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第9話 鎧を脱いで

「……無理?」  ルベルの目線が柔らかくなって、薄い鎧みたいになっていた魔力が、ゆらゆらとリュノの方へ流れてきた。  ——ルベル、……緊張してた……。  軽く聞いてくれたのは、きっとリュノのためだ。  もしダメでも、断りづらく、ないように。  でも、多分本気で聞いてくれた。 「……ごめん。俺、恋人は作れない」  だから。  誤魔化さずに伝えようと、思った。  両手を組み合わせて、親指をきゅっと押さえる。 「いつかルベル、聞いてくれたよね。——俺は書記官を目指すのかって」 「うん」  ちょっと笑って、首を傾げる。 「書記官には、俺はなれないんだ。……貴族じゃないから。」 「……そうなの?貴族じゃなくたって、よくない?」  少し訝しげな顔をするルベルに、首を振ってみせる。 「良くないよ。書記官は、騎士団の方針や体制を決めるための判断をする人で、それから、必要なら直接陛下へ意見を奏上する必要もある。  ……どんなに能力があっても、その人が何か間違ったことをしてしまわないために、家を背負ってる人じゃなきゃ、そんな立場になることはできない」  だから、リュノは書記官補佐にはなれても、今以上の地位を望むことはできないのだ。 「……知らなかった。ごめん、俺無神経なことを聞いたよね」 「ううん!——あんまり知られてないし、それに、別にそのことを何か気にしてるとかはないんだ。  地方から出てきた子供を、拾って働かせてくれた騎士団には本当に感謝してるし。ただ——」  ちょっとだけ、このことを口にするのが恥ずかしくて、少し笑って下を向く。  今まで、誰にも言ったことのないことだから。 「だから、今以上のことをしたかったら、残念だけどずっと団にいるわけにはいかないんだ。  いつか、——下の子がある程度できるようになったら、団はやめて、どこか貴族の家で働きたいと思ってる」 「そうなの?」  遠慮がちに揺らめいていたルベルの魔力は少しずつ解けて、またふわふわとしたかたちに戻りつつあった。 「うん。——だから、そうなったら同性愛者だと不利になることは多いし、それに、いずれ王都を出るなら、恋人がいても別れることになる。  ——だから。俺は、恋人は、作れない。」  顔を上げる。  ルベルの目はまだ優しくて、口元は少し微笑んでいた。 「ごめん」 「——ううん。ごめん、俺も、リュノの気も知らないで、迂闊なこと言った」  首を振ると、ルベルはちょっと笑って、それから顔を寄せてきた。 「じゃ、しょうがないから、……今日はリュノが自分で入れて?」 「い、——いけど!話の流れおかしくない?!」 「あはは!」  恋人という繋がりを提案してくれる程度には気持ちをくれているルベルと、この関係を続けていいのかどうか。  迷う間もなくキスをされて、押し倒されて、裸に剥かれて。  安心できる体温に甘えながら、リュノはルベルにまたがった。  楽しそうにリュノを追い詰めるルベルが恨めしくて、ルベルとの間に気まずさを感じることすら忘れていた。  

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