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第8話 前の男

 猫が顔を舐める。決まって午前四時。 昨夜の酒が残っている頭を振って起き上がる。 「食事の時間か?蜜がいないな。」  フードを箱からザラザラと皿にあける。 水を変えて、猫トイレの砂を綺麗にする。  食卓に何か書き置きがあった。 「リキへ ちょっと僕の物を取りに行ってきます。 心配しないで。」  今どき、書き置きだ。スマホにメールでいいのに。 (いや、俺は蜜のアドレスを知らない。 スマホ、持ってたのか?)  力丸は食事が終わってまたベッドの隅に丸くなった。  迎えに行こうか? と思ったがリキは車を持っていない。いつも酔っ払っているから、周りの連中から止められている。 「俺が運転しますから。用がある時は言ってください。」 音楽仲間がそう言ってくれる。  落ち着かない時間を猫と一緒に過ごした。 こだわりの豆を挽く。珈琲を淹れた。ハンドドリップだが自信がある。 (蜜は前の男の所に行ったのか?)  暴力的な男なのだろうか?落ち着かない時間をなんとかやり過ごした。場所を知らない。  バタンッ! 「ただいま。リキ、起きてたの?」 スーツケースを転がして入ってきた。 「大丈夫だったの?」  口の端が切れて血が滲んでいた。慌てて抱き寄せる。 「殴られたのか?」 「うん、平気。」  殴るような奴なら一緒に行けば良かった、と後悔した。  リキに黙って行ったのは蜜だ。 抱き寄せてベッドに倒れ込む。 「痛い!」 「何かされたのか?」  下着を下ろすと後孔に何かが入れてある。 細い鎖が出ていて腰を回ってペニスに繋がっている。ペニスの先に飛び出しているビーズに鎖が繋がっている。  勃起するとかなり痛いだろう。 ペニスから飛び出していたのは小さなビーズだった。繋がっている。  リキは傷つけないようにそうっと引き抜いた。 尿道にあるビーズは、射精する時一番感じるところを擦って出てきた。我慢できずに蜜は放尿した。 「ごめんなさい。我慢してたんだけど。」  後ろを向かせて、鎖の先を見た。ディルドが入れてある。肛門の前立腺を押さえる位置だ。  男の身体をよく知っている者の仕業だろう。

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