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第15話 誰でも、いいなんて

 相手の人は、この話を断るかもしれない。  管理官からは、そう聞かされていた。    元から本人は乗り気でなかったけれど、こうして相性のよい組み合わせができることは稀だからと、一度会ってみるように促したものなので、  断られたとしても、リュノがどうとかいう話ではない、ということを管理官から伝えられた。  だから、無理に進めるつもりはなかった。  見知らぬ人と番ってまで、特別な魔法騎士——ディッカーと呼ばれる騎士になることを望まない人がいることだって、理解できる。  その地位がどれだけ稀有なものでも、国の英雄として、得難い立場だとしても。  無理に進めるつもりはなかったけれど。  番いの候補者と面会して、顔も、声もわからない相手の魔力を見て。  到底この人がこの話を受けることはないだろうこと、わかってしまったし、  ——それでも。  この話を受けてくれるなら良かったのに、  自分と番って、自分のことをこの人の番いに、——ウルラと呼ばれる者にしてくれたらいいのにと。  思ってしまった。  ——振ったのは、自分なのに。 「ではディッカー殿、ウルラ殿」  管理官は、番い候補者同士の確認票の書類を机に置いて、ゆっくりと腰を上げた。 「私は一旦失礼致します。確認がお済みになりましたらお呼びください」 「わかりました」  管理官に合わせて腰を上げ、礼をすると、向かいの人も立ち上がり、管理官に礼をした。  そのまま管理官が部屋を立ち去ると、二人は、どちらからともなくソファに腰掛け直した。  目の前の人の魔力は、覚えていたよりもずっと青ざめた色で、  まるで薄い鎧のように、体にぴったりと寄り添って、その緊張をリュノに伝えていた。  ——ルベルだった。 「——あまり、乗り気ではないと。お聞きしています」  指を組み合わせて、慎重に言葉を選ぶ。  少し、言葉を探す時に、親指同士がくるくるとお互いを探り合った。  顔を隠して臨みたいと申し出たということは、ルベルは、相手に素性を明かしたくないということだ。  なのに、リュノはあっさりとわかってしまった。  見慣れた魔力の流れ方、揺れ方、——その、色。  ルベルのことを、わかってしまったことが、バレないようにしなければならない。  それが、リュノがすべき最低限の礼儀だった。 「無理をして、なるものではありませんから」  管理官が、ルベルにどう言ったのかはわからないけれど、  顔も、声もわからない相手と会って、番いたくない気持ちがどうにかなるとも思えなかったから。 「お断りいただいて構わないと思います」  目線の先、ぎゅっと握りしめた手のひら、指先が少し白くなっていて、  指を解いた。  目の前の人が、口を開く。 「……あなたは……」  ルベルの声は、知っているものとは違って聞こえて、  ルベルでは、ないかもしれないかな。とも思ってみる。 「はい」  少し顔を俯けて、相手の人は言葉を続けた。 「私が断ったら、どうするのですか」  その問いに、両手をこすり合わせる。  どうもこうもない。 「他の候補の方がおいでになれば、その方と——」 「誰でも、いいのですか」  畳み掛けるような聞き方に、喉の奥がきゅっと締まった。  両手を組み合わせる。  ——やだな。  思わず額に、組み合わせた手の、親指を押し付けた。  ——やだなぁ。 「どなたが相手でも。——私は」    もう、誰でもいいなんて、  とてもじゃないけど、思えなかった。  

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