8 / 17

第8話 お祝いの夜

 それから、ルベルとは飲み友達になった。  お互いの予定が合う時は仕事終わりに落ち合って、店で食事をしたり、ルベルが街に借りている潜入用の部屋で飲んだり。  その後、体をつなげるのもいつもの流れになって、リュノはバーで一人飲むことはなくなった。  ルベルのセックスは丁寧で、気持ちよくて、イくまえのルベルは普段よりずっと余裕がなくて、その顔を見るのも楽しかった。  だから、このまましばらくは、友達でいられたらいいなと思っていた。 「いくよ」 「……うん……」  この日は二人、ルベルの部屋で封書を前に並んで座っていた。  先日ルベルが受けてきた魔法認定試験の結果通知だ。  試験を受けたルベル本人は、ふわふわとその魔力を遊ばせたままで封を開け、多分リュノの方が固唾を飲んで、通知が出てくるのを見守っていた。  そっと取り出された通知書。    そこには、上級認定の文字。  それから、各魔法の成績が並んでいた。 「——わあ!おめでとう!」 「わー、やったぁ。空間魔法は秀だって。俺すごくない?」  重力魔法は優、解毒が可。  それでも、専門知識が必要な上級魔法を、三つも合格したのはものすごいことだ。 「すごい、すごいじゃん!上級魔法騎士だね!」 「いえーい!」  二人で手を打ち合わせて笑い合い、それから、グラスに葡萄酒を注ぎ分けて二人で乾杯をした。 「やったー。これでここの家賃手当が満額出るぜ」 「ぶっ……は」  一口飲んでルベルが口にしたのが、思っていたよりもずっと所帯染みた感想で、お祝いの余韻が霧散してしまった。 「嬉しいポイントそこなの?!」 「そうだよ!潜入用に借りてても、半分くらい自腹だったからね。そりゃこうして私用にも使うけどさ、懐痛いよ」 「あははっ!そうだったんだ」  おしゃべりをしながら、汚してしまわないように通知を片付けて、それから買ってきたつまみを並べる。  こういうなんでもない時間が本当に楽しいと思えるから、ルベルといるのは好きだった。 「んー。なんか、お祝いにして欲しいことある?」  友のねぎらいにと、この日の食事は全てリュノの奢りだったけれど、これだけではなんだか足りない気がして聞いてみる。  広くない部屋だから、二人で寝台に腰掛けていて、盛り上がればそのままなだれ込める状況でもあった。  このあとのことを色々考えながら、浮ついた気持ちになっているのを自分でも感じる。  首をひねってルベルの顔を覗き込むと、少しの間天井を見上げたルベルが、ぴったりとその身に魔力をまとわせたまま、ひょいとこちらを見た。 「じゃ、お祝いに恋人になるってのはどう?」  ひゅん、と。  楽しい気持ちが引っ込んでいった。 「——あ」  お互い見つめあった視線が、なんだか色をなくしたように感じた。  固まった笑顔のまま、  口だけを動かす。 「……ごめん」  それは、できなかった。  

ともだちにシェアしよう!