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Episode18 聖剣の葛藤【R18】

― 勇者side ― ルイアスは寝台から勢いよく身を起こした。 確かめるように身体を伸ばし、軽く肩を回す。 「やっと治った……。いや、本当に死ぬかと思った……」 あれだけ苛烈だった痛みはすっかり引き、熱も下がっている。 ようやく、身体だけは以前の日常を取り戻した。 「今日こそは力をくれ。もう大丈夫だから」 そう言って差し出した手を、ラグエルは一瞬見つめた。 その手を取ってくれることを、ルイアスは疑っていなかった。 以前の彼ならば、間違いなくそうしてくれただろう――だが。 「……今日はやめておこう」 「は?」 ルイアスは、思わず間抜けな声を漏らした。 「まだ本調子ではない」 「もう治ったって。どこも痛くないし、熱だって下がった」 「万全ではない」 「いや、めちゃくちゃ元気なんだけど。……え、っていうか、何だよ」 熱に浮かされていた頃から、何かがおかしいとは感じていた。 今もこうして、視線が合わない。 「ラグエル。お前、最近おかしいぞ」 怪訝そうに見つめるルイアスを前に、その金の瞳は何処か落ち着かない。 やがて、少し言い淀むような素振りを見せてから、ラグエルは口を開いた。 「お前の身体は、一度限界を超えた」 「だから?」 「……もう二度と、あのような目には合わせたくない」 ルイアスは瞠目した。 あのラグエルが、そんな言葉を口にするとは思わなかった。 ラグエルは一度、深く瞼を伏せた。 再び開かれたときには、睫毛の奥の瞳は珍しく揺らいでいた。 「……お前が、神に見捨てられたと思った」 「え?」 「このまま、消えてしまうのではないかと」 ルイアスは、言葉を失った。 聖剣を修復した反動で、ラグエルの心まで乱れてしまったのだろうか。 朧げな記憶ではあるが、ずっと手を握ってくれていた温もりを思い出す。 「……それは…うん。なんか、ありがとな」 「何がだ」 「いや、ようは、心配してくれたってことだろ?」 あの尊大で、恐れなど何も知らないようだったラグエルが、今はひどく思い詰めた顔をしている。 もともと、ラグエルの身体が欠けてしまったのは自分の所為なのだ。 むしろ気に病むべきは自分であって、ラグエルではない。 「俺はもう、大丈夫だからさ。言っただろ、俺のぜんぶをお前にやるって」 彼の気持ちはありがたい。ありがたいが、それでは困るのだ。 自分の望みは、ノアをこの手に取り戻すことだ。そのためには勇者としての力が必要であり、ラグエルの協力は必要不可欠だった。 「……解っている。私は聖剣だ。勇者へ力を与えるためだけに存在している」 ラグエルは、なおもこちらを見ない。 「それなのに……今は、お前へ力を渡すことが怖い」 己に触れることを躊躇うかのようなラグエルの横顔を、ルイアスは見つめた。 胸を掠めるのは、焦燥だ。拳を握り締めて、眉根を寄せる。 「約束しただろ。俺に力を寄越すって」 一歩、歩み寄る。 僅かばかりに、ラグエルの視線がルイアスの方を向く。 だが、視線が交わることのないままに、再び逸らされてしまう。 「あれくらい、覚悟してたっての」 さらに一歩、詰め寄った。 「今更やめろよ、そういうの…!今まで散々、好き放題やってきただろうが!」 掴みかかるように、胸倉を掴んだ。 そこではじめて、ラグエルはルイアスを見た。視線が至近にぶつかり合う。 純粋な金の瞳が、そこに宿る金と黒の入り混じった光彩を捉えた。 「……けど、違うだろ。今のお前は、俺を失うことを怖がってる。……それってもう、ただの聖剣じゃないだろ」 「……」 「神に見捨てられる?消えるかもしれない?だから何だ。例え見捨てられようと、この身がどうなろうと、俺はもう、振り返らないって決めたんだ」 ルイアスは、ラグエルの纏う服の襟元を掴んだまま、ベッドへと押し倒した。 ラグエルは抗うこともせず、差し出された運命を受け入れるように、その身をシーツへ沈めた。 その身体に跨り、圧し掛かるようにして見下ろす。 「……ラグエル。お前も、一緒に行くんだ」 襟を掴んだ手に、力が篭る。 「俺は、勇者だ。お前は、その相棒だろ。違うか」 見下ろす眼差しに、迷いはなかった。 見上げる金の瞳もまた、真っ直ぐにその眼差しを受け止めていた。 「心配しなくても、俺はいなくなったりしねぇよ。カミサマとやらに見捨てられたって、最期まで足掻き続けてやるから」 ルイアスは、自分を唯一この運命へ繋ぎ止める男の唇へと、激しく食らいついた。 その噛みつくような接吻を、ラグエルは静かに受け止める。 ラグエルの大きな手が、ルイアスの後頭部へと回された。 見た目よりも柔らかな髪が、その長い指に絡みつく。 「……っは……」 息苦しさに離れようとするも、頭を強く引き寄せられて叶わなかった。 酸素を求めてさらに大きく開いた唇から、獰猛な舌が割り込んでくる。 口内の奥深くまで、熱い塊に蹂躙される。 上になっているのは自分のはずであるのに、結局は翻弄されてしまうのが悔しくもあった。 だがそれ以上に、体の芯からじんと痺れていくような疼きを、この身体は求め続けていた。 やがて手の力が緩み、漸く唇を開放される。荒い呼吸に、肩が上下した。 吐息を分け与えるような距離で、金の虹彩を覗き込む。 滲んだように見えるのは、涙の膜の所為だろう。 潤む瞳を仰ぐラグエルの双眸が、すと細められた。 それは、獰猛な肉食獣を思わせる絶対的捕食者の眼差しにも似ていた。 「力、くれるよな」 ルイアスの乞うような言葉に、ラグエルはふと笑った。 形の良い口角が、いつもの笑顔よりもほんの少しだけ、上がる。 「欲しいなら、持っていけ」 「え。持っていけって……」 「自由に持っていけと言っている。お前の好きにしろ。私は抵抗しない」 「な……っ!」 相手の言っている意味をようやく理解し、ルイアスは耳までをも赤く染めた。 一度緩く瞼に隠された金の瞳が、再びルイアスを見上げてくる。 長い睫毛に飾られた瞳が滲ませる妖しい気配に、ルイアスの喉骨が大きく上下した。 いつも決まってそうだ。 この眼に見つめられると、理性を根元から融かされていく。 波打ち際につくった城が、寄せる波にその形を少しずつ失っていくように。足元から崩されていくような感覚は、不思議と嫌いではなかった。 ルイアスは震える手を伸ばし、ラグエルのシャツのボタンを上から順に外していった。続けて下衣をずらし、まだ大人しいその場所を手で握り込む。 身を屈め、唇を寄せた。これから育っていくであろう猛々しい姿を思い浮かべ、自ずと吐き出す息が熱くなった。 根元から、舌先で丹念に舐め上げる。紅い舌が、ちろちろと薄皮をなぞった。 これが己の中に入り、力の源である精を注ぎ込んでくれるのだ。考えるだけで、下腹部が滾るように熱くなる。 ゆっくりと、吐息を馴染ませるように己の舌で育て上げていく。 中心に顔を埋めながら、ちらりと上目にラグエルの顔を窺い見た。 いつもと何ら変わらぬ涼しい顔をしているが、手の中の熱は雄らしい筋を立てて、立派に育っている。 神の造形物を思わせる端正な面立ちを見た後に、いっそグロテスクな雄の象徴を見てしまうと、そのあまりのアンバランスさが、さらに背徳めいた官能を産んだ。 自分の手で、舌で、彼の欲の証を育て上げたのだと思うと、それが堪らなく愛おしく思えてくる。 先走りを滲ませる先端に、慈しむようなキスをして、ルイアスは身を起こした。 身に纏うものすべてを、さっさと脱ぎ捨てる。途中、焦るあまりボタンを外すのに手間取った。 高揚を隠せない性器を、ラグエルの眼前に晒す。 静かな視線に見つめられたそれは、はち切れんばかりに脈打っていた。 再び、相手の身体へと跨る。鋭角に反り返ったラグエルの象徴を空へと仰がせて、そのぬらぬらと光る先端を、自らの後孔へと宛がった。そのまま、静止する。 何度も受け入れたはずのそれをまじまじと見たことはなかったが、改めて見たときのその暴力的なまでの質量に、怯んでしまう。 「……慣らさなくてもいいのか?」 固まったまま動こうとしないルイアスに、ラグエルの落ち着いた声が投げられた。 ルイアスは、視線だけでラグエルを見る。 「初めてのとき無理矢理ヤっといてよく言うよ」 「あの時はお前があまりに生意気を言うものだから、少し痛い目を見せようと思ったんだ」 「少しじゃねぇし。死にかけたし」 そんな会話のお陰で、少し余計な力が抜けた。 片手は屹立を支え、相手の腹部にもう片方の手を宛がって、身を支える。 呼吸を整え、ゆっくりと体重を沈めていく。 「……っ……あ、」 固く窄まる隘路をぐうっと押し開き、硬く猛るモノが入ってくる。 十分に唾液で濡らされた熱棒はみちみちとナカの肉壁を掻き分けて、最奥へと辿り着いた。 入り口が、粘膜が、待ち焦がれた存在に悦びヒクつく。 久しぶりだったが、自身の中は相手の形をしっかりと覚えているようだった。 「っは……、ちょっと……待、って……。お前の……デカ過ぎんだよ……」 ルイアスは、動かない。動けない。 身を貫く質量に馴染もうと、大きく胸郭を上下させていた。 「動かなければ、いつまで経っても終わらないが」 「わか、ってるんだって……ちょっと黙ってろ……」 脚に力を入れて、ゆっくりと身体を浮かせる。そうしてまた、体重を使って身を沈めていく。 幾度かそれを繰り返していると、少しずつではあるが、凶悪な質量に馴染んできた。 同時に、忘れていた官能が呼び起こされる。身体の奥底に眠っていた快楽がじわじわと競り上がってくる感覚に、ルイアスは身体を小さく震わせた。 「っあ、……んんっ……」 張り出したカリの部分が、悦いところを掻いていく。 いつもとは違う角度に戸惑いながらも、自らの一番好きな場所を刺激するかのように、何度もその場所を往復させた。 腰が揺らめくのを、止められない。比較的浅いその場所に、逞しい鈴口を行ったり来たりさせながら、本能のままに愉悦を貪る。 「……っく……」 気持ちよさのあまり、気を抜けば上げそうになる声を堪えようと、喉を引き絞った。 一度は萎えかけていた己の分身は再び熱を取り戻し、その先端の割れ目から透明な粘液を溢れさせていた。 今すぐに、扱きたい。 自然と伸びた手を、ラグエルに掴まれた。両の手首を掴まれて、前へと触れることは叶わなくなる。 「後ろだけでイけるだろう」 「……っ……それ、……つらいから、ヤなんだよ……っ……あぁッ!」 恨みがましく睨んでいると、激しく下から突き上げられた。 二度。 三度。 容赦なく突き上げられて、ルイアスは大きく背を仰け反らせる。 思わず逃れようとした身体はしかし、ラグエルに両の腰を抑えられて、身悶えることしか許されなかった。 「っ、あっ、ぅあ、あぁッ!」 抜けそうになるほどに引き抜かれた熱塊が、一気に奥を穿つ。 何度も、何度も、繰り返し。 熱した杭を叩き込むような容赦のない抽挿に、ルイアスは理性の及ばぬ声を上げて啼き続けることしかできなかった。 肉のぶつかり合う音が、一定のリズムを奏でる。 それに合わせるように、張り詰めた自身は震えながら、びゅく、びゅく、と精を吐き出した。 ラグエルの腹部を、ルイアスの放った白濁が穢していく。 少量ずつ、大した勢いもなく長く続くこの射精は、気が触れそうになるほど強い快楽を味わっている証でもあった。 「っひぅ、あ、やっ、あ、ぁッ」 絶頂の波が引かない。やがて吐き出す白濁がなくなって、くたりと大人しくなった自身は、それでも中の悦いところを刺激されるたび、壊れたように透明な液体を溢れさせ続けるのだ。 このような精の吐き出し方には、男の矜持も何もあったものではない。所謂イキっぱなしの状態にさせられて、焦点の合わなくなった眼はぽろぽろと涙を溢れさせた。 涙の奥で、漆黒の虹彩が金に染まる。胸元の魔痕も彩を同じくして、全身は悦びに打ち震えた。 強過ぎる快楽にうねる肉壁が、齎される聖剣の力を待ち侘びるように収縮する。 「っあ、あ、あ、もッ……むりっ……ラグ、エル……あぁッ――……!!」 全身がひときわ大きく痙攣すると同時に、ラグエルもまた、最奥を穿った状態で幾度か腰を震わせた。煮詰められた欲望が、勇者の中へと放たれる。 光彩と魔痕が、共鳴したようにひどく鮮やかに燦めいた。 ふっと。糸の切れた人形ように脱力するルイアスの身体を、ラグエルの精悍な腕が抱き留める。 自身の身に覆い被さるようにして気を失った勇者を、今宵聖剣はなかなか離そうとしなかった。 その夜、勇者はまたひとつ、力を得た。 それを与えたのは、神ではない。 ――ただ一人の、聖剣だった。

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