだ。レースは日本では見つからないのではないか、足りないのはレースだけではないんじゃないかと買付けをに一緒に行きませんかと誘ってくれた。でも、湊斗くんとの思い出のあるパリへ行くのが怖かったから即答はできずに数日間悩んだ。行くのはモンマルトルの資材店。僕の定宿と湊斗くんとの思い出のあるカフェはほとんどがモンマルトルだった。湊斗くんのことを思い出すのが辛いのではないか。そんな思いをしてまでドレスを作るのか。そんなことを悩んで、行くと決めたのは数日後のことだった。行くことに決めたのは、このままダメになるのが嫌だったからそう思って行くことを決めた。  そしてパリではモンマルトル、蚤の市と見て回り、結果、蚤の市の店で運命のレースに出会った。そしてレースが決まったあとはパリ市内でハイブランド、ファストファッションと様々な洋服を見て回った。そして最終日。まさに湊斗くんとの思い出が一番ある僕の定宿を通る資材店へ行くことになった。思わず足が止まった。でも、精神的にも前に進みたくて頑張って定宿の前を通り、淳さんが行こうとしていた資材店へは行くことが出来た。淳さんにどれだけ探し出して貰っただろう。そして、どれだけ背中を押して貰っただろう。  だけど淳さんは決して「作れ」とか「前を向け」とは言わなかった。退路は決して塞がなかった。パリ行きを誘ってくれたときは「一緒に行けたら」と言って、定宿の先にある資材店へ行くときは「帰りますか」とまで言った。あえて退路を見せてきた。でも、だからこそ僕は前を向くことができた。そして最後に行った店では生地を見て、こんなものが作れるとまでアイデアが浮かんだ。あの店のことは忘れられない。デザイナー・吉澤優馬が復活した店だ。  そして僕はパリで声を出して笑ったんだ。楽しかったから。そう、パリは楽しかったんだ。というか淳さんの隣が心地良かったんだ。だから笑えた。  心地良かった?   そうして気づいた。いつの間にか淳さんのことを好きになっていたんだ。淳さんがいなかったら笑えなかったし、ドレスは完成しなかった。そして復活も出来なかった。  そう思ったら、このドレスを淳さんに見て欲しいと思った。そう思ってメッセージを送った。

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