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第8話 お祝いの夜
それから、ルベルとは飲み友達になった。
お互いの予定が合う時は仕事終わりに落ち合って、店で食事をしたり、ルベルが街に借りている潜入用の部屋で飲んだり。
その後、体をつなげるのもいつもの流れになって、リュノはバーで一人飲むことはなくなった。
ルベルのセックスは丁寧で、気持ちよくて、イくまえのルベルは普段よりずっと余裕がなくて、その顔を見るのも楽しかった。
だから、このまましばらくは、友達でいられたらいいなと思っていた。
「いくよ」
「……うん……」
この日は二人、ルベルの部屋で封書を前に並んで座っていた。
先日ルベルが受けてきた魔法認定試験の結果通知だ。
試験を受けたルベル本人は、ふわふわとその魔力を遊ばせたままで封を開け、多分リュノの方が固唾を飲んで、通知が出てくるのを見守っていた。
そっと取り出された通知書。
そこには、上級認定の文字。
それから、各魔法の成績が並んでいた。
「——わあ!おめでとう!」
「わー、やったぁ。空間魔法は秀だって。俺すごくない?」
重力魔法は優、解毒が可。
それでも、専門知識が必要な上級魔法を、三つも合格したのはものすごいことだ。
「すごい、すごいじゃん!上級魔法騎士だね!」
「いえーい!」
二人で手を打ち合わせて笑い合い、それから、グラスに葡萄酒を注ぎ分けて二人で乾杯をした。
「やったー。これでここの家賃手当が満額出るぜ」
「ぶっ……は」
一口飲んでルベルが口にしたのが、思っていたよりもずっと所帯染みた感想で、お祝いの余韻が霧散してしまった。
「嬉しいポイントそこなの?!」
「そうだよ!潜入用に借りてても、半分くらい自腹だったからね。そりゃこうして私用にも使うけどさ、懐痛いよ」
「あははっ!そうだったんだ」
おしゃべりをしながら、汚してしまわないように通知を片付けて、それから買ってきたつまみを並べる。
こういうなんでもない時間が本当に楽しいと思えるから、ルベルといるのは好きだった。
「んー。なんか、お祝いにして欲しいことある?」
友のねぎらいにと、この日の食事は全てリュノの奢りだったけれど、これだけではなんだか足りない気がして聞いてみる。
広くない部屋だから、二人で寝台に腰掛けていて、盛り上がればそのままなだれ込める状況でもあった。
このあとのことを色々考えながら、浮ついた気持ちになっているのを自分でも感じる。
首をひねってルベルの顔を覗き込むと、少しの間天井を見上げたルベルが、ぴったりとその身に魔力をまとわせたまま、ひょいとこちらを見た。
「じゃ、お祝いに恋人になるってのはどう?」
ひゅん、と。
楽しい気持ちが引っ込んでいった。
「——あ」
お互い見つめあった視線が、なんだか色をなくしたように感じた。
固まった笑顔のまま、
口だけを動かす。
「……ごめん」
それは、できなかった。
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