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第5話 頭にキス

 リュノはそれから何度か張り込みに同行し、時々ルベルに頼まれて魔力の流れを見たりした。  魔力は、ほとんどの人がその流れをコントロールできていない。  ふわふわと体を覆う魔力は、魔法を使う時だけでなく、何か興味を惹くものがある時には体を離れ、そちらの方へ流れて行ったりする。  そもそも魔力をまとっていない人もいるので、ルベルに聞かれても何もわからない時もあった。  ただ、ルベルがリュノに見てほしいと頼むのは、いつかのおじさまのように、人に声をかけている人ばかりだった。 「——リュノ」  そうと気づけば、ルベルから言われる前から目をつけることはできる。  案の定、その夜の相手を物色している様子の男が、若い女性に声をかけたところでルベルから名を呼ばれた。 「うん。……なんか、物慣れた人だね。あんまりあの子には興味なさそうに見える……けど」 「興味なさそう?」 「——うん……」  男の魔力は、女性に向くよりも、周囲に向かって広がっていて、それがリュノには不思議に思えた。 「女の子よりも、周りが気になるみたい」  ルベルに目線を移してそう言うと、ルベルが、そっと体を寄せてきた。 「ごめん……、少し、抱き寄せていい?あっちに興味ないフリしたい」  いいよ、と言う代わりに、ルベルの体に寄り添ってみる。  でも、体重はかけずに、いつでも離れられるように気を付けてみた。 「ありがと。……少し我慢してね」  ルベルがリュノの耳元でそう言って、それから顔を少し俯けた。  じっと潜めたルベルの息が、ほんの少し、リュノの髪の毛を揺らす。  二人の間には隙間があるのに、ルベルの体温がほんのり伝わっていて、  お互いの息を潜めたこの時間が、リュノの心臓を少しだけ跳ねさせた。  しばらくそのままじっとしていると、ルベルが小さく呟いた。 「——入れたな」  そのまま、何か柔らかいものがリュノの頭に押し付けられて、ルベルがさっと立ち上がった。 「ここにいて」 「——え……」  顔を上げた時には、もうルベルは男の腕を捻り上げていて、  その手から小瓶が転がり落ちたところだった。 「……今……、あたま……」  転がり落ちた言葉に、拳を口元に当てて、顔を俯ける。    頭に、——キスされた……。  キスなんて、いくらでもしたことはある。  本当の恋人じゃないとキスは嫌だ、なんて純情ぶるつもりはなくて、  一晩の相手ともキスは楽しめる方だ。  だけど。  セックスのためではなく、そのあとの流れでするのでもなく。  頭にひょいと押し付けられただけの唇が。  なぜか、無性に恥ずかしかった。  

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