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第10話 クラブ歌手

 場末のキャバレー。昔ながらのダンスフロアのあるキャバレーだった。  年老いたメンバーながらベテランのビッグバンドがバックで演奏している。  色っぽいドレスの歌手がヘレンメリルを歌っている。この店のホステスは平均年齢が50才を超えているだろう。ベテランの姐さんたちはみんなダンスが上手い。  歌に合わせて客とステップを踏んでいる。客も年齢が高い。  歌が終わると、ステージの近くで見ていたリキが立ち上がって拍手した。  ステージから降りてきたのはあの恭司の母親だった。この店は恭司が任されているS会のものだ。おふくろさんが専属歌手になっている。  ステージから降りてリキと恭司のテーブルに来た。 「あら、学士様、よく来てくれたわね。」 「お母さん、やっぱり、歌手だったんですね。いい声してる。」 「おふくろ、いい年なんだからそんなドレス着るなよ。」  恭司の言葉に、もっていたストールを広げて肩にかけた。相変わらずのキャミソールドレスがよく似合っている。 「お母さんは年取らないね。」 「調子に乗るから、そんな事言うなよ。」 「恭司は弟って事にしてるのよ。 こんなのが息子じゃ、ね。」  高校を卒業して12年。恭司は店を任されていい顔になって来た。  裏社会の情報を聞きたいと今日はリキが誘った。 「リキちゃん、何か一曲、演って欲しいわ。 昔、ウチで弾いてくれたよね。  立派になって。CD買ったのよ。」    おふくろさんの要望でギターを取り出した。 「ブルース、歌って。」  即興でフーチークーチーマンを歌った。 途中からおふくろさんもはいって、お客さんも大盛り上がりだった。 「あの犬遠藤力が生歌,歌ってくれたよ。 拍手ーっ!」 「この店はいいね。昭和がそのままだ。」 「リキ、何か話があるんじゃねえのか?」  人払いをして、話す雰囲気になった。 目の前にワイルドターキーのボトルが置かれた。  ロックグラスに大きい氷が一つ、入れられてボトルが注がれる。

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