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第19話 愛を紡ぐ
男は他者との距離の取り方がわからないらしかった。資産はあるが愛のない、たくさんのお金だけで放置された、ある意味この男も被害者だろう。 放置子。人としての心が育つ機会がなかったのか? それでもわずかながら、蜜に愛情を感じていたのか?
愛の紡ぎ方を知らない悲劇。
嫌がらせは続いていた。
玄関にゴミを積み上げられたり、宅配で牛糞10kgを届けられたり。
ピザのデリバリーが50箱届いたこともあった。
おもしろいのは、代金が全部支払われていた事だ。ゴミは片付けたが牛糞は、近所の農家に寄付した。ピザ50箱は,いつものバーに持って行き、あとは河川敷で酒盛りしているホームレスに配った。まだ、暖かくてみんな喜んでくれた。
「蜜、あの男は友達になりたいんじゃないのか?」
「えっ? いやだよ。力丸が殺されちゃう。」
あの真っ二つに惨殺された猫のことを思うと
おぞましくて許せない。
膝の上で二人を撫でながら
「孤独な奴なんだな。」
蜜と心を込めたキスをしながら、寂しい男を思った。
夜中に目覚めた。足元に軽い重み。猫の力丸は慣れた様子でベッドの端の壁との間の足の上にのびのびと寝ていた。
(こいつ、無防備だな。へそ天で寝てる。)
安心し切った様子に思わず笑顔になる。
こちらも可愛い姿で眠る蜜の顔を見ていると様々な思いが湧いてくる。
抱きついてきた蜜の背中に手を回し,その肌を撫で回す。
「リキ、大好き。」
寝言のように呟いてまた、夢の中に戻っていく。その顔を眺めて愛しさが募る。
(あの男は、何年も蜜を育てて、情が湧いたことだろう。逃げ出したら,許せるはずがない。)
諦めないだろう、と不安になった。
人の心は、他者には簡単に変えられない。
金と暴力で支配しようとしたのだ。心はどんどん離れていくだけだ。
この柔らかい頬を独り占めしている。
誰にも渡したくない。今までリキはこんなに誰かに執着したことはなかった。
力丸が二人の間に入り込んでリキによじ登って来た。そのフワフワな身体を抱き上げて鼻を埋める。
猫はいい匂いだ。この子も愛おしい。
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